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魔王少年アスラ  作者: バーチ君
ナデシア聖教国
132/151

神の楽園

 希望の家に戻ったオレは、みんなに大聖堂でのことを話した。そしてその日の夜、オレの部屋にリン、マロン、ミコトがやってきた。



「大聖堂での話だけど聞きたいんでしょ?」



 オレが聞く前にリンの方から言ってきた。



「ああ、どういうことか教えてくれ!」



 するとリンとマロンとミコトがニコニコしながら話し始めた。



「実は昨日の夜、私とマロンとミコトが神界に呼ばれたのよ。」


「そうなのか?」



 オレがマロンとミコトを見ると頷いている。リンがその時の状況を説明してくれた。




「ナデシア様。何か御用ですか?」



 リンが横を見るとマロンとミコトまでいる。



「あなた達がここにいるってどういうことよ?」


「私に聞かれても困るぞ!」


「右に同じ!」



 するとナデシア様がリン達を見て話しかけてきた。



「今日はあなた達に話があって来てもらったのよ。」



 天使のリンが呼ばれるなら納得できるが、そこにマロンとミコトまでいるのだから何か重要な話なのだろう。リンはそう考えた。



「最初にガイアのことを話しておくわね。」


「ガイアのことですか?」


「そうよ。実はガイアの幼い日の記憶は封印したままなのよ。リン。あなたがその封印を解いてあげてくれるかしら。」


「どうして私なんですか?」


「ガイアが初めて愛した女性だからですよ。アリス。」



 リンは黙ってしまった。するとナデシア様が話を続けた。



「この世界はあなた方が知っているように創造神様がおつくりになったのよ。創造神様は『愛』の神様なの。あなた方は自分達を殺した人を愛せるかしら?」



 ミコトが真っ先に言った。



「それは無理です。」


「そうよね。それが普通でしょ。でもね。創造神様はそんな相手でも愛するのよ。凄いでしょ。そして私は、慈しみの神なの。あなた方も知っている通り、この地上世界では戦争なんかがあったりするでしょ?それはすべての存在が成長途中だからなのよ。中には出来のいい存在もいれば未熟な者達もいるわ。でもね。私はどんな人達にも分け隔てなく愛を届けるのが役目なの。」


「そうなんですか?」


「そうよ。そして、ガイアは創造神様の『愛』と私の『慈しみ』の両方を受け継いでいるのよ。」



 するとリンが焦った。



「もしかして、ガイアは創造神様とナデシア様の子どもなんですか?」


「まあ、そうね。人間のような営みの中で生まれるわけではないんだけどね。」



 リン、マロン、ミコトの3人は身体が熱くなるのを感じた。自分の愛した人が創造神と最高神の子どもだと聞いて衝撃を受けたのだろう。



「リン。ガイアに記憶を返してあげてちょうだい。お願いできるかしら。」


「わかりました。その役目お引き受けします。」



 ナデシア様がニコニコと微笑んでいる。



「良かったわ。でも、それで話は終わりじゃないのよ。マロン、ミコト。今度はあなた達のことを話すわね。」



 マロンとミコトが物凄く緊張している。



「あなた達二人はガイアと長いこといたせいか、天使になる資格を得たのよ。まあ、そうなることを見越してあなた達をガイアの傍に置いたんですけどね。」



 マロンもミコトも驚いた。自分達は自らの意志でアスラの近くにいたと思っていたからだ。



「最近あなた達、背中がかゆくなってるでしょ?それは準備が整った証拠なのよ。あなた達は今日から天使見習いよ。いいわね。」


「えっ?!」



 ナデシア様がマロンとミコトに手を向けると、二人の身体が光り始め、二人の背中に純白の翼が出た。2人もお互いの翼を見て驚いている。



「こ、これは?」


「今言ったでしょ!今日からあなた達は天使見習いなのよ。リンとともにガイアを助けてあげて欲しいの。お願いできるかしら。」



 マロンもミコトも顔を紅潮させて同時に返事をした。



「はい。」


「良かったわ~。これで、ガイアもますます成長するわね。あの子には早く創造神になってもらいたいのよ。そして、自分が望む世界を新たに作ってもらいたいの。」



 

 3人から神界での出来事を聞いて、オレは自らの立場と役目を思い出した。



「ありがとうな。リン、マロン、ミコト。これからも頼むよ。」


「わかってるわ。」


「安心してくれ!アスラ!きっとお前の役に立って見せるから!」


「私はアスラ兄のお嫁さんになる!」



 リンとミコトがマロンを見た。



「マロン!今はそういう話じゃないだろ!」


「そうだぞ!抜け駆けはダメだからな!」


「うん。3人一緒!いつでも一緒!」



 そして翌日の朝、オレ達が食堂に行くとアンソニーとサクヤ、それに子ども達と暁のメンバー達がいた。



「アンソニーさん。準備はいいかな?」


「はい。」


「暁のみんなは子ども達と一緒に、転居してくる人達の案内を頼むよ。」


「わかりました。アスラさん。」



 オレ達は神気を解放して聖都の上空までやってきた。オレの隣には純白の大きな翼を持った天使のリンと、それよりも小さな翼を付けたマロンとミコトがいる。



「あの神々しい光はなんだ?!」


「天使様じゃない?4人いるわよ!」


「あの真ん中の男性は、もしかして神様なのか?」


「この国をお救いに来られたのよ!」


「おお、神よ。我らをお救いください!」



聖都の人々の中には、オレ達の姿を見て平伏する者もいれば拝み始める者達もいた。



「始めるよ。」


「いつでもいいわよ。」


「私もいいぞ。」


「いつでもOK!」



 オレは魔法で全員に聞こえるように話し始めた。



「オレは慈愛神ガイアだ!みなに告げる!教皇はこのオレが成敗した。その一派と聖騎士達は心の底から悔い、反省している。もはやこの国の言動を束縛するものは何もない。安心して暮らすがよい。そして、これからこの国を平和な国へと導く新たな教皇として、慈愛神ガイアの名のもとにアンソニーを任命する。この国が世界の平和の礎とならんことを。」 



 聖都にあった巨大な大聖堂がいきなり消えた。そして、オレ達も再び希望の家の前に転移した。



「アスラ!大聖堂をどうするの?」


「あそこにあってもしょうがないだろ。この国の中枢はここなんだから。」



 オレが手をかざすと、聖都にあった大聖堂が希望の家の近くにいきなり現れた。アンソニーとサクヤ、それに暁のメンバーや子ども達がみんなで走ってやってきた。



「アスラさん。これは?」


「大聖堂さ。新たな教皇がここにいるんだから、ここに大聖堂がなければおかしいだろ?」


「それはそうですけど。」



 すると、ギャラードと元聖騎士達、それにその家族がやってきた。その中に見覚えのある顔がいた。マゼット司教だ。どうやらマゼット司教はギャラードが連れてきたようだ。



「アスラ様。マゼット司教も一緒にここに住まわせたいのですが、お願いできないでしょうか?」


「それを決めるのはオレじゃないさ。」



 オレがアンソニーを見ると、アンソニーがマゼット司教に聞いた。



「マゼット司教。どうしてここに住みたいんですか?」


「はい。その前に、私はもう司教ではありません。その資格はありませんから。ガイア様にお会いして、私は目が覚めたのです。私はあなたを尊敬しています。アンソニーさん。私は教皇が怖くて何もできなかったのに、あなたは命の危険も顧みず、子ども達の面倒を見てました。あなたは素晴らしい人です。私は少しでもあなた達のお役に立ちたいのです。」



 するとアンソニーがマゼットに言った。



「わかりました。ではこの子達の先生になってください。今後、ここには移住者が大勢来るでしょう。そうなれば子ども達も増えていきます。子ども達は国の宝です。ここに誰でも入学できる学校を作るつもりです。是非、お力をお貸しください。」



 するとマゼットは号泣しながら答えた。



「ありがとうございます。死ぬ気で頑張ります。」



 それからオレはナデシア聖教国のすべての街に映像を映し出した。新教皇アンソニーが国民達に挨拶を行うためだ。映像には希望の家や子ども達、それに大きな屋敷に移転した大聖堂、広大な畑が映し出された。人々はこの希望の家のある場所を『神の楽園』と呼ぶようになった。


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