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魔王少年アスラ  作者: バーチ君
ナデシア聖教国
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ナデシア聖教国に向けて出発

 それから1か月ほど経ち、第3王子ハウザーとランの結婚式が行われた。神や天使であると知られてしまった以上は当たり前なのかもしれないが、オレ達も出席することになった。式は盛大に執り行われて無事に問題なく終わった。



「羨ましいわね。私達も早くあんな素敵なドレスを着たいわよね。そう思うでしょ?マロンもミコトも。」



 ミコトがいつものようにもじもじしている。



「私は別にドレスは・・・」


「ならミコトはアスラのお嫁さんにならなくていいんだ。」



 今度は顔を真っ赤にして怒り始めた。



「誰もそんなことは言ってないだろ!ただ、私のような女があんな綺麗なドレスを着ても似合わないからだ!」


「そんなことないさ。ミコトは物凄く美人だと思うよ。リンやマロンだって物凄く可愛いしね。3人ともドレスが似合うと思うけどな~。」



 3人が揃ってもじもじし始めた。



「それよりそろそろ聖教国に行こうか?」


「そうね。もうアスラや私のことも知られているだろうしね。」



 リンが言った通りすでに世界中にオレとリンのことが伝わっていた。魔王だと思われていたオレが実は慈愛神だったというのだから、その反響はかなり大きい。「やはりそうだったか」とか「アスラさんならありえない話じゃない」とか、ほとんどが好意的な反応だ。だが、まったく逆の反応をしている国もあった。ナデシア聖教国だ。聖教国は最高神ナデシア様を祭り上げることで世界中の国から上納金をとっているのだ。しかも、病気治癒のためと称して一般人からも高額な寄付金をとっている。



「ヨハルト教皇様。スチュワート王国に現れた魔王が慈愛神だったという件ですが、どのようにコメントを発表しますか?」


「そのまま放置しておけ!別に我々が反応する必要はない。どの聖典にも『慈愛神』などという神など書かれていないのだから。」


「ですが、人々は我々に真意を確認したがっているのです。」


「マゼット司教よ。では、人々に聖典を確認するように伝えよ!この世界の神の中に『慈愛神』などは書かれていないとな。」


「わかりました。」



“このままではまずいな~。我らへの忠誠心が薄くなってしまうではないか。今までのような生活ができなくなってしまう。それだけは何としても許されん。”



 ヨハルト教皇は側近のユカルダ司教を呼んだ。



「ユカルダよ。このまま『慈愛神』を名乗るものを放置しておくわけにはいかん。」


「おっしゃる通りですな。」


「そこでだ。まずはそ奴の悪評をたてよ。『魔王』であることを強調し、魔王が力でなく精神的に人々を支配しようとしていると広めるのだ。」


「なるほど。いい考えですな。」


「それと、お前の配下の聖騎士達に命じて暗殺せよ。手段は問わない。よいな。あくまでも暗殺だぞ!」


「はい。わかりました。聖騎士達には素性がばれないような恰好で行かせます。」


「頼んだぞ!」


「はい。」



“あやつが魔王を名乗った時点で行動すべきだったな。まあいい。まだ世界の人々は我らの味方だ。愚かな民衆は我らの言うなりなのだからな。” 



 

 ナデシア聖教国でそんな話がされていることとも知らずに、オレはお父様とお母様に挨拶をしてナデシア聖教国に向かうことにした。



「いよいよわが祖国だ。なんかワクワクしてきたぞ!」


「ミコト。あなたの国に王様はいないんでしょ?」


「ああ、そうだな。教皇様が一番偉いな。その次に司教達だ。さらにその下には司祭がいるんだ。」


「教皇ってどんな人物なの?」


「人々からは物凄く恐れられているんだ。私も謁見したことがあるが、態度が傲慢で鼻持ちならない野郎さ。」

 

「ふ~ん。結構な悪党ってことね。」



 ミコトの言葉に納得だ。帝国に味方するように聖騎士を派遣してきたのも自分の権威を示すためだろう。



 オレ達の旅は順調に進んで国境の街ローハイドまでやってきた。街の中に入ると、ローハイドの街は聖教国との交易の街として賑わっていた。スチュワート王国の内乱が終結して十数年経過し、すべてが順調になっている証拠だ。ビクトル国王やユリウス公爵がいかに努力したかがわかる気がする。



「賑わってるわね。」


「そうだな。」


「リン姉。あそこに屋台がある!」


「マロン!行くわよ!」


「うん!」



 リンとマロンとミコトが走って屋台に向かった。オレはゆっくりと歩きながら街の様子を見渡してみた。人々が元気に大通りを行き来している。そして、通り沿いには様々な店が並び、どの店にもお客が入っている。ただ気になるのは、冒険者の数が少ないということだ。本来国境の街ならば、商人の護衛や街道の警備などで仕事があるはずなのだが。



「なあ、リン。この街の冒険者ギルドに行ってみないか?」


「いいわね~。行ってみましょ。」



 オレ達は冒険者ギルドに行った。ギルドの中は閑散としている。そこで暇そうにしている受付の女性に話を聞くことにした。



「ちょっと聞きたいんですけど。」


「あら、なにかしら?」


「なんか冒険者の人達が少ないような気がするんですけど。」


「そうね~。昔はもっとたくさんいたようよ。でも、最近は治安が良くなって商人達の護衛の仕事が減ったのよ。それに、最近強力な魔物も減ったしね。」


「そうなんですね。」


「冒険者の人達は生活があるから大変かもしれないけど、人々にとってはありがたい話よね。」



 まさかオレ達の影響がこんな形で出ているとは思わなかった。では、仕事のなくなった冒険者達は何をしているのだろうか。



「冒険者の人達はどうやって生活してるんですか?」


「そうね~。Cランク未満の人達はほとんど転職するわね。Cランク以上の人達は経験があるから、それでも護衛の仕事や薬草採取なんかを中心に仕事してるわよ。」


「そうなんですね。ありがとうございました。」


「あなた達も冒険者なんでしょ?」


「ええ、そうですけど。」


「仕事がなくて大変ね。そうだ!聖教国行きの商人が護衛を探していたわよ。どうする?応募してみる?」



 リン達を見ると頷いている。



「そうします。どうすればいいですか?」


「なら全員カードを見せてくれる。」



 オレ達がカードを見せると受付の女性は目を丸くして驚いた。



「ちょ、ちょっとちょっと、あなた達、Sランクなの?」


「はい。そうですけど。」


「わかったわ。本来試験があるんだけど、試験しなくていいわよ。私が推薦してあげるから。」


「ありがとうございます。」



 翌日の朝にギルドに来ることを約束して、その日はギルドを後にした。


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