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魔王少年アスラ  作者: バーチ君
ナデシア聖教国
135/151

竜人の男ドラク

 お父様とお母様にすべてを話したオレは、その翌日暁のメンバー達とワサイの街に向かった。



「お父様。お母様。また出かけてきます。」


「元気でね~。たまには連絡をよこすのよ!」


「はい。わかりました。」



 王都を出たところで草原地帯に出た。ここからワサイまでは徒歩で2日ほどの距離だ。ワサイに向かう道には人や馬車が多かった。旅人、商人、冒険者と様々な人がいる。



「アスラさん。この先に森があるんだけど、魔物の討伐をしていきたいんだ。いいかな~。」


「いいけど。何がいるんだ?」


「レッドボアやキングボアがいるんだ。」



 ボアと聞いてリンが乗り気になった。



「オクト!キングボアが間違いなくいるんでしょうね?」


「レッドボアは間違いなくいると思うけど、キングボアは運次第ですよ。」


「リン!お前、本当に食いしん坊だな!」


「ミコト!失礼よ!私はこの辺りの治安をよくしたいだけよ。」



 森の中に入るとうっそうとしていた。だが、キングボアはおろかレッドボアがどこにもいない。



「変ですね。」


「オクト。もっと奥じゃないの?」


「ジュンの言う通りだ。オクト。」



 オレは魔力感知を発動した。すると、オレ達のいる場所から半径5㎞の範囲にはレッドボアもキングボアもいない。だが、それらよりもはるかに強力な魔力の反応があった。



「アスラ。」


「ああ、気が付いたさ。」



 するとミコトが頬を膨らませて言ってきた。



「何よ!また二人だけで!」



 オレはみんなに言った。



「この近くにはボアはいないよ。でも、ボアよりもはるかに強力な反応があったから、みんな気を付けるように。」



 するとオクトが不安そうに聞いてきた。



「何なんですか?その魔物は?」


「魔物じゃないかもしれないんだ。」


「どういうことよ!」



 膨大な魔力がこちらに近づいてきた。どうやらオレ達に気が付いたようだ。



カサカサ カサカサ



 草の間から一人の男が姿を見せた。



「なんだ~。人間か~。結構な魔力の反応があったからキングボアがいたかと思ったんだけどな~。」



 オレもリン達も魔力を隠ぺいしている。それが功を奏したのだろう。どうやらオレ達を人間だと思ったようだ。



「オレ達は冒険者さ。この辺りでレッドボアとキングボアを探してるんだけどなかなかいなくて。」



 オレが話しかけると男は笑いながら言った。



「ハッハッハッハッ レッドボアはもういないぞ!俺がすべて狩りつくしたからな。」



 するとミコトが言った。



「お前は何者だ?」


「俺か?俺は見ての通り狩人だ。まあ、旅の途中だけどな。」



狩人を名乗るこの男は先ほどレッドボアはすべて狩ったと言っていた。だが、どこにもレッドボアを持っている様子はない。不思議に思ったのかセプトが聞いた。



「あんた、この辺りのレッドボアをすべて狩ったんだろ?レッドボアはどうしたんだ?」


「そんなの食ったに決まってるだろ!」


「食ったってどれだけの量を食べたのよ!」



 ジュリーも驚いたようだ。



「まあ、3匹ぐらいだけどな。結構うまかったぞ!お前達の分も取っておいてやればよかったな。ハッハッハッハッ」



 彼の言葉で確信した。彼は竜人だ。竜人ならレッドボア3匹ぐらい食べられるだろう。でもどうしてこんな場所に竜人がいるのか不思議だった。まあ、どっちにしろあまり関わりたくない。



「オレ達先を急ぐから、じゃあな。」



 オレ達は森から街道に戻って再びワサイに向かい始めた。何故か竜人の男がオレ達の後ろをついてくる。さすがにリンが声をかけた。



「あんた。私達に何か用なの?」


「別に用はないさ。俺は次の街に行きたいだけだ。」



 竜人の男のことを気にしながらもオレ達は先に進んだ。


 

「オクト!ワサイの街はあとどれくらいなんだ?」


「そろそろシロヤの街が見えてきますよ。その先です。」



 すると急にリンが立ち止まった。



「みんな。盗賊みたいよ。」


「アスラさん。どうします?」


「そんなの討伐するに決まってるじゃない。何言ってるのよ。セプト。」


「待て。ジュリー。盗賊にしては人数が少ないようだ。ちょっと様子を見ようか。」



 オレ達がそのまま歩いて行くと、草の陰や木々の陰から5人組の男達が現れた。



「オレ達に何か用かい?」



 するとリーダーらしき男が言ってきた。



「金目のものを置いていけ。そうすれば痛い思いをしなくて済むぜ。」



 彼らからは黒いオーラが出ていない。何か事情があるのかもしれない。そんなことを考えていると、竜人の男がいきなり男達に向かって行った。そして、右手の爪がいきなり伸びて鋭い剣のようになった。男達は動けない。



カッキン



 竜人の男が爪で攻撃した瞬間、オレは剣でそれを防いだ。



「何するんだ?」


「それはこっちのセリフだ。こいつらは悪党なんだろ!悪党は殺されても文句は言えまい。」



 オレ達の様子を見ていた男達が慌てて逃げようとしている。だが、リンとマロン、ミコトがそれを許さない。



「逃がさないわよ。」



 男達は観念したようで武器を手放した。



「俺達の負けだ。どこにでも突き出せ!」



 すると、竜人の男がオレの前に出た。



「お前、強いな!本当に人族か?」



 オレ達の間にリンが割って入る。今にも戦いになりそうだったのを察したのだろう。



「あんた。竜人でしょ?なんでこんな場所にいるのよ?」



 竜人の男はリンの顔を凝視した。自分の正体に気が付いたことが不思議だったのだろう。



「お前達こそ何者だ?なぜ竜人のことを知ってるんだ?」



 オレ達の会話を聞いていた暁のメンバーも盗賊まがいの男達も目を丸くして驚いている。竜人は伝説上の存在だ。それが目の前にいるのだから当たり前なのかもしれない。



「お前も女のくせに相当強いな。どっちでもいいから俺の相手をしろ!」


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