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魔王少年アスラ  作者: バーチ君
魔王誕生
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魔王誕生!

 僕は戦場に現れた黒龍を倒すために、黒龍に戦いを挑んだ。だが、やはりまだ僕の力が及ぶ相手ではなかった。僕は黒龍に胸を貫かれて地面に落下した。



“アスラ!起きて!アスラ!”


”リン!やっぱり勝てなかったよ!君の言う通りだった。ごめん。“


“いいのよ!アスラ!でも、もうお別れの時が来たみたい。”


“どういうこと?”


“以前言ったでしょ。私の役目はあなたの負の感情を食べることなの。あなたの怒りと憎しみ、悲しみをもうこれ以上食べられなくなったのよ。”


“僕は死ぬのかな~。”


“あなたは死なないよ。だってまだ許されてないもん。”


“なら、リンが死ぬってことなの?”


“そうね。でも、結構楽しかったわよ。”


”嫌だよ!“


“ダメよ!もう時間なの!ありがとう!アスラ。”


“嫌だ!嫌だ!嫌だ————!!!”



 僕の身体にエネルギーが爆発的に沸き上がってきた。まるで長いこと封印されていた力が解放されたかのように。そして、誰もが死んだと思った僕の身体から真っ黒な靄が立ち込め、その靄が完全に消えてなくなった時、そこには背中に漆黒の翼を生やした男が立っていた。



「黒龍!貴様~!貴様だけは絶対に許さん!」



 すると、今まで話すことができないと思っていた黒龍が言った。



「やはり、貴様が魔王だったか。8年前に殺したはずなのにな!まあいい。ここで貴様を殺すだけだ。」



 僕は街に被害が出ないように街全体を結界で覆った。そして上空に舞い上がり、黒龍の前に出た。どうやら黒龍も本気モードのようだ。翼を広げて風を起こし攻撃してきた。その風は僕の身体を切り刻んでいく。だが、斬られたその場から僕の傷はどんどん治っていった。



「フン!このような子どもだましの攻撃がオレに通用するはずがなかろう!」



 黒龍の右目はお父さんの攻撃で見えなくなっている。そこで、僕は黒龍の右に転移して横から攻撃した。



「闇よ!すべてを切り裂け!『シャドウカッター』」



 僕の手から無数の黒い刃が黒龍に襲い掛かる。黒龍の翼はボロボロだ。



「弱いな!それでも黒龍か!」


「なるほど、まさに魔王だな。本気でいくしかなさそうだな!」



 黒龍の身体が光り、ボロボロになった翼が修復していく。そして、耳を貫くほどの咆哮とともに巨大な炎を吐き出した。



グッオー



 巨大な炎は僕に向かってくる。僕は瞬間移動でそれを避け、黒龍の後ろから魔法を放つ。



「すべてを貫け!『シャドウビーム』」



 僕の手から放たれた漆黒の光線が黒龍の足に直撃した。黒龍の右足が吹き飛び、真っ黒な血が噴き出した。



グッグッ グッ



「おのれー!よくもよくもやったな!」



 黒龍の身体から真っ赤なオーラが溢れ出した。エネルギーがどんどん上昇していく。そして、目の前の黒龍の姿が消えたと思った瞬間、背中に強い痛みを感じた。黒龍が僕の後ろに転移し、巨大な爪で体を突き刺したのだ。



グホッ



 僕は耐え切れず地面に落下した。胸からは血が噴き出している。治癒魔法で傷を癒し、すぐさま黒龍を見た。だが、すでにその場に黒龍はいない。黒龍は僕の真上に転移したようだ。僕も転移でその場を離れた。すると、思った通り僕のいた場所に黒龍が姿を見せた。



“やはり強いな!どうすればどうすればいいんだ!”



 すると、いなくなったリンの声が聞こえたような気がした。



“黒龍の弱点は、頭の後ろにある核よ。それを破壊しなさい!”



 僕は黒龍の動きを止めるため魔法を放った。



「自分の重さに押しつぶされろ!『グラビティー』」



 すると、黒龍は地面に叩きつけられ身動きが取れないでいる。



「貴様―!何をした?グッグッグッ」



 黒龍は必死に立ち上がろうとするが体が動かない。僕は黒龍に近づいていきながら魔法を唱えた。



「すべてを貫く聖剣よ!我のもとに現れよ!『ホリーソード』」



 僕の右手に漆黒の剣が現れた。剣からは黒い光が放射されている。そして黒龍の頭を貫こうとした瞬間、黒龍の尾が鋭く巨大な刃となって僕の身体を真っ二つに切り裂いた。



ズバッ



“負けたのか?オレは負けたのか?”


“まだよ!シュバルツに命じなさい!”



 オレは最後の力を振り絞ってシュバルツを目の前に転移させた。



「お前、アスラなのか?」


「そうさ。僕はアスラだよ。お願いがあるんだ。この剣で黒龍の頭の後ろの核を破壊して欲しいんだ。」


「何で俺に!」


「約束しただろ!一緒に黒龍を倒すって!」


「わかった!やってやるよ!待ってろ!アスラ!」



 シュバルツは泣きながら僕の手から剣を受け取って、黒龍の頭に剣を突き刺した。



「おのれ!おのれ!おのれ!我はやがて復活して見せようぞ!」



 黒龍は光の粒子となって消えていった。そして、僕の意識は完全に途絶えた。



「おー!やったぞー!魔王と黒龍を討伐したぞー!」



 国王軍も反乱軍も敵味方関係なく喜んでいる。そして、いったん閉じられた城門が開き、中から大勢の兵士達が反乱軍に向かっていく。黒龍に多勢を殺された反乱軍にはもはや戦う力はない。1時間ほどで戦闘は終了した。バッハ侯爵とロベルト辺境伯は捕らえられ、王城の地下牢に閉じ込められた。そして、王城の謁見の間では戦後処理のため、王派閥の貴族達が集められていた。



「カザリオン侯爵のシュバルツよ。前に出よ。」


「ハッ」



 シュバルツの前にはビクトリ国王、マーガレット王妃、セルシオ第1王子、マリア第1王女が座っていた。その横に宰相のユリウス公爵が立っている。



「シュバルツよ!黒龍の盗伐、大儀であった。望みの報酬を取らせよう。なんなりと申して見よ。」


「ハッ 国王陛下に申し上げます。私はアスラの指示に従ったまでのこと。黒龍討伐は私の手柄ではございません。」


「アスラとはあの魔王のことか?」



 ビクトリ国王の言葉にマリア王女が嚙みついた。



「お父様。アスラは魔王なんかじゃありません!アスラは黒龍の討伐に貢献した英雄です!」


「だが、他の者はそう思っておらんだろう。漆黒の翼を生やし、恐るべき魔法を使い、黒龍に匹敵するほどの力を持っていたではないか。あやつが敵ではないとどうして言えるのだ?」


「私はアスラのことを良く知っています。アスラは他人思いで優しい人間です。アスラが敵になるなんて考えられません。それに彼が敵になろうにも、彼はもうこの世にいないのですから。」


「そうだな。マリアの言う通りだな。彼がこの国を救ってくれたのは事実だ。我らだけでも彼を魔王とはしないようにしよう。」


「はい。」


「ところで、シュバルツよ。黒龍にとどめを刺したのはそなただ。やはり褒美を出さないわけにはいかん。遠慮なく申して見よ。」


「ハッ では、反乱の首謀者である父のことはいかように処罰していただいても結構です。ですが、弟の命だけは助けていただけないでしょうか。」



 シュバルツの言葉を聞いて貴族達がざわめいた。貴族達にもカザリオン侯爵家の跡継ぎ問題は知られていたからだ。



「あい分かった。では、シュバルツよ。そなたがカザリオン侯爵家の当主となれ。さすれば、弟とその母親は国外追放としよう。それでよいか?」


「ありがとうございます。」


「それとシュバルツよ。そなたには『黒龍討伐の英雄』の称号を授ける。国のために働いてくれ。」


「ハッ ありがたき幸せにございます。」



 そして、ユリウス公爵がお父様をよんだ。



「ウイリアム伯爵!前に!」


「ハッ」



 お父様が前に出るとビクトル国王が話し始めた。



「ウイリアム伯爵。アスラはそなたの本当の子どもではないと聞いたが、間違いないか?」


「ハッ 私の妹の子どもでございます。早くに両親を亡くしたので我が子として育てて参りました。」


「そうであったか。」


「ですが、陛下。たとえ血はつながっておらずとも、アスラは私の子どもです。アスラが魔王だった責任は、この私がとりましょう。」


「ウイリアム伯爵よ。何か誤解しておるようだから言うが、今ほどにアスラはこの国では魔王ではないと申したではないか。それよりもそなたの忠義に褒美を渡さないとな。」


「恐れ多いことでございます。」


「いいや。そなたの働きは見事であった。よってそなたを侯爵とする。よいな!」


「ハッ このウイリアム、身命を賭してスチュワート王国のために尽くします。」



 その後も貴族達への報償が続いた。そして、すべてが終わった後で、お父様が屋敷に戻るとお母様が憔悴しきった様子でソファーに座っていた。



「あら、お帰りなさい。出迎えにも行かなくてごめんなさいね。」


「いいさ。それより、国王陛下から『アスラは魔王とはしない』というお言葉をいただいた。」


「そう。そうよね。アスラちゃんは命を懸けてこの国を守ったんですから。」


「そうだな。確かに姿や底知れない力は魔王の様だったが、アスラはアスラだ。優しい子だ。」



 しばらくの間沈黙が続いた。



「ウイリアム!」


「なんだ?」


「アスラちゃんは生きてるわ!」


「急にどうしたんだ?」


「だって、あの子、心臓を貫かれても生きていたのよ!あの子が死ぬはずないじゃない!」


「確かにそうだが、私は見たんだ。彼の身体が真っ二つに分かれて、黒龍と同じように光の粒子となって消えていくのを。」


「そうかもしれないけど、アスラちゃんは転移魔法が使えるのよ。どこかに転移したのかもしれないじゃない!」



 お父様はお母様の悲しみを考えると否定しようという気にはなれなかった。



「そうだな。もしかしたらどこかで生きていて、また笑顔で帰ってくるかもしれないな。」


「そうよ。きっとそうよ。そうしたら思いっきり叱って、思いっきり抱きしめてあげるんだから!」


「いつか帰ってくるさ。」


 これで第1部が終了です。読んでいただいてありがとうございました。すでに第2部も書き始めていますので、引き続き読んでいただければ嬉しいです。

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