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魔王少年アスラ  作者: バーチ君
ナデシア聖教国
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冒険者パーティー『暁』の修行

 オレ達は、ナデシア聖教国の聖都コンスタンツに行く途中で商人を警護することになった。そこで知り合った冒険者パーティー暁のメンバーに頼まれて、彼らの修行をすることになった。



「最初は体力作りからだ。」



 するとガタイのいいセプトが言った。



「体力なら自信があるぜ!」


「そうか。なら、この街の城壁の外側を走って戻ってきてもらおうか。」



 するとオクトが焦ったようだ。



「おいおい!それは無茶だぜ!この街の外側って一体何キロあると思ってるんだ!」


「まあ20㎞ぐらいじゃないか。1時間もあれば帰ってこれるだろ!」



 すると女性冒険者のジュリーとジュンが言い返してきた。



「私達は女よ!無理に決まってるでしょ!」


「お前達は冒険者なんだろ!魔物や盗賊達には男も女もないんだよ。女だからって魔物達が手加減してくれるのか?」



 ジュリーもジュンも何も言い返せない。



「いいから早く走ってこい!」



 オレは姿を消してこっそりと後をついていく。当然だが、男性2人はどんどん先を行くが女性2人は10㎞走ったら止まってしまった。



ハーハーハーハー



「何でこんなことするのよ!」


「ジュリー!私達のためよ!孤児院を立て直すんでしょ!がんばりましょ!」


「そうね。」



 倒れ込んでいたジュリーも立ち上がって再び2人で走り始めた。まるで歩くような速さだが、彼女達はズルしない。好感が持てる若者達だ。そして、元居た場所まで戻ってきた。走り始めてから3時間近くが経過していた。



「次は腕立て100回だ。時間がないから急げよ!」



 4人はハーハーゼーゼー言いながらも必死に腕立てをしている。そしてとうとう100回を終わった瞬間、その場に崩れ落ちた。



「お前達、本当に体力がないな~。これじゃあ、他の修行が何もできないじゃないか!しょうがないな~。」



 オレが彼らに向かって手を向けると手から温かい光が出た。彼らの体力が見る見るうちに戻っていく。



「なんだ?なんだ?」


「一体どうなってるのよ!疲れが取れてくわ!」



 するとリンが言った。



「魔法よ!アスラがあんた達のために魔法を使ったのよ!」


「魔法?!」


「アスラさんは魔法が使えるのか?」


「まあな。少しだけどな。」



 するとリーダーのオクトが聞いてきた。



「あんた達は一体何者なんだ?まさか賢者様なのか?」


「違うわよ!そんなことよりすぐに身体強化の訓練を始めるわよ!」



 今度はリンが指導する番だ。リンは彼らの中の魔力の活性化を考えているようだ。



「私が一人一人手を握っていくから、お腹の辺りに何か感じたら言いなさい。わかったわね。」


「はい!」



 なんかまるで先生と生徒だ。



「あっ!リンさん。感じました。おへその辺りに何か暖かいものがあります。」


「ジュンは優秀ね。あなたには才能があるかもしれないわね。その温かいものを全身にいきわたらせるのよ。」


「はい!」



 オクトもセプトもジュリーも必死に温かいものを感じ取ろうとしている。そして1時間ほどした頃、4人全員が魔力を感じることができたようだ。だが、その後がきつい。いくら動かそうとしても、魔力は簡単には動かせない。身体の中を流れる血液を早く流すことができないのと同じだ。



「1日ですべてできるようになんかならないわ!時間があるときは常に練習しなさい。」


「はい。」



 その日はミコトの出番はなかった。オレ達は全員が宿に戻った。



「アスラ!聖都までは10日ほどしかないぞ!彼らは本当に強くなれるのか?」


「大丈夫だと思うよ。見たところ、彼らには才能以上のものがあるようだからね。」


「才能以上の物?なんだそれは?」


「愛よ!人を幸せにしたいという思いが強いのよ!彼らは!」


「なるほどな~。」



 それから4日ほどが過ぎた。修行は毎日続けている。野宿する日もあったり、雨の日もあったが休むことはなかった。少しずつ体力もついてきたがまだまだだ。ただ、意外なことに初日に一番苦労した身体強化が順調だった。



「あ~。最初に『地獄を見る』って言われたことが理解できましたよ。」


「そうでしょ?でも、ここまでよく頑張ってると思うわよ。」


「そうですか?リンさんにそう言われるとなんか嬉しいです。」



 するとミコトが余計な一言を言った。



「そうだろうな。リンは叱ることはしてもめったに褒めることはしないからな!ハッハッハッ」


「ミコト!どういう意味よ!私だって頑張っていたら褒めるわよ!」


「まあまあお二人とも、いいじゃないですか。俺にしてみれば最初にリンさんに喧嘩売ったことが恥ずかしくて!」


「そうだよな~。リンに喧嘩売るなんてありえないよ!セプトは勇気があると思うよ。」


「やめてくださいよ!アスラさん!」



 その日は体力づくりのトレーニングをした後、森に行って実践訓練をすることにした。ただ、気になることもあった。マロンの調査の結果、どうやら商人は聖騎士達と何やら企んでいるようなのだ。もし、オレ達が狙いだとしたら暁のみんなを巻き込みたくない。



「いよいよ実践訓練か~。楽しみだな~。」


「俺達、どれくらい強くなってるんだろうな~。」


「私もワクワクしてきたわ!」


「最初のころ、ジュリーは毎日『もうやめたい』とか言ってたじゃない!」


「いいじゃない。昔の話は!」



 ここで森に入る前に、オレは暁のメンバーに身体強化を効率的に使う方法を説明した。



「みんなまだ不十分だけど身体強化ができるようになったよな。ちょっとやってみて欲しいことがあるんだ。」



 暁のメンバーの顔が恐怖で引きつっている。オレのことを鬼教官とでも思っているのだろう。



「すでに説明してある通り、みんなのお腹のところにあるものは魔力だ。それを目に集中させてみてくれ。」



 すると最初にオクトが大声を出した。



「す、すごい!物凄く遠くまで見えるぞ!」


「本当ね!なんか信じられないわ。」


「オレが剣を振ってみるからそれを見てごらん。」



 シュッ



 今度はセプトが叫んだ。



「物凄くゆっくりだ!これなら余裕で避けられるぞ!」



 どうやら身体強化の意味が分かったようだ。



「わかったよね。敵と戦う時は、目に魔力を集中させれば相手の動きがゆっくりに見えるし、耳に集中すれば人々が話している内容が聞こえるんだ。それに、手に集中させれば力が強くなるし、足に集中すれば早く動ける。どうだい?」



 暁のメンバーは信じられないという顔をしている。



「みんなは自分が考えている以上に強くなったんだよ。それでもまだまだなんだけどね。」


「ありがとうございます。アスラさん。みなさん。」


「じゃあ、森に行こうか。」


「はい。」


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