悪の組織スパイダー
オレ達は生活資金を調達するために王都キャンベの冒険者ギルドに行ったが、そこでギルドマスターのバンコクに根掘り葉掘り聞かれた。そしてギルドを後にしてリンの服を買った後、オレ達は家具屋へと向かっていた。
「邪魔だ!どけ!」
キャー
前から3人組の人相の悪い男達がやってきた。通り沿いを歩いている人達を押しのけている。そして、オレ達とすれ違いざまにわざとぶつかってきた。
ドカッ
「痛てぇな~!このガキ!どこを見て歩いてるんだ!」
するとリンが黙ってない。
「あんた達が勝手にぶつかってきたんでしょ!謝りなさいよ!」
「なんだと~!」
男達が凄んで見せた。だが、リンは引き下がらない。
「やめろよ。リン。」
「アスラ!あなたよく我慢できるわね!」
「いいから!人が集まって来てるから!」
「おい!お前達、なめてるのか?」
男達が腰の剣を抜いた。このままではまずい。リンも背中の剣に手をかける。
「ダメだから!リン!」
すると、見物人の後ろから軍服を着た人達がやってきた。一番位の高そうなのは意外にも女性だった。
「お前達何を騒いでいるんだ!ここは大通りだぞ!」
その女性を見た途端、男達は剣を仕舞ってスタスタと行ってしまった。
「ありがとうございました。」
「別に構わん。お前達はどこから来たんだ?あいつらのことを知らないんだろ?」
「はい。オレ達は今日この王都に来たばかりで、家を借りたから家具を買いに行こうと思って。」
「そうか。あいつらはこの王都では有名な『スパイダー』と呼ばれる組織の者達だ。次から気を付けろよ!」
「はい。」
どうやらこの国には厄介な組織があるようだ。なるべく関わり合いにならないようにしようと思った。
「リン。ダメだからな。」
「ごめん。でも、我慢できなかったのよ。なんであんな連中を放っておくのかな~?この国の王様は無力なの?」
「知らないよ。とにかく、目立たないようにするんだから!」
「わかったわよ!でも、あの女性の軍人さん、結構強いわよ。」
「ああ、オレも気づいたさ。」
そして家具屋に向かった。商店街の一角に家具屋は何件もがあったが、ドワーフの男性の店が一番いいものが置いてあった。
「アスラ!これにしましょ?すごく肌触りがいいのよ。これ。」
確かにリンが言う通り肌触りがいい。どうやら皮を使っているようだ。
「気に入ったのがあったかい?」
「はい。これにします。」
「お前さん達、いい目をしてるな。これはこの店の目玉商品だ。金貨2枚で売ってやろう。」
「ありがとうございます。」
「それで、どうやって運ぶんだ?」
「この中に入れていきますから。」
オレが魔法袋を手にするとドワーフの店主は驚いて言ってきた。
「お前さん。それ、もしかして、魔法袋か?」
「ええ、そうですよ。祖父の形見です。」
「ちょっと見せてくれないか?」
「いいですけど。」
オレはドワーフの店主に魔法袋を見せた。店主は手に取って一生懸命見ている。どうなっているのか気になるのだろう。
「ありがとうな。いいものを見せてもらったよ。わしは見ての通りドワーフ族だ。太古の時代には、我らの祖先も同じものを作っていたようだからつい気になってな。」
「そうなんですか。」
「わしはガンジっていうんだ。良かったらまた買いに来てくれ。ここは家具屋だが、隣の武器屋もわしがやってるんでな。剣や防具も安くしておくぞ!」
「ありがとうございます。オレはアスラです。」
「私はリンよ。今度武器を見させてもらうわね。」
「ああ、待ってるよ。ところで、お前さん達は旅の途中かい?」
「いいえ。今日王都に来たばかりで、この先のターシャさんの借家に住むことにしたんですよ。」
「そうかい。ターシャさんのね~。」
「何か?」
「いやな、ターシャさんはいくらお金を積まれてもあの家を売ろうとしなかったし、誰にも貸そうとしなかったからな~。きっとお前さん達を気にいったんだろうな。」
「そうだったんですね。」
オレとリンは一旦家に帰ることにした。家に帰った後は、ソファーを居間に設置して再び食事に出かけた。商店街が近くにあるから物凄く便利だ。当然、商店街には食堂もある。オレ達は夕食を食堂で済ませて家に帰って寝た。そして翌日、二人でターシャさんの店に行った。
「おはようございます。」
「あら、どうしたの?今日はどんな用事?」
「聞きたいことがあってきました。」
「何かしら?」
「昨日の夕方に『スパイダー』とかいう連中に絡まれまして。」
すると、ターシャさんの目つきが変わった。隣ではラーシャが震えたようにしている。何かあるのかもしれない。
「大変だったわね。大丈夫だったの?」
「ええ。女性の軍人さんに助けていただきましたので。」
「アレクシアさんね。良かったわ。」
「彼らは一体何者なんですか?」
ターシャさんはしばらく考え込んでいた。そして、静かに話し始めた。
「彼らは『誘拐組織』なのよ。エルフ族や獣人族の子どもを攫って、各国に売り渡しているのよ。」
「そうなんですか?なら、どうしてこの国は取り締まらないんですか?」
「上級貴族が後ろ盾にいるからよ。アスラ君達が助けてもらったアレクシアさんはフランシス公爵家のお嬢様なの。だけど、スパイダーの親玉も同じ公爵家なの。ドッジ公爵家っていうのよ。だから、誰も文句言えないのよ。それに、手口が巧妙で証拠を残さないからね。」
隣ではリンが怒りを抑えるのを必死に我慢している。ターシャさんが真剣な顔で聞い
てきた。
「昨日も聞いたけど、アスラ君とリンさんは何者なの?普通の人族はあれほどの魔力を持っていないわ。それに、リンさんからは大精霊様から感じるような神聖なものを感じるのよね。」
「オレ達は普通の冒険者ですよ。」
「そうなのね。まあいいわ。」
オレ達はターシャさんの店を出た。すると、昨日とは違う男達が肩を揺らしながら道路の反対側を歩いているのが見えた。
「アスラ。多分あいつらもスパイダーね。」
「多分ね。」
「どうするの?このまま放っておくの?」
「それしかないだろ。目立たないようにするんだから。」
「本当にそれでいいのかな~。なんか違うような気がするんだけど。」




