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魔王少年アスラ  作者: バーチ君
ナデシア聖教国
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シロヤの街の悪党退治(3)

 領主の屋敷の近くにある兵舎からも続々と兵士達が出てきた。そして、館からも兵士や執事らしき男が出てきた。



「何事だ!」


「はい。こいつらが無断で侵入してきたんです。」


「早く殺してしまえ!」



 執事は兵士長に一言言って館に戻ろうとした。



「待てよ!お前が執事のテンデラーなんだろ?オレ達はお前に話があって来たんだ!」


「何をふざけたことを!この俺と話をするなんて100年早いわ!」



 兵士達が剣を抜いてこちらを睨みつけてきた。そしてじりじりと近づいてくる。



「アスラさん。どうするんですか?こいつ、殺しちゃいましょうか?」


「ドラク!ダメだから!ちょっと待ってて!」



 オレは兵士達に向かって言った。



「こいつはこの街の闇組織『コンドル』から賄賂をもらっているんだ!お前達はそのことを知ったうえでオレ達に剣を向けているのか!もしそうであれば、お前達も同罪ということになるが、それでもかまわないか?」



 オレの言葉を聞いて兵士達に動揺が走った。



「おい!お前知ってたか?」


「いいや。ただ、そういう噂は聞いたことがあるぞ!」


「俺もそのうわさは聞いたことがある。」


「どうするんだ?」



 テンデラーは兵士達が動揺しているのを見て焦り始めた。



「お前達!何をしてる!こんな奴の話を信じるのか!俺はソルト子爵の執事なんだぞ!ソルト様からこの街のことを託されてるんだ!俺の指示に従え!」



 それでも兵士達の動揺は取れない。そこで、オレは少しだけ神気を解放した。オレの身体が光り始める。そして辺り一帯に暖かい空気が流れ込んできた。兵士達は目を丸くしてオレを見ている。



「オレの名前はアスラだ!ガイアとも呼ばれている。オレに従う者は武器を手放せ!さもなければ・・・・」



 すると兵士達の中から声があがった。



「おい!聞いたか?!今、あの人、ガイアって言ったよな?」


「ああ、そう聞こえたぞ!それにしても何者なんだ?あの人は。」


「ナデシア聖教国に現れた慈愛神様って確か~・・・・ガイアって名前じゃなかったか!」


「お、お、思い出した!慈愛神様だ!」



 兵士達が武器を手放してオレに平伏した。ドラクもオレの正体を知って慌てて片膝をついた。テンデラーは腰を抜かして、体を震わせている。



「テンデラー。お前の罪は重いと知れ。」


「お、お待ちください!慈愛神様。」



 テンデラーは必死に弁明をした。だが、すでにオレの考えは決まっている。



「お前には反省が必要だ。『フォーリングヘル』」



 オレの手から黒い竜が現れテンデラーを頭から飲み込んだ。そして、そのまま竜はリン達のいる場所に向かい、『コンドル』のメンバーと倉庫前で倒れている3人を飲み込んで消えた。



「お前達は知らずにテンデラーの指示に従っていたのだろう。お前達に罪はない。だが、これからは何が正しく、何が間違えているのか見極めて行動しろ!」


「はい!」



 オレとドラクは館の中に入っていった。



「ガイア様。今までのご無礼を許し下さい。」


「ドラク。オレはアスラだ。人族のアスラ。これからもそのつもりでいてくれ。」


「畏まりました。アスラ様。」


「だからさ~。『様』はおかしいだろ!」


「は、はい。」



 オレ達が館の中を歩いていると、領主の部屋の前に暁のメンバーが揃っていた。どうやらソルト子爵の部屋に家族を集めた様だ。部屋の中をのぞくと、ベッドの周りに妻らしき女性と子ども達がいた。そして、ベッドの上には40代ぐらいの男性が寝ていた。



「オクト。子爵の様子はどうだ?」


「アスラさん。なんか様子が変なんです。」


「どんなふうに変なんだ?」



 するとジュリーが答えた。



「アスラさん。子爵様は病気じゃなくて毒を飲まされたみたいです。」



 離れていてよくわからないが、テンデラーのことを考えると確かに毒を盛られた可能性もある。ベッドの横の妻らしき女性と子ども達が心配そうにしている。



「あなた方は誰ですか?!ここに何しに来たの!人を呼びますよ!」


「奥様。この人達は俺達の仲間ですから安心してください。」


「そうなのね。ごめんなさい。」

 

「いいですよ。それと報告があるんですけど。」


「なにかしら?」


「執事のテンデラーはもういませんから安心してください。」


「えっ?!あなた達は一体何者なんですか?」


「オレ達はただの冒険者ですよ。」



 どうやら、ソルト子爵の妻もテンデラーに脅されていたようだ。



「奥様。子爵様の病状を拝見してもいいですか?もしかしたら毒を盛られた可能性がありますので。」


「毒ですか?!」


「はい。」


「夫は治るんでしょうか?」



 オレはベッドの横に来た。ソルト子爵の顔に青い斑点が出ている。やはり毒のようだ。



「ちょっとみんな離れてくれますか?」


「何をするつもりなの?」



 すると、オレのことを知っているジュリーが、夫人や子ども達を安心させようとニコニコしながら言った。



「多分、アスラさんが治してくれるわよ!」


「本当ですか?本当に主人は治るんですか?」



 オレは神気を手に集中させた。すると、オレの身体が光り始め手から温かく優しい光がソルト子爵の身体を包み込んでいく。ソルト子爵の口から黒い靄のようなものが現れ空中に霧散した。



「これでもう大丈夫ですよ。」



 その神秘的な光景にその場の全員が目を丸くして驚いていた。オレのことを知っているはずのジュリーやドラクまで見とれている。



「流石です。アスラさん。」



 ドラクが相当感動したようだ。そして、ソルト子爵が目を覚ました。



「私は一体どうしたんだ?」


「もう大丈夫ですよ。」


「君達は誰だね?」


「あなた!」


「お父様~!」



 夫人と子ども達が子爵に抱き着いて泣いている。そして、しばらくして夫人がオレに振り返った。



「ありがとうございます。なんとお礼を言ってよいか。」



 するとソルト子爵が不思議そうな顔でオレ達を見た。



「私は一体どうしたんだ?それに君達は誰だい?」


「オレは冒険者のアスラです。ここにいるのはオレの仲間達です。安心してください。子爵様に毒を飲ませたテンデラーはもういませんので。」


「毒?テンデラー?」



 どうやらソルト子爵は毒を飲まされてからの記憶がない様だ。オレは今までのことをすべて説明した。



「すると、執事のテンデラーが私に毒を飲ませたということか?一体何のために?」


「彼は『コンドル』っていう組織からお金をもらって悪事を見逃していたんですよ。」


「『コンドル』はこの私が捕まえようとしていた組織だぞ!」


「そうでしたか。ならテンデラーは、自分の悪事がばれるのを恐れて子爵様に毒を飲ませたのかもしれませんね。」


「おのれ~!テンデラー!」



 すると、ドラクが言った。



「さっきも言ったけど、もうテンデラーはいないぞ。それにコンドルのメンバー達ももういないだろうしな。」


「どういうことかね?」



 ジュリーがニコニコしながら答えた。



「彼らは優しい神様を怒らせたのよ。だから天罰が下ったのよ。」


「優しい神様?」



 その後、領主の館の応接室に移動してお茶を飲んでいると、メイドに案内されてリン達がやってきた。



「アスラ~!あんた達、何を休んでいるのよ!終わったならちゃんと教えてよ!」


「まったくだ!こっちは外で待っていたんだからな!」


「ずっと待ってた!」


「ごめんごめん。子爵様にいろいろと説明していたんだよ。」


「なら仕方ないわね。」



 そしてオレ達は領主の館を後にして、ワサイの街に向けて出発した。


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