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魔王少年アスラ  作者: バーチ君
ナデシア聖教国
130/151

ヨハルト教皇

 教皇派の軍勢10,000人を改心させた後、オレとリンはみんなのところに戻った。



「子ども達はどうしてる?」



 残酷な場面もあったので子ども達に見られていないか心配だった。すると、アンソニーが教えてくれた。



「子ども達ならサクヤと一緒に食堂でご飯を食べていますよ。」


「そうか~。なら良かったよ。」


「そうだな。アスラが作り出したあの竜は、子ども達が見たらトラウマになるかもしれないからな。」



 すると、セプトが言った。



「いいや。俺はそうは思わないぜ。神の御業を目の当たりにしたんだ。逆に信仰心が強くなるんじゃないのか。」



 確かにそうかもしれない。だが、やはり人を地獄に送ったのだ。あの場面は見せなくて正解なんだろう。するとリンが気を利かせたのかお腹をさすっている。



「私もお腹すいちゃったわ。何か食べましょうよ。」


「そうだな。だけど、人数が多すぎるぞ!」



 周りを見渡すとギャラードや元兵士達もいる。どう考えても食堂に入りきれない。



「アスラ~!また、どうにかできないのか?」


「できないことはないけど、管理が大変だぞ!」



 ギャラード達は何のことかわかっていないようだ。オレは再び神気を解放して両手を広げた。すると、希望の家の隣の空き地に真っ白で巨大な建物が現れた。すでに一度見ているアンソニーは余裕で構えていたが、暁のメンバーとギャラード達は腰を抜かすほどに驚いた。



「こ、こ、これは?」


「これからこの場所がこの国の中心になるんだから、このぐらいの建物は必要だろ!」



 すると、リンがしかめっ面をしている。



「アスラ!いくら何でもこれはやりすぎよ!スチュワート王国やグラッセ王国の王城より大きいじゃない!」


「そんなことはないさ。これでも小さいぐらいさ。ナデシア様や他の神々を祭る場所だって必要だろ?」


「まあ、そうだけど。でも、それは聖都の大聖堂をここに持ってくればいいじゃない。」



 確かにリンの言う通りだ。どうせ聖都にはもう必要なくなるんだから。



「わかったよ。大聖堂は後で移転するよ。」



 どうやらオレとリンの会話についていけないようだ。マロンはニコニコ笑っていたが、ミコトまで驚いている。その後、オレ達は巨大な建物の中に入り、大会議室や普通の会議室、執務室、パーティーなどが行える催し会場、食堂、トイレなど必要な部屋を作って回った。すべて終わるまで数時間はかかった。



「もうお腹と背中がくっつきそうよ。限界だわ!」


「オレもさ。さすがに何も食べなくて頑張りすぎたよ。」



 すると子ども達と一緒にミコトとサクヤがやってきた。



「アスラ兄ちゃん。今日もバーベキューしたい!」


「人数も多いことだし、外でバーベキューした方がよさそうだな。」


「ヤッター!バーベキューだ!」



 子ども達が準備を手伝い始めた。オレは空間収納から食材を出して、それを暁のメンバー達と元聖騎士達がさばいていく。ギャラードがオレのところに来た。そして片膝をついた。



「アスラ様。ありがとうございます。私はいかに自分が愚かであったかよくわかりました。私の目が覚めたのもアスラ様のお陰です。本当に感謝します。」


「ギャラード。立ってよ。オレは人族のアスラさ。ただ、この世界の人々が幸せになってくれるのが嬉しいんだ。それだけさ。」


「やはり、慈愛神様ですね。」


「・・・・・」



 オレ達はみんなで食事をした。元聖騎士達も子ども達に混ざって楽しそうだ。すると元聖騎士の一人がアンソニーに言ってきた。



「アンソニーさん。俺もここに住んでいいかな~?妻と小さい子どもがいるんだ。家なら自分達で建てるからさ。ダメかな~。」



 すると、それを聞いていた他の元聖騎士達も同じように言ってきた。アンソニーは戸惑った様子だった。



「いいですが、私達は家まで用意できませんよ。」


「わかっていますよ。アンソニーさん。家は俺達で何とかしますよ。」



 どうやら聖都から外れたここに新たな街が誕生しそうだ。



「アスラ。聖都の中心がここに移るんだったら、王立学院のような学校とかもできたらいいよね。」


「そうだけど、それはまだまだ先の話だよ。それより、教皇と司教や司祭をどうにかしないとね。」


「そうね。明日にでも行きましょ!」



 するとミコトがまたプンプン始めた。



「また二人だけで内緒話か!」


「違うわよ。明日、マロンやミコトと一緒に教皇のところに行こうって話していたのよ。」


「そうか。ならいい。私もマロンも家族なんだからな!」


「はいはい。」



 なんかマロンの様子がおかしい。



「マロン。どうかしたのか?」


「背中がかゆい!最近ずっと!」



 するとミコトも同じことを言い出した。



「マロン。お前もか!実は恥ずかしいから言わなかったが、私も最近背中がかゆいんだ!」


「2人とも、後で私が見てあげるわよ。」


「うん。」


「頼む。リン。」




 その頃、聖都の大聖堂ではマゼット司教がヨハルト教皇に報告していた。



「教皇様。ご報告です。」



 教皇は、ユカルダ司教が率いる聖騎士達がオレ達を討伐したと思っているらしく、笑みを浮かべている。



「報告せよ。」


「はい。魔王の盗伐に向かった聖騎士達は全員が無事に戻ってきました。」


「そうかそうか。そうであろうな。やはり所詮偽りの神であったか。」


「ですが、聖騎士達の様子が変なのです。武器を持たずに鎧も脱ぎ捨てた状態でして。」


「どういうことだ?!ユカルダはどうした?ユカルダをここに呼べ!奴から直接報告を聞く!」


「それが~・・・・」


「どうした?はっきり言わんか!」


「帰ってきた聖騎士達の話によると、魔王と思われた人物は慈愛神ガイアを名乗ったそうです。それ以外にもアリスと名乗る天使が現れたと言っています。ユカルダ司教は慈愛神が作り出した光る竜によって滅ぼされたようです。あれはまさしく神の御業だと言っておりました。」



 今まで強気だったヨハルト教皇の顔色が変わっていった。10,000の聖騎士全員が、戦うことを放棄して戻ってきたのだ。しかも聖騎士達は『神』を見たと言っているのだ。ヨハルト教皇の身体が震えはじめた。



“まさかそんなことが!ありえん!聖典にもどこにも『慈愛神』などという神について書かれていなかったではないか!だが、それが真実だとしたら、まずい!このままでは私が罪を負うことになる!何とかしなければ!そうだ!司教や司祭が暴走したことにすればいい!”



「マゼット!司教と司祭を全員大聖堂に集めろ!」


「ですが、すぐには無理です!」


「これは命令だ!明日の昼にここに集まるように伝えよ!」


「わかりました。」



 マゼット司教は教皇の執務室から出て行った。部屋に一人残った教皇は、自分の助かる道を探っているのであった。



「これでいい。今までのことはすべてユカルダが仕組んだことにすればいい。死人に口なしだ!ハッハッハッハッ」


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