いざ!トロイア大陸へ!
王都ビザンツに戻ってきたオレ達は今後のことについて話し合うことにした。
「ドラク。確認するけど、ドラクは竜王に言われて反乱者達の説得に来たんだよな?」
「ええ、そうですけど。何かあるんですか?アスラさん。」
「オレ達さ~、この大陸の国々も回って来たし、フェアリー大陸も魔大陸にも行って来たけど、ドラク以外の竜人に会ったことがないぞ。」
「確かにそうよね~。もし、竜人がこっちの大陸にやってきていたら、私やアスラならわかるはずよ。」
するとミコトが首を傾げた。
「リン!確か~、竜族はナデシア様に別大陸に移されて、外に出れなくなったんじゃないのか?」
「確かにそうよね~。そもそもあなたはどうやってここまで来たのよ?ドラク!」
「確かに我らが住むトロイア大陸は強力な結界で覆われていて、以前は結界の外に出ることはできなかったんです。ですが、50年ほど前から結界にほころびが生じ始めて、10年ほど前から結界の弱くなったところから出入りができるようになったんです。」
ナデシア様が張った結界にほころびが発生するなどありえない。かなり力を持った誰かが結界を徐々に弱らせたとしか考えられない。
「マモン!あいつが結界を破壊したのかも?」
「マロン。それはあり得ないわ。確かにマモンはデーモンロードだし、相当な力を持っていたけど、所詮悪魔なのよ。ナデシア様の結界を破壊できるのは大天使か神以外にはいないのよ。」
確かにリンの言う通りだ。神界の誰かがばれないように少しずつ結界を弱くしたのかもしれない。でも、何故そんなことをする必要があるのだろうか。
「話を戻すけど。本当にドラク以外の竜人が人族の国に来ているのか?」
さすがにドラクも困ってしまったようだ。
「そう言われると自信がないです。彼らが大陸から出て行くのを見たわけじゃないですから。」
「どういうことよ?」
「竜王様に言われたんですよ。サモンやルークス達が結界の外に出たようだから、俺に後を追いかけて連れて帰るようにって。」
オレが思っていたことをミコトが言った。同じことを思ったのだろう。
「ドラク!あんた、竜王に騙されたんじゃないの?」
「えっ?!なんで?竜王様が俺を騙すわけないですよ!俺を騙して外に行かせたって、何の得もないですから!」
「ドラクって竜人の中でどれくらい強かったのよ。」
「そうですね~。竜族の中で四天王と呼ばれるぐらいには強かったですかね~。」
「お前が四天王?」
「ミコトさん!それってどういう意味ですか?俺が弱いってことですか?」
「悪い!悪気があったわけじゃないんだ!ただ、魔大陸で戦った連中が結構強かったからな。竜人ならもっと全然強いと思っていたんだ。」
「ミコト!ドラクは強いよ!ドラクが強く見えないのは、お前が以前よりも強くなったからだ。」
「そうよ。ミコト。あなたは天使見習いになったのよ。思い出してみなさい。私が天使見習いだった時のことを。あなたは私のことを見て強いと思ったでしょ?」
「なるほど~。言われてみればそうだな。私はあの時のリンと同じになったんだな~!」
「あたしは昔から強かった!」
「マロンは元々が魔族なんだから当たり前だろ!私は人族だったんだぞ!」
3人の会話をドラクが驚いた様子で見ていた。
「アスラさん。俺も強くなれますかね?」
「強くなりたいの?」
「はい。」
「どうして?」
「何かあった時に最愛の人を守れるぐらいには強くなりたいです。」
ドラクの言葉の意味がよくわからなかった。竜人はこの世界でも最強の種族だ。最愛の人を守るとは、何から守るのだろうか?
「アスラさんが不思議に思うのも無理はないですね。」
どうやらドラクはオレの考えがわかったようだ。話を続けた。
「確かに我々竜人族は最強の種族です。ですが、竜人族の中にも様々な考えの者達がいるんですよ。その代表的なのが、雷竜族、炎竜族、水竜族、風竜族です。俺はその中で最弱と言われる風竜族なんですけどね。」
「じゃあ、竜人族の四天王ってどんな奴なの?」
「さっき話したサモン。彼は水竜族です。それと、ルークスが炎竜族。最後にライジンが雷竜族です。強さだけを見れば、ライジンは竜王様に匹敵しますね。」
「なるほどな。だいたいわかったよ。やっぱり他の竜人族達はこっちに来てないな。」
「どういうことですか?」
「もしかしたら、ドラクはライジンと親しいんじゃないのか?」
「どうしてそれを?」
「やっぱりな。」
「どういうことよ!アスラ!」
「竜王はライジンが邪魔なんだよ。自分と同等の強さを持ってるからな。だから、サモンとルークスを使ってドラクを大陸から追い出しといた上で、ライジンを殺してしまうつもりなんだろうな。」
「そんな~!ありえないです!あの竜王様がそんな卑怯なことをするはずがありません。」
ミコトが悲しそうな顔でドラクを見た。
「ドラク。残念だが、恐らくアスラの言う通りだ。」
「トロイア大陸に行けばわかる!」
「そうだな。マロンの言う通りだ。トロイア大陸に行こうか。」
ドラクが拳を握り締めて言った。
「もしアスラさんの言う通りなら、ナーシャも殺されたかもしれない。」
「ナーシャって?」
「ナーシャはライジンの妹です。俺の恋人なんです。」
「アスラ!急いだほうがいいかもね!」
「そうだな。」
トロイア大陸は、スチュワート王国の東にある港町キャンベから海を渡って行かなければならない。だが、トロイア大陸は伝説の大陸でありトロイア大陸まで行く船はない。そのため、飛翔して行くにした。
「ドラク。トロイア大陸まで行くのにどのくらいかかるんだ?」
「そうですね~。飛翔していけば10日ほどでしょうか。」
するとミコトが心配そうだ。
「もしかして10日間も休憩なしで飛翔するのか?食事やその~・・・・」
ミコトが言いづらそうにしていた。彼女が何を言いたいのか大体の察しはついた。トイレが心配なのだろう。
「途中に休憩できる島とかあるんだよな?」
「はい。イースト島、ガラパゴ島、ルソ島、ボルネ島、ハワキ島、ストマラ島があります。」
「聞いたことないわね。そんな島があるの?」
「当然ですよ。リンさん。俺が勝手に島に名前を付けたんですから。」
「マロン島はないの?」
「残念ながらありませんね。」
「ドラクはネーミングセンス悪い!」
「勘弁してくださいよ~。マロンさん。」
ハッハッハッハッ
オレ達はスチュワート王国の港町キャンベまで飛翔した。