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魔王少年アスラ  作者: バーチ君
ナデシア聖教国
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希望の家

 意識を取り戻したユウキはその日のうちに起き上がり、みんなのところに行った。ところが、みんなはすでに10歳になっている。自分だけが成長していなかったのだ。そのことにショックを受けていた。



「ユウキ。ちょっとおいで。」


「なに?アスラ兄ちゃん。」



 オレはユウキの頭に手を置いた。するとユウキの身体が光り始めた。しばらくしてその光は収まったが、特にユウキに変化は見られなかった。



「オレが今魔法をかけたから安心していいぞ。」


「なんの魔法?」


「ユウキがちゃんとご飯を食べて、アンソニーさん達のお手伝いをすればみんなと同じ10歳になれるようにさ。」


「本当?」


「ああ、本当さ。オレが嘘なんか言わないさ。」


「そうだよね。アスラ兄ちゃんは神様なんだもんね。」



 ユウキは元気を取り戻してみんなの中に入っていった。するとリン、マロン、ミコトがやってきた。



「ありがとうな。アスラ。」


「オレにできることをしただけさ。」



 ミコトがオレの腕に抱き着いてきた。それを離れた場所からアンソニーとサクヤがニコニコしながら見ている。



「ミコトは幸せそうだな。」


「はい。」


「私達も幸せになっていいのかもな。」


「えっ?!」


「サクヤ。私と結婚してくれないか。あの子達にも両親が必要だろ。」



 いきなりプロポーズされてサクヤは戸惑っているようだ。



「私なんかでいいんですか?」


「ああ、僕にとって君は特別な存在なんだ。君を幸せにできるかどうかわからない。でも、僕と一緒に人生を歩んで欲しいんだ。」



 昨夜の目から涙がこぼれた。



「そんな風に思っていてくれたなんて!なんか夢のようです!私、あなたといるだけで幸せです!」



 アンソニーとサクヤが手を握り合った。その様子を子ども達が見ていた様だ。



「あ~!アンソニー先生がサクヤ姉ちゃんの手を握った~!」



 すると、アンソニーが子ども達に言った。



「これから私は君達の父親だ。そしてサクヤは母親だ。もう先生じゃないぞ。」


「うん!」



 その様子をオレ達も眺めていた。するとリンがオレに言ってきた。



「アスラ!私達から何かプレゼントができないかな~?」



 するとマロンがポツリと言った。



「家がボロい!」


「ぼろいっていうな!マロン!私の育った家だぞ!」



 確かにマロンが言う通りだ。お世辞にも住みやすい家とは言えない。古さもだが、大人数が暮らすにはあまりにも小さい。



「決まりね。」


「わかったよ。でも、創造魔法は久しぶりだからうまくできるかどうかわからないぞ!」


「アスラなら大丈夫よ。それに、細かいところは私やマロン、ミコトが作っていくわよ。」



 するとミコトが驚いた。



「私も作るのか?私にはできないぞ!」


「部屋の模様替えぐらいできるでしょ!」


「ああ、そういうことか!」


「あたしも頑張る!」



 アンソニー、サクヤ、子ども達には少しな晴れた場所に集まってもらうことにした。



「今からアスラが手品を見せるから集まって!」



 リンが大きな声で呼びかけると子ども達が走ってやってきた。古い建物からアンソニーとサクヤもやってきた。



「さあ、やるぞー!」



 オレの身体から神気が溢れ出す。辺り一帯に暖かい空気が流れ込んでくる。そして、オレの全身が眩しく光ると同時に純白の衣に包まれていく。頭には月桂樹の冠が現れた。子ども達もアンソニー達も唖然としてみている。



「出でよ!『希望の家』」



 すると、古い建物が消え去り、その跡地に真っ白な巨大な家が現れた。どう見てもスチュワート王国の侯爵家の屋敷よりも大きい。そしてオレは神気を解除した。



「アスラさん。これは?」


「ああ、オレ達からのプレゼントですよ。今から建物の中も改装していきますから。」



 子ども達は大喜びだ。オレ達は全員で家の中に入っていった。我ながらいい出来だと思う。玄関も広く、部屋の数も十分だ。何よりも食堂と居間がやたらと広い。家具類はリンが創造魔法で作り出した。オレが作るよりも女性のセンスで作った方がいいみたいだ。



「私達は何をすればいいんだ?」



 ミコトとマロンが聞いてきた。



「ミコトとマロンは壁の色をお願い。そのぐらいはできるでしょ。」


「まあな。」



 ミコトとマロンが子ども達一人一人の希望を聞いて子ども部屋の模様を変えていく。そして、2時間ほどして完成した。当然、アンソニーとサクヤの部屋には大きなベッドを用意した。2人は顔を赤くしていたが喜んでくれた。



「さて、あとは何をするかな?」


「ご飯でしょ?もうとっくにお昼過ぎよ!私、魔法使ったせいでお腹ペコペコなのよ。」


「リン姉はやっぱり食いしん坊!」


「違うから!ミコト達だってお腹空いてるでしょ?」


「まあな。」



 オレ達は外でご飯を食べることにした。バーベキューだ。オレが空間収納からレッドボアやコカトリスの肉を取り出す。野菜はマロンとリンと子ども達が畑から収穫してきた。調理はアンソニーとサクヤ、それにミコトの担当だ。辺り一帯に美味しそうな匂いが漂い始めた。



「みんな。よく噛んで食べるのよ。」



男の子も女の子もガツガツと食べ始める。その様子を見てアンソニーが言った。



「アスラさん達のお陰で子ども達が生き生きしています。ありがとうございます。」


「大したことはしてませんから。」



 するとリンが食べながら言った。



「ここの野菜、あまり美味しくないわね。」



 するとサクヤが申し訳なさそうだ。



「ごめんなさい。元々ここは荒れ地だったんです。それを開墾したんですけど土がよくないんですね。」


「この前話しただろ!私の祖父が荒れ地を開墾したって。」



 確かにミコトが言っていたのを思い出した。子ども達はすでに食べ終わって遊びまわっている。オレ達は椅子に腰かけて畑とその向こうの広大な荒れ地を眺めていた。すると、目の前に大きな光の球が現れた。その光の球が次々と人に変化をしていく。



「ガイア様。水臭いではありませんか。」



 目の前には精霊女王のラミリスと7大精霊達がいた。その神々しい姿を見て、アンソニーもサクヤも驚いている。



「お久しぶりです。ラミリスさん。皆さんもこの前はありがとうございました。」


「大丈夫ですよ。ですが、今回のように人々の役に立てるようなときには是非声をおかけいただきたいですね。」


「ありがとうございます。」


「ガイアちゃ~ん。元気だった~。心配したのよ~。」



 水の大精霊ウンディーネがいつものようにオレに抱き着いてくる。当然、風の大精霊シルフィーもだ。すかさずリンが彼女達をオレから引き離そうとしている。



「ちょっと!ウンディーネ!シルフィー!アスラから離れなさい!」


「いいじゃない。ちょっとぐらい。私達だってガイアちゃんから神気をもらいたいのよ。」



 オレ達のやり取りを見てアンソニーが聞いてきた。



「アスラさん。この方達は?」


「ああ、紹介してなかったですね。彼女は精霊女王のラミリスさんですよ。こっちは水の大精霊のウンディーネさん、・・・・・・」



全員の紹介をしたが、恐らくラミリスの紹介以外は覚えていないだろう。アンソニーもサクヤもその場で固まっていた。



「じゃあ、皆さん。お願いします。」



 すると、サラマンダーが荒れ地の木や草を焼き始めた。そして、次にノームが土地を耕し、ドリアードが野菜の芽を出した。最後はウンディーネが水をまき、ウイスプが神々しい光を野菜の芽に降り注いだ。すると、野菜の芽がどんどん成長して、立派な野菜が出来上がった。



「信じられない!これは奇跡だ!」



 アンソニーも子ども達も大喜びだ。



「ありがとうございました。皆さん。」


「また、世界樹に遊びに来てくださいね。」


「はい。」



 大精霊達は帰っていった。


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