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魔王少年アスラ  作者: バーチ君
ナデシア聖教国
127/151

聖都コンスタンツに入る!

 アンソニーや子ども達の住む家を新しくし、荒れ地や畑の再生が終わったところで、その翌日、オレ達は聖都に向かった。検問で冒険者カードを見せて街に入ったが、検問のところにいた騎士達の動きがおかしい。どうやら、どこかに連絡に行ったようだ。



「結構大きな街ね。」


「まあ、一応はこの国の聖都だからな。」


 

 街の中を見渡すと人々の服装が質素だ。他の国や街と違ってカラフルな服や派手な服を着ている人達がいない。さらに、街のあちらこちらに騎士達の姿がある。まるでオレ達を監視しているかのようだ。



「こうしてみると、マロンやリンの服もかなり目立つな。」


「アスラ!どういう意味だ!私の服は可愛くないってことなのか?」



 なんかミコトが怒ってきた。



「違うから!マロン達の服って肌の露出が多いだろ!街の女性達でそんな服を着ている人達なんかどこにもいないだろ!」


「ああ、そういうことか。」



 逆に、街の女性達はマロン達を羨ましそうに見ている。男達は別の意味でマロン達を見ていた。



「お腹空いちゃったわ~!アスラ~!どこかレストランに入りましょうよ!」


「アスラ。実は私もお腹ペコペコだ。」



 すると、マロンがリンとミコトを指さして言った。



「大食い1号と2号」


「マ・ロ・ン!」



 レストランを探して街を歩いていると商店街のような場所があった。そこを歩いているとレストランが数軒集まった場所にでた。



「どこにする?」



 リンが鼻をクンクンとさせている。



「あそこね!あそこから美味しそうな匂いがしてるわ!」



 リンの指さした店はどうやらこの街の人達にはあまり人気のない店のようだ。他の店の前には人が集まっていたが、その店の前だけはガラーンとしていた。



「リン!ここ本当に美味しそうなのか?」


「間違いないわよ!入りましょ。」



 オレ達が店に入るとお客がまばらに座っている。そして全員が同じメニューを食べていた。



「いらっしゃい。空いてる席に座って!」



 オレ達は席に座って周りの様子をうかがった。どうやら店は女性一人で切り盛りしているようだ。



「ご注文は?」



 他の人達が食べているものがおススメなのだろう。オレ達は他の人達と同じ料理を頼んだ。しばらく待っていると女性が料理を運んできた。物凄くいい匂いがしている。



「あんた達、大霊祭にでも参加しに来たのかい?」


「大霊祭ですか?」


「な~んだ。知らないのかい。ならいいよ。」



 どうやらこの聖都で近々大霊祭というお祭りがあるようだ。



「ミコトは大霊祭って知ってるか?」


「知ってるさ。この国最大のお祭りだからな。国中から司教と司祭が全員集まるんだ。そこで最高神のナデシア様にこの国の豊穣と平和を祈念するんだ。」


「ふ~ん。」


「リンはあまり興味がなさそうだな。」


「当たり前じゃないの!悪党どもがいくら陳腐な祈りを捧げたって、神々がそんな願いを聞くわけないでしょ!」



 するとリンの声が聞こえたのか、慌てて女将がやってきた。



「あんた達!声が大きいわよ!私の旦那みたいに不信人者で捕まりたくないだろ!」


「どういうことですか?」


「後で話してあげるよ。」



 女将さんは外の看板を仕舞に行った。そして、他のお客達が店を出た後でオレ達のところにやってきた。



「あんた達は旅の者だろ?だったら知らないかもしれないけどね。この国じゃ、教皇や教会の悪口を言ったらすぐに捕まるのさ。不信人者としてね。」



 かなり深刻なようだ。もう少し詳しく話を聞きたい。



「なら、女将さんの旦那さんも捕まったんですか?」


「ああ、そうさ。先月、店の客と話をしていてね。その客が聖騎士だったようなんだ。彼の誘導尋問にまんまとのせられてね。つい教皇の悪口を言っちまったんだよ。そしたら、その客が豹変していきなり旦那を連れて行ったんだよ。」


「酷い話ね。」


「リン。この国じゃあ、それが当たり前なんだ。黒い鳥も教皇が『あの鳥は白色だ』って言えば白くなるのさ。」


「なんだい。あんたはこの国出身なのかい?」


「ああ、そうさ。この聖都から追い出されて郊外で暮らしていたのさ。今は旅に出てるがな。」


「もしかして、アンソニーさんのところかい?」


「女将さん。アンソニーさんを知ってるんですか?」


「知ってるよ。たまに旦那と食事を差し入れに行っていたからね。」


「そうだったんですか~。」



 するとマロンがボソッと言った。



「旦那は罠にかかった!狙いはアンソニー!」



 そうかもしれない。恐らくアンソニーは教皇たちからしてみれば邪魔ものだろう。何せ自分達が殺した夫婦の子ども達を守っているのだから。アンソニーのことはこの街の人達にも知られているだろうし、民衆がアンソニーを旗印にして反抗しないうちに処分したいのかもしれない。



「女将さん。オレはアスラ。彼女達はリン、マロン、ミコト。オレ達は冒険者なんだ。旦那さんのことは調べてみるよ。」


「本当かい?私はエデルさ。旦那はハリソンっていうのよ。頼むね。」



 オレ達は食堂を出た。そして街を歩いていると暁のメンバー達にあった。



「やあ、オクト。調べてくれたかい?」


「はい。でも、ここではちょっと。」


「わかったよ。人気のない場所に行こうか。」



 オレ達は商店街から入った場所にある空き地に行った。



「ここならいいだろう。それでどうだった?」


「はい。街の人達は怖いらしくて教皇や教会の悪口は言いません。でも、聖騎士達に話を聞いたんです。」



 するとジュリーとジュンが言ってきた。



「私達美女二人にかかればどんな男も話すわよ。ねっ!ジュン。」


「違うでしょ!お酒を飲んだからしゃべったんでしょ!」



 どうやら彼女達が聖騎士をお酒に誘ったようだ。ただ、リンの目つきが怖い。



「それで?話の続きは?」



 リンの圧力を感じたのか、ジュンが慌てて話し始めた。



「大聖堂の隣に大きな建物があるんですけど、信じられませんが収容所なんです。教会や教皇の悪口を言った人間は、その収容所に連れていかれて拷問を受けるみたいです。」


「それが結構ひどいらしいんだ!ろくな食いもんも与えられず、朝から夜まで続くんだってよ。」


「セプトの言う通りさ。ただ、何のために拷問してるのかまではわからなかったよ。」



 オレには他にも聞きたいことがあった。



「あのさ~。この国には司教と司祭がいるんだろ?誰も教皇に反対しないのか?」


「それは無理ですよ。反対すればすぐに処刑されますから。俺もセプトもこの前、聖騎士達に捕まりそうになったんですよ。」


「なんか、いろいろ調べ回っていて怪しいとか言われてたわよね。まあ、私の魅力にかかれば聖騎士なんてちょろいもんだけどね。」


「ジュリー!」



 どうやら命を張ってまで教皇に意見をしようとするものはいないようだ。



「ありがとうな。大体様子が分かったよ。」


「それで、アスラさん達はこれからどうするんだ?」


「そうだな~。まずは司祭や司教の中に正義感のある方がいるかどうか調べようかな。」


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