スパイダー討伐作戦(1)
冒険者ギルドから帰るとラーシャが遊びに来た。
「アスラ兄ちゃん。リン姉ちゃん。街を案内してあげに来たよ。」
「ありがと。」
オレ達は3人で出かけた。どこを案内してくれるのかと思ったら、先ほどオレとリンがキングクラブを討伐した東の海岸だった。目の前には海が広がっている。その海には何隻も船がいた。そして、その船の向こうには微かに島のような物が見える。
「ねえ。アスラ兄ちゃん。ずっと先に島のような物が見えるでしょ?」
「そうだね。」
「あの島の向こうってフェアリー大陸があるんだよ。お母さんの故郷なんだ~。私も行ってみたいんだよな~。」
するとリンが聞いた。
「ラーシャちゃんは行ったことがないの?」
「うん。でも、いつか行くつもりだよ。」
その後、中央広場に行って屋台で飴や肉串を買って食べた。食べ終わると、いきなりラーシャが走り出した。
「ねぇねぇ。こっちこっち!」
行ってみるとおもちゃのような指輪やネックレスのような物を売っていた。ラーシャはそれをじっと見ている。どうやら欲しいものがあるようだ。オレはリンとラーシャにそれぞれ買ってあげることにした。
「これもらっていいの?」
「いいさ。ラーシャちゃんの髪によく似合ってるよ。」
「アスラお兄ちゃん。ありがとう。」
「私はどうなのよ?」
「なにが?」
「何がってわかるでしょ!」
リンがもじもじしている。どうやら褒めて欲しいようだ。
「リンは物凄く可愛いから、どれを付けてもよく似合うよ。」
「そ~お。」
するとラーシャが聞いてきた。
「アスラお兄ちゃんとリンお姉ちゃんは姉弟じゃないの?恋人なの?」
「ち、違うから!オレ達は幼馴染だから!」
「そうなんだ~。」
王都の散策を終えてラーシャを送ってよろず屋まで来ると、ターシャが真剣な顔で言ってきた。
「アスラ君。リンさん。ちょっと一緒に来てくれるかしら?」
「ええ、いいですよ。」
ターシャの後をついて店の奥に行くと地下に続く階段があった。その階段をゆっくりと降りていくとこじんまりとした部屋にでた。さらにその向こうにドアが見える。ドアを開けて中に入ると、そこにはバンコク、カレラ、カエデ、騎士団長のアレクシアがいた。
「どうしてお前達がここに来たんだ?」
アレクシアが聞いてきた。するとバンコクが言った。
「アレクシア殿。さっき話した強力な味方になってくれそうな冒険者っていうのは、彼らなんですよ。」
「そうなのか。」
すると、アレクシアがいきなり剣を抜いて斬りかかってきた。その動きはバンコク達にははっきりと見えないだろう。オレは咄嗟に背中の剣を抜いてそれを防いだ。
カッキン
「何するんですか?いきなり!」
「すまん。確かめさせてもらったんだ。お前、それほどの腕がありながらどうしてあいつらに殴られていたんだ?」
「いいじゃないですか?殴られるのはタダですから。」
すると横からリンが言った。
「アスラも私も目立ちたくないのよ。だから、スパイダーとかなんとかも私達にとっては関係ないんだから!」
リンの言葉を聞いてバンコクが焦ったようだ。
「この前言ってくれたじゃないか!協力するって!」
「だから言ったでしょ!できる範囲で協力するって!」
するとアレクシアが怒ったように言った。
「こいつらはこの国のものじゃないんだろ?本当に信用できるのか?」
ターシャがオレ達のことを弁明した。
「アレクシアさん。アスラ君もリンさんもいい人達ですよ。私が保証しますよ。ただ、事情がおありのようですので、無理強いはできませんけどね。」
そして、ターシャはオレ達を見ながら続けて言った。
「確かスチュワート王国には黒龍と魔王が現れたんですよね。黒龍と魔王は人々の怒りや悲しみ、憎しみのような悪感情がたまると現れると聞いたことがあります。この国で起こっていることが、再び黒龍を生み出さなければいいんですけどね。」
確かにターシャの言う通りだ。世界中の怒りや悲しみ、憎しみが増していけば再び黒龍が現れる可能性がある。だが、そんなに短期間で影響が出るものでもない。
「アスラ!どうするの?」
「とりあえず手伝うしかなさそうだよね。」
するとターシャがにこりとしながら頭を下げた。全員が納得したようで、バンコクが説明しはじめた。
「よし!そういうことなら、すぐにでも行動を開始しようか。すでに、スパイダーの情報はカエデとカレラで調べてあるからな。」
どうやら、スパイダーの出先機関がスラム街にあるようだ。だが、本部の場所まではまだ特定できていない。かなり用心深い相手のようだった。
「バンコクさん。行動するって言ってもスパイダーの証拠もなければ、本部の場所も分からないんでしょ?どうするんですか?」
「アスラの言う通りよ。いくら出先機関を潰しても、そういう輩はすぐに同じような仲間を集めるわ。親玉を潰さなけりゃ、全く意味ないじゃない。」
すると、アレクシアがぼそっと言った。
「親玉はわかっているんだ!恐らく本部もそいつの屋敷のどこかにあるんだろうがな。簡単じゃないんだ!一歩間違えばこの国に内戦がおこることになりかねない。」
「だったら、誘拐された人がそのドッジ公爵家の屋敷にいることが分かればいいんでしょ!」
「そうだが、それができないから困っているんだ!」
「なら、私が誘拐されるわよ!」
「えっ?!」
全員が驚いた。
「リン!何言ってるんだ?!誘拐されるのは獣人族やエルフ族の子どもなんだぞ!人族のリンが誘拐されるはずないじゃないか!」
「そうよ。リンさん。ありがたいけど、それは無理ね。それに危険すぎるわ!」
すると、下を向いて話を聞いていたラーシャが言った。
「私が誘拐されます。それだったらいいでしょ?お母さん。」
「ラーシャ!あなた何言ってるのよ!今の話聞いてたの?物凄く危険な事なのよ。」
「でも、他に方法がないでしょ?私なら大丈夫。いざとなったら魔法で逃げてくるから!」
「あなたの使える魔法なんて生活魔法程度じゃない!自分の身を守ることだってできないわ!」
話が行き詰ってしまった。そしてその日は一旦解散することになった。




