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魔王少年アスラ  作者: バーチ君
グラッセ王国
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グラッセ王国の王都キャンベ

 さすがに王都だ。コの字型に城壁で囲まれている。西側にある正門の前には長い行列ができていた。正門の横には馬車用の大きな門がある。その門を豪華な馬車が出たり入ったりしていた。



「あれってこの国の貴族の馬車よね?」


「多分ね。」


「あ~あ。なんかずるいわよね。私達はこうして並んでいるのにさ。」


「別にいいじゃん。オレは並ぶの嫌いじゃないし。」


「アスラって意外と気が長いんよね~。」


「リンが短気すぎるんだよ。」


「何よ!私だって普段は気が長いんだからね!」



 怒ったリンもかわいい。そして、やっとオレ達の番が来た。門兵に2人の冒険者カードを見せた。



「お前達はスチュワート王国から来たのか?」


「はい。」


「よく生きていたな。あの国は黒龍と魔王に破壊されたんだろ?」


「オレ達、田舎から来たんでよく知らないです。」


「そうか。入っていいぞ。」


「ありがとうございます。」



 王都の中はやはり賑やかだ。スチュワート王国の王都ビザンツよりも大きいかもしれない。それに、いろんな人種の人達がいた。今までの街にも獣人族やエルフ族、ドワーフ族の人達も少しはいたが、この王都では人族と同じように普通に歩いている。



「やっぱり王都だね。」


「そうね。ところで、アスラ!当分この街で暮らさない?」


「どうしてさ。」


「なんかいろんな人種の人達がいるじゃない。私、この街が気に入ったわ。」


「いいけど。なら宿屋じゃない方がいいよね?」


「そうね。借家を探しましょ。」



 とりあえず街の中を散策することにした。どうやらこのキャンベも商業街、住宅街、貴族街、歓楽街とに分かれているようだ。歓楽街の奥にはスラム街があるらしい。



「どこの国も一緒ね?」


「何が?」


「金持ちがいれば貧しい人達もいるってことよ。」


「そうだね。お母様が言ったように仕事があればいいんだけどな~。」



 いろんな店を見ながら歩いていると『よろず屋』と書かれた看板があった。



「この店何かな~?」


「入ってみましょうよ。」


「ああ。」



 店の中に入るといくつかテーブルがあった。そして見た目10歳ぐらいのエルフの少女が声をかけてきた。



「いらっしゃい!お客さん達、ご用はな~に?」


「看板に『よろず屋』って書いてあったから、どんな店か知りたくて。」


「ああ、そうなんだ~。この店は何でも屋だよ。家の修理や掃除、ペットの散歩、駅馬車の手配、馬車の販売、何でもやるんだよ。」



 するとリンが聞いた。



「なら、借家も案内してくれるの?」


「うん。」



 エルフの少女は店の奥に入って行った。そして母親らしき女性と一緒に出てきた。母親らしき女性はオレ達を見て一瞬たじろいが、普通に声をかけてきた。



「いらっしゃい。家を探してるんですよね?」


「はい。オレ達、今日この街に来たばかりで、できれば借家があればいいんですけど。」


「あるけど、あなた達年齢はおいくつなの?借家の契約は15歳以上でないとダメなんですよ。」



 世界的に人族は15歳が成人年齢だ。因みに僕は15歳。恐らくリンも同じくらいのはずだ。



「2人とも15歳です。」


「本当ですか?」


「はい。」



 どうやらオレもリンも年齢よりも若く思われるのかもしれない。すると、エルフの母親がニコッと笑った。



「どうして家を借りたいんですか?」


「オレ達、事情があってスチュワート王国から来たんです。しばらくこの国で生活しようと思ってるんですよ。だから宿屋ではなくて借家に住みたいんですけど。ダメですか?家賃なら心配ないですよ。オレ達冒険者ですから、問題ないと思います。」


「事情はわかりました。いいでしょう。紹介しましょう。ただ、大家さんが納得しないときは諦めてくださいね。」


「はい。」


「借家を紹介する前に、もう一つ聞いてもいいですか?」


「なんですか?」


「あなた方は何者なんですか?身体から魔力が溢れているようですが。ただの人族にそれほどの魔力があるとは思えないんですよ。」


「えっ?!」



 オレとリンは顔を見合った。



「あなた達も知ってる通り、エルフ族やドワーフ族、獣人族は妖精族なんですよ。ですから人族と違って魔力に敏感なんです。エルフ族は世界樹をお守りする種族ですから、特に魔力には敏感なんです。」


「・・・・」



 これには返答に困ってしまった。オレもリンも魔力を極端に抑えている。それでも見破られてしまったのだ。そうなると、この王都キャンベルではオレもリンもエルフ族達から疑いの目で見られることになる。


 

「何か事情がおありなんですね。あなた方が悪の存在ではないことは精霊達が教えてくれています。いいでしょう。この指輪を差し上げましょう。この指輪はあなた方の魔力を見えなくしてくれますから。」


「いいんですか?相当な金額がするでしょうに。」


「ええ。いいですよ。困ったときはお互い様ですから。」



 伯爵家の図書室の本で見たことがある。この指輪は世界樹の樹液を煮詰めて作ったものだ。恐らく大白金貨を出しても買える代物ではない。このエルフの女性は何者なんだろう?



「物件の詳細を持ってきますね。ちょっと待っててくださいね。」


「はい。」



 エルフの女性が奥に行った。するとリンが話しかけてきた。



「あの人何者なの?この指輪って世界樹の指輪よね?」


「リンも知ってたの?」


「当たり前じゃない。これでも私は・・・」



 オレは慌ててリンの口を手で塞いだ。



「ダメだから!魔法でオレ達の会話だって聞かれてるかもしれないだろ!」


「ああ、そうか!」



 エルフの女性が3枚の紙を持ってきた。どの紙にも屋敷の間取りと地図が出ていた。



「どれがいいかしらね。選んでみてくれる?」


「はい。」


 

 リンと2人で紙を覗き込んだ。1件目は歓楽街にあるということで却下。2件目は商店街近くの住宅街だ。3件目は商店街にあった。



「アスラ!これってこの近くじゃない?」


「そうだね。この物件にしようか。」



 オレ達は2件目の物件に決めた。



「この物件にします。大家さんにはいつ会いに行けばいいですか?」


「ああ、その物件ね。そこは大丈夫よ。うちの持ち物だから。」


「そうなんですか。」



 ここであらためて挨拶することにした。



「オレは冒険者のアスラです。よろしくお願いします。」


「私はアスラと同じ冒険者のリンよ。よろしくお願いね。」


「おい!リン!お前、態度がでかいぞ!」


「いいのよ。アスラ君。こちらこそよろしくね。私はターシャ。この子はラーシャよ。因みに私は独身だからね。」


「そうなんですか?」


「ええ。私はエルフ族で長生きなのよ。ラーシャはハーフエルフよ。意味わかるでしょ?」


「ああ、はい。」



 エルフ族は長生きだ。200~300年は生きると言われている。恐らく人族と結婚して、ご主人はすでに亡くなったのだろう。



「じゃあ、この契約書にサインしてくれるかな。」


「はい。」



 オレ達は借家まで案内された。よろず屋から歩いて200mほどしか離れていない。小さいが庭があり、壁が真っ白で綺麗な建物だった。中に入ると部屋が3つ。2つの部屋にはベッドがあり、お風呂とトイレそれにキッチンと居間があった。



「家賃は毎月の月初めにいただければいいわよ。」


「わかりました。でもこんなにきれいな建物なのに、本当に家賃が毎月銀貨3枚でいいんですか?」


「いいわよ。だって、このまま空き家にしておいても収入が入ってこないでしょ。それに、人が住んでないと、家ってダメになるのよね。だから、こっちの方が感謝だわ。」


「ありがとうございます。」


「お兄ちゃん達、今度王都を案内してあげるね。」


「ああ、お願いするよ。」



 ターシャさんとラーシャが帰っていった。


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