アスラ、久しぶりの故郷
オレ達はスチュワート王国に転移した。久しぶりの家だ。家に到着すると、メイド長のマイヤーが慌てて奥にいるお父様とお母様のところに行った。その慌てぶりはマイヤーらしくない。オレは冗談のつもりでマイヤーに言った。
「マイヤー!マイヤーは侯爵家のメイド長なんでしょ!」
「あ~。すみません。そうでしたね。アスラ様。まさかアスラ様に注意されるようになるとは。マイヤーは嬉しいです。」
「別にいいさ。ハッハッハッハッ」
なんか昔よくマイヤーに叱られたことが懐かしくなった。
「ただいま!お父様!お母様!」
「帰って来たか。アスラ。」
「アスラちゃ~ん。お母さん、すっごく寂しかったのよ~!」
お母様がいきなりオレに抱き着いてきた。昔はお母様の豊満な胸で窒息しそうになったが、今はオレとお母様ではオレの方が大きくなっている。
「アスラちゃん!あなた成長したの?」
「当たり前じゃないですか?オレだってもう20歳になるんですよ。」
「だって、アスラちゃんには罰が与えられてるんじゃなかったの?」
「ああ、その件ですか。ナデシア様が20歳までは成長できるようにしてくれたんですよ。」
するとお父様が驚いた。
「アスラ!お前、またナデシア様にお会いになったのか?」
「ええ、何度か会いましたよ。」
「お前ってやつは・・・まあいい。今日はアスラ達の帰還パーティーだ!ハーリー!すぐにパーティーの手配をしてくれ!私はユリウス公爵のところに行ってくる。」
お父様は慌てて出かけて行った。オレ達はパーティーが始まるまでの間、王都ビザンツを散策することにした。
「アスラ~。あなたと私のことをみんなに話した方がいいんじゃないかな~。」
「どうして?」
「なんかさっきのアスラのお父さんとお母さんを見てると、騙してるようで心苦しいのよね。」
オレとリンがこっそり話をしていたのが気に入らなかったのか、マロンとミコトが怒り始めた。
「さっきから二人だけで何を話してるんだ!私とマロンには言えないことなのか!」
「秘密厳禁!家族!家族!」
オレ達は王都を囲む城壁の上にやって来た。オレとリンが真剣な顔になったせいか、マロンもミコトも緊張している。
「ケッセラとの戦いの後、オレは神界にいたんだ。目が覚めた時にはすでに300年経っていてさ。」
「300年?!なら、どうしてアスラはここにいるんだ?」
「ナデシア様にお願いして時間を戻してもらったんだよ。」
「そういうことか~。」
「実はその際にオレとリンに変化があったんだ。」
「どんな変化だ?」
するとリンがニコニコしながら言った。
「私、見習いじゃなくなったのよ。凄いでしょ!」
「えっ?!」
マロンとミコトがポカ~ンとしている。
「なによ!もっと驚きなさいよ!二人とも!」
するとマロンが言った。
「リン姉は天使様になったの?」
「そうよ!フン!」
リンが平らな胸を前に出した。すると、マロンも同じ姿勢をとる。
「フン!あたし、天使様より大きい!マロンは偉い!」
「マロン!何言ってるのよ!そういうことじゃないから!」
ハッハッハッハッ
今度はオレの番だ。
「実はオレも変わったんだ。」
「アスラもか?」
「ああ、そうさ。オレの罪はすべて許されたんだ。」
リンの時と違ってマロンもミコトも焦ったようだ。
「どういうことだ?もしかしてアスラは神界に帰るってことなのか?」
「そうだな。でも、大分先の話さ。」
するとマロンがいきなりオレに片膝をついた。そして今までになく真剣な口調で言った。
「おめでとうございます。慈愛神ガイア様。」
それにつられてミコトまで片膝をついた。
「やめてくれよ!マロン。ミコト。そうなるのが嫌だから黙っていたんだ。オレはガイアじゃないよ。アスラだ。今まで通りのアスラさ。」
マロンとミコトが立ち上がった。いつもならマロンの方から腕に抱き着いてくるのだが、今回はオレの方からマロンとミコトの手を握った。2人は驚いた顔をしていたが、すぐに笑顔が戻った。そして、再び街の中を散策し始めた。
「アスラ!あのレストランに入ろうよ。」
リンが指さした先は思い出のレストラン、ミリューだった。
「いいね。久しぶりにオムでも食べようか。」
オレ達が店の中に入ると、そこにはシュバルツとマリア、それに小さな男の子がいた。どうやら二人の子どものようだ。
「久しぶり!シュバルツ!マリア!」
「アスラじゃない?!いつ帰ってきたのよ。」
「お前達の噂は聞いてるぞ!帝国を滅ぼしてガイア共和国を作ったんだってな!」
するとリンが横から口を出した。
「それだけじゃないわよ!魔大陸に言ってディアブ王国とマジョリカ王国を統一して、ミラクル王国を作ったのよ。」
「それは本当か!!!」
「まあね。でも、オレだけじゃないさ。ここにいるリンやマロン、ミコトの協力があったからできたんだよ。」
リンもマロンもミコトも嬉しそうだ。
「俺もアスラと一緒に世界中を旅したかったよ。」
「何言ってるのよ!シュバルツ!私との生活に不満でもあるの?」
「違うさ。だって思い出してみろよ。マリア。アスラは俺達と同じ学院生だったんだぞ!俺達がアスラと一緒に旅をしたっておかしくなかっただろ!」
「無理よ。だって私達の実力じゃあ、ゴブリンキングだって一人じゃ難しいわよ。アスラ達は私達よりはるかに強いんだから。」
マロンが二人の子どもの相手をしている。以前から思っていたが、マロンは子どもに好かれるようだ。
「そうそう。私達の子どもよ。ご挨拶しなさい。アーサー。」
さすが貴族の子どもだ。アーサーがオレ達に挨拶をしてきた。
「僕はシュバルツ侯爵の長男のアーサー=カザリオンです。お見知りおきを。」
「偉いな~。アーサーは。オレはアスラだ。よろしくな。」
「私はリンよ。」
「私はミコトだ。」
「あたしはマロン。」
その後、今日の夜にオレの家でパーティーが開かれることを話した。どうやら3人で参加してくれるようだ。因みにマイケルとシャリーも誘って欲しいと頼んだ。
「お腹一杯よ。これからどうするの?」
「冒険者ギルドに行ってみようか。」
「久しぶりね。いいわよ。」