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魔王少年アスラ  作者: バーチ君
グラッセ王国
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アスラとリン、試される!

 オレ達は冒険者ギルドに向かった。すると、受付にいた兎耳族のラビーが元気よく挨拶してきた。



「おはよう!アスラ君!リンさん!」


「おはようございます。なんかラビーさん、元気ですね。」


「そうよ!ここはギルドなんだもん!私達が元気にしてないと冒険者達が元気になれないでしょ!今日は依頼を受けに来たのかな?」


「ええ、まあ。」


「なら、これなんかどう?まだ掲示する前の依頼よ。」


「見せてもらっていいですか?」



 ラビーからもらった紙を見ると、王都の南西の浜辺にキングクラブが現れたようだ。紙の右下にはBランク以上と書かれていた。



「ラビーさん!これBランク以上の依頼じゃないですか?僕達、Dランクなんですよ。」


「別にいいじゃない。Dランクだって2人いればBランクに匹敵するでしょ!それに、すでに漁船に被害が出ているのよ。お願いできない?」



 すると横からリンが口を出してきた。



「この依頼、受けてもいいけど。ハサミを1本くれるならね。」


「な~んだ。そんなことですか。いいですよ。ハサミ1本ぐらいなら私の権限で許可します。」


「アスラ!この依頼受けるわよ!」


「まったくリンは食い意地張ってるんだから!」



 今日は受付にカレラとカエデの姿がなかった。特に気にせず、オレ達はキングクラブのいる浜辺に向かった。オレの魔力感知に反応がない。どうやら海の中に潜んでいるようだ。



「海の中にいるみたいだけど、どうする?リン。」


「そうね~。私がここで服を脱いだら出てくるんじゃない。」



 リンが服を脱ぎ始めた。オレはそれを慌てて止めた。



「何やってるんだよ!ラビーさんならともかく、リンが服を脱いだって美味しそうには見えないだろ!」



バッコン



「アスラって本当に無神経よね。なら、魔法でラビーよりも魅力的になってもいいんだからね。」


「ダメだよ!なるべく魔法は使わないようにするんだろ!」


「じゃあ、どうするのよ?」


「もしかしたら、音を立てたら出てくるかな~。ここに獲物がいるって知らせるんだよ。」


「無駄だと思うけどやってみれば。」



 オレは浜辺に落ちている木の枝で丸太を叩いた。だが、一向に海に変化はない。



「やっぱり駄目だね。」


「アスラ!空間収納にホーンラビットがあったわよね?それを餌にしたらどう?」


「魚釣りじゃあるまいし、無理だと思うよ。」


「こうしててもしょうがないから、やるだけやって見ましょ。」



 ホーンラビットにロープをつけて海の中に投げ込んだ。しばらくして、ロープが凄い勢いで引っ張られた。



「リン!かかったぞ!」


「ほら、言った通りじゃない!」


「いいから、手伝えよ!」



 オレは身体強化をかけて力いっぱいロープを引っ張る。すると、海の中から5m近くある巨大なカニがぞろぞろと5匹現れた。



「何で5匹もいるんだよ~!」


「そんなこと言ってもしょうがないでしょ!全部討伐するしかないわよ!」



 仕方がないので、オレとリンは背中から剣を抜いた。お互いに剣に魔法を付与する。オレの剣からはゆらゆらと黒い炎が現れ、逆にリンの剣からは眩しい光が放たれていた。



「行くぞ!」


「ええ。」



 キングクラブが巨大なハサミで攻撃してくるが、あまりにも遅い。確かに力は強いがまったく問題ない。順調に4匹を討伐したところで、一番大きなキングクラブが口から泡を吹きだした。泡の落ちた場所が溶けたようになり、強烈な臭いが辺り一帯に立ち込める。 



「アスラ!毒液よ!気をつけなさい!」


「了解!」



オレは大きくジャンプしてキングクラブの目を斬り落とした。すると、キングクラブがもがきながら海の方に逃げようとしている。そこをリンが攻撃した。



「敵を切り裂け!『ホーリーカッター』」



 上空に巨大な光の刃が現れ、キングクラブの身体が真っ二つに切り分けられた。



「終わったな。」


「そうね。早く仕舞ってギルドに戻りましょ。」



 オレ達はそのままギルドに戻った。すると、さっきまでいなかったカレラとカエデもいた。なんか3人がニコニコと笑っている。



「アスラ君。もうキングクラブを討伐したの?」


「ええ、はい。大変でしたよ。もう、やっぱりオレ達にはぎりぎりでしたよ。」


「ありがとう。これで被害者が出なくて済むわね。裏に来てくれる?」



 オレ達が裏に行くとそこにはギルドマスターのバンコクもいた。



「アスラ君。キングクラブをここに出してくれ。」


「わかりました。」



 オレは一番小さなキングクラブを取り出した。すると、バンコクから予想外な言葉が帰ってきた。



「これだけじゃないだろ?あと4匹いたはずだが。」


「えっ?!」



 バンコクの後ろからカレラとカエデが姿を見せた。



「申し訳ない。この2人がずっと見ていたんだよ。」


「もしかして、オレ達のことを試したってことですか?」



 リンの身体から怒りのオーラが溢れ始めた。世界樹の指輪の限界を超えたようだ。辺りの空気が一気に冷え、肌に痛さすら感じるほどだ。



「リン!ダメだ!リン!」



 バンコク、カレラ、カエデの3人とも顔面蒼白状態だ。バンコクが代表して土下座して謝ってきた。



「すまない!本当に申し訳ない!」


「リン。許してあげようよ。リンの好きなもの何でも食べていいからさ。」



 するとリンの身体からオーラが消えていった。



「仕方ないわね。今回だけは許してあげるわ。その代わり、キングクラブのハサミは2本もらうからね。」



 やっぱりリンだ。転んでもただでは起きない。見られたからには隠しておいても仕方がない。オレは魔法袋から取り出すふりをして残りのキングクラブを取り出した。



「悪かったな。実はこの国は今、悪に侵されててな。その悪を取り除かないと国民達が苦しみ続けることになるんだ。それに、このままだといつかフェアリー大陸と戦争になりかねない。だから、君達のことを調べさせてもらったんだよ。」


「もしかして『スパイダー』の件ですか?」


「知っていたのか?」


「ええ。大家さんに聞きましたから。」


「大家?もしかして、ターシャ殿か?」


「そうですけど。」


「なるほど。ターシャ殿もアスラ君達に目をつけていたのか。やはり、君達に協力をお願いするしかないようだ。」


「ターシャさんにも言ったんですけど。オレ達目立たないように暮らしたいんですよ。だから、できる範囲でしか協力しませんよ。」


「わかった。それでも協力してもらえるなら鬼に金棒だ。俺の部屋で少し待っていてくれるか?報酬を用意してくる。」



その後、オレ達は大金貨5枚を受け取って家に帰った。


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