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魔王少年アスラ  作者: バーチ君
ナデシア聖教国
120/151

冒険者パーティー『暁』

 翌日、約束通りギルドに行くと馬車が3台あった。そこには、同じパーティーらしい5人組の男女と、受付の女性と雇い主の商人がいた。



「お待たせしてすみません。」


「いいのよ。私達が早かっただけだから。紹介するわね。雇い主のギャラードさんよ。」


「始めまして。オレは冒険者のアスラです。こっちは仲間のリン、マロン、ミコトです。」


「君達はSランクの冒険者なんだってね。よろしく頼むよ。」


「はい。」



 受付の女性が4人組のパーティーも紹介してきた。



「俺達は『暁』ってパーティーだ。全員Aランクだが、それなりに強いと思う。よろしくな。」


「はい。」



 暁のメンバーはオクト、セプトの男2人とジュリー、ジュンという名の女性が2人だ。



「アスラ~。多分あの人達って恋人同士よ。」


「そうだろうな。」



 申し訳ないがオレには暁のメンバーはどうでもよかった。それよりも商人の男の方が気になる。身のこなしを見る限り、とても商人には見えない。久しぶりに目に魔力を集中させてみてみた。すると、やはり商人ではなかった。身体から溢れ出るオーラが赤色、つまり戦闘色なのだ。



「リン、マロン、ミコト。目的地に着くまでは注意しておけよ。」


「わかったわ。」


「何かあるんだな?」


「まあな。」



 いよいよ出発だ。1台目の馬車をオレ達4人で囲む。2台目の馬車を暁のメンバーで囲んだ。目的地はナデシア聖教国の聖都コンスタンツだ。国境を越えたところで聖教国の検問があった。何もなくそこを通過して、最初の街テキススに向かった。うっそうとした森の中に入っていく。



「魔物がいるわね。」


「そのようだな。結構な数がいるな~。マロンとミコトに魔法は使わないように言っておいてくれ。」


「わかったわ。」



 しばらく歩いていると、森の中からゴブリンとオーガが集団で現れた。本来、ゴブリンとオーガが共同することはない。何か不自然だ。



「こっちはオレとリンだけで十分だ。マロンとミコトは後ろを援護してやってくれ。」


「うん。」


「承知した。」



 オレとリンは剣を抜いて目の前のゴブリンとオーガに向かって行った。



デヤー



スパン バタン



 ゴブリンもオーガもオレ達の敵ではない。どれも一太刀で片が付く。後ろ見るとマロンとミコトが敵を殲滅したようだ。すると、暁のメンバーがオレ達のところにやってきた。



「やっぱりSランクは凄いな~!あっという間にオーガまで倒しちまうとはな~。お陰で助かったぜ!」



 するとミコトが彼らに言った。



「お前達も中々のもんだったぞ!ただ、パワーが足りないな。もう少し基礎体力を付ければ、オーガキングぐらいは余裕で倒せるぞ!」


「本当か?」


「ああ、間違いないさ。それと剣を買い替えた方がいいな。せめてミスリルの剣を使え!切れ味が全然違うからな。」


「報酬をもらったら武器屋に行ってみるよ。」



 なんかミコトが人にアドバイスできるようになったことが嬉しかった。そして、馬車が再び動き出した。



「アスラ。」


「ああ、気づいたよ。森の中に3人いたよな。」


「そうね。多分、何かの方法で魔物を操っていたんだと思うわ。」


「そうだな。確証はないが、馬車を襲ったんじゃなくてなんか他に目的があるような気がするよ。」


「やっぱり、あのギャラードとかいう商人が怪しいわよね。」


「まあな。」



 それから何もなく国境の街テキススに到着した。翌朝出発することにして一旦解散だ。暁のメンバーはオレ達とともに行動することになった。時間も早かったので、オレ達は宿泊する宿とは別の食堂に行くことにした。



「アスラ達はどうしてそんなに強いんだ?」



 暁のリーダーのオクトが聞いてきた。



「世界中を旅してるからさ。」


「なるほどな~。どこに行ったんだ?」


「いろいろさ。」



 隣からリンが言った。



「あんた達も強くなりたいならフェアリー大陸にでも行ってきなさい。ただ、命の補償はしないけどね。」


「フェアリー大陸か~。噂には聞いたことがあるぜ。獣人族やエルフ族、それにドワーフ族がいる大陸だろ?」


「そうよ。ただし、フェアリー大陸までたどり着けたらの話だけどね。」


「どういうことだ?」


「強力な魔物が住んでいる海を渡るのよ。今のあなた達じゃ無理かもね。」



 するとセプトが言い返してきた。



「さっきから聞いていれば、なんか俺達のことを馬鹿にしてないか?」


「そんなことないわ。あなた達が強くなりたいっていうから教えてあげただけよ。」



 するとセプトはリンの言葉で頭に血が上ったようだ。



「リンさんよ~。そこまで言うなら俺と模擬戦をしてくれないか。」



 リーダーのオクトが止めに入った。



「やめとけ!セプト!」


「オクト!お前よく我慢できるな!」



 するとリンがセプトの前に出た。



「いいわよ。相手してあげるわ。」



 オレはわざとリンに向けて石を投げた。リンは目にも止まらない速さで背中の剣を抜いてその石を斬った。石はその場で2つに分かれて地面に落ちた。それを見ていたセプトは信じられないものを見たという顔になってしまった。



「どう?模擬戦してみる?」


「いいや。あんた達が強いことはわかったよ。すまなかった。」


「いいのよ。私が言いたかったのは、海を渡ってフェアリー大陸まで行って、無事に帰って来れたら強くなっているって言ったのよ。どう?強くなりたいならそのぐらいやってみなさいよ。」



 するとマロンがポツリと言った。



「フェアリー大陸は余裕!帰ってきたら魔大陸に挑戦!」



 暁のメンバーの顔が引きつっている。どうやらマロンの言ったことが理解できたようだ。



「アスラさん。お願いがあるんだ。この依頼が終わるまで俺達に修行を付けてくれないか?」



 なんか呼び方が変わった気がする。



「いいよ。」



 するとミコトが慌てて彼らに言った。



「お前ら、アスラに修行を頼むってことがどういうことかわかってるんだろうな!」


「えっ?!」


「死ぬ気でやらないと本当に死ぬぞ!」


「ま、まじか?!」


「どうする?」



 するとセプトが頭を下げてきた。



「お願いします。アスラさん。俺達強くなりたいんだ!強くならないといけないんだ!」



 リンが聞いた。



「どういうこと?」


「俺達4人は両親がいなくて孤児院で育ったんだ。だから、せめての恩返しに金を貯めて孤児院を立て直してやりたいんだ。お願いします。アスラさん。」



 なるほどと思った。4人のオーラがきれいな色をしている理由がわかった。その日から彼らの修行は始まった。身体強化はリンが担当し、剣術はミコトが担当する。オレは当然体力づくりの担当だ。マロンには別行動で怪しい商人のギャラードを調べてもらうことにした。


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