初めてのダンジョン(2)
どれだけ時間が経ったかわからないが、僕達は2階層へ降りて行った。2階層は湿気の多い密林のような場所だった。
「この階層も昆虫系の魔物よね?」
「そう書いてあるよ。」
草をかき分けて歩いていると巨大なトンボが現れた。鋭い牙を持っているようだ。こっちに数匹が向かってきた。全員が剣を抜いて対処する。だが、トンボの動きはかなり素早い。僕とシュバルツ以外はなかなか剣が当たらない。
「この魔物は前に進むか、止まるかしかできないようだよ。だからこうして剣を振れば討伐できるから。」
「わかったわ。」
シュッ
「本当だわ!アスラの言う通りよ。」
その後はマリアもシャリーも普通に討伐していた。そして、巨大なトンボがいなくなり静かになると、水が流れる音が聞こえてきた。僕達は音のする方向に歩き始めた。
「アスラ君!ダンジョンなのに小川があるわよ!」
「本当だ~!」
「私、もう喉がカラカラよ。」
シャリーが小川の水を飲もうとした。僕は慌ててそれを止めた。
「シャリー!ちょっと待って!」
「どうしたの?アスラ君!」
「上流を見てごらん。」
上流では大きな蜂が口から紫色の液体を吐き出している。そして、下流の方では毒に犯されて浮き上がってきたものを捕まえようと、さらに大きな蜂が群れていた。
「危なかったー!私、全然気付かなかったよ。」
すると、上流と下流にいた蜂達が一斉に僕達の方に向かってきた。
「どうするんだ?アスラ!」
「あの数は討伐しきれない!一旦逃げよう。」
僕達は走って逃げた。だが、蜂のスピードはかなり速い。このままだと追いつかれる。
「みんな、先に逃げてて!」
「アスラ!お前はどうするんだ?」
「ここで何とか食い止めるよ!」
「お前一人じゃ無理だ!」
「大丈夫だから!シュバルツ!僕を信じてマリア達を連れて逃げて!」
マリアは王女だ。そのことはシュバルツも知っている。
「マリア!シャリー!マイケル行くぞ!走れ!」
3人は川から離れるように逃げた。僕の周りにはもう誰もいない。もう遠慮することはない。
「フー じゃあ、相手してやるよ!」
蜂が一斉に襲い掛かってくる。僕は剣に魔法を付与した。剣からは轟轟と炎が揺らめいている。
シュッ バシッ スパッ
かなり斬ったがまだまだ数が多い。
「仕方ないな~!」
「業火の炎よ!敵を焼き尽くせ!『ファイアーストーム』」
目の前に炎の竜巻が発生した。そして、次々と蜂を飲み込んでいく。気が付けば蜂は1匹もいなくなっていた。
「フ~ 終わったな。みんなのとこに行くか。」
僕はシュバルツ達を追いかけた。密林を抜けると再び草原地帯に出た。
カキン バキン
前方では4人が巨大なカマキリの魔物と戦っていた。僕は近くまで行って高くジャンプし、上段から剣を振り下ろした。
バシッ
ドサッ
巨大なカマキリは頭が2つに割れて、光の粒子になって消えていった。
「アスラ!無事だったのね!」
「アスラ君!私、心配したんだからね!」
シャリーが俺に抱き着いてきた。
「あっ!何してるのよ!シャリー!」
なぜかマリアが真っ赤な顔をして怒っている。
「だって、心配だったんだもん。」
複雑なのはマイケルだ。
「でも、アスラ君が無事でよかったじゃないか。」
「流石アスラだな。それで、これからどうするんだ?」
「地図で見ると階段がこの近くにあるはずなんだけどな~。」
僕達は階段の場所を探した。すると、草原の中に大きな穴が開いている。よく見ると下に続く階段があった。
「どうやらここが階段のようだ。下に行こうか。」
階段を下っていくと3階層に出た。3階層はダンジョンの中にも関わらず、まるで外にいるかのように明るく暖かかった。
「不思議ね~。」
するとシュバルツが指さして言った。
「マリア。不思議なことなんかないぞ!多分あれが原因だ。」
見るとそこには太陽のように眩しい光を放つ巨大な魔石があった。そして、1階層と2階層で昆虫を相手にして不安だったのだろう。マリアが心配そうに聞いてきた。
「アスラ。この階層は何がいるのよ?」
「確か小動物系の魔物だったはずさ。」
すると今度はシャリーが心配そうな顔で言った。
「小動物系って、まさかスネイクなんかいないよね?私、ニョロニョロは苦手なのよ!」
「大丈夫だよ。シャリーさん!いざという時は僕が守ってあげるから。」
どうやらマイケルはシャリーが好きなようだ。5人は魔物が出てきそうもない場所を見つけて、そこで休むことにした。僕とシュバルツ、それにマイケルでテントを作る。女子2人はいつものように少し離れた場所に行った。恐らくトイレだろう。
「テントできてるわね。ありがとう。」
「いいよ。それよりお腹が空いちゃったよ。早く食事にしようよ。」
「まったく、本当にマイケルは食いしん坊ね。」
「ひどいよ!マリアさん!」
「そうだね。マイケルの言う通り食べられるときに食べておこうか。」
再び干し肉を食べ始めた。だが、全員食が進まない。干し肉の淡白な味に飽きてしまったのだ。それでもみんな飲み込むようにして食べた。
「じゃあ、マリアとシャリーは寝ていいぞ!俺とアスラとマイケルで見張るから。」
「悪いわね。」
女子がテントの中に入って行った。前回は僕、シュバルツ、マイケルの順で休んだので、今回はマイケル、僕、シュバルツの順で休むことにした。
“アスラ~。あなたちょっと目立ちすぎじゃない?”
“何が?”
“キングビーの群れを一人で討伐したり、グレイトマンティスを一撃で討伐したりさ!“
“仕方ないじゃないか!”
“私は忠告したからね!”
“わかったよ。リンが言う通りなるべく目立たないようにするよ。”




