総力戦(2)
マロンがリッチのケルトンと戦っている頃、王城の前まで来たオレ達の前にデュラハンのデッセンとサキュバスのグルシアが現れた。
「アスラ!あなたはマジョリーヌと先に行きなさい!」
「頼んだぞ!リン!ミコト!」
「任されたわ!」
「了解だ!」
リンとミコトがデッセンとグルシアの前まで行った。オレとマジョリーヌはそれを横に見ながら城の中に入っていく。
「貴様らがわし達の相手をしてくれるのか?」
「そうよ。あんたの相手は私がしてあげるわ!覚悟しなさい!」
「笑わせる!貴様がこのわしに勝てると思っているのか!フン!」
デッセンが剣を横に振った。その風圧だけでリンは吹き飛ばされた。
「やったわねー!お返しよ!」
今度はリンが剣を抜いて横に振った。すると、ゆらゆらと剣から立ち上る炎がデッセンに向かって飛んでいった。デッセンは余裕で避けたように見えたが、首に巻いている黒色のスカーフが燃え落ちた。
「ほう~!やるではないか。貴様は何者だ?」
リンが魔力を解放していく。凄まじい魔力がリンの身体から溢れ出る。そして背中には純白の翼が現れた。さすがにデッセンも焦ったようだ。
「き、き、貴様はもしや天使か?!」
「そうよ。まだ見習いだけどね。」
「なるほどな。先ほどの無礼な発言は撤回しよう。わしの相手にとって不足はない。」
デッセンも魔力を解放する。漆黒のオーラがどんどん膨れ上がる。
「行くぞ!」
デッセンの姿が消えた。するとリンの姿も消えた。2人は目にも止まならい速さで攻守を繰り広げているのだ。
「グホッ」
リンの剣がデッセンの腹に当たった。だが、致命傷にはならない。
「さすがに強いな。これならどうだ!」
デッセンは手に抱えている自分の頭を上空に放り投げた。すると、放り投げた頭の目が光ってリンの身体を照らした。
「どうだ?これで動けまい!」
どうやらリンの身体を拘束する魔法のようだ。
「フ~ン。これがあなたの奥の手ってこと?なんかすごくお粗末ね。」
「なんだと~!」
リンは動きづらそうにしていたが、身体に力を入れるとリンの身体を拘束していた赤い光の糸が消滅した。
「終わりね。」
「まさか、そんなはずは?!俺の拘束は誰にも破れないはずだ!」
「そんなこと聞いてないわ!すべてを焼き尽くせ!『地獄の炎よ』」
リンの剣からゆらゆらと真っ黒な炎がたちこめる。その炎がデッセンに向かって飛んでいく。デッセンは剣を振って必死で逃れようとするが、漆黒の炎がデッセンを包み込んでいく。
「グワ——————!!!」
「フー 終わったわね。ミコトは大丈夫かな~?」
戦いを終えたリンがミコトの方を見るとまだ戦いが続いていた。先日見たグルシアとは全く別の生き物がそこにいた。恐らく、前回負けたことを反省したのか本来の姿で戦っているのだろう。その姿はサキュバスの時と違ってとても綺麗とは言えない。まるでアラクネ族のような蜘蛛の姿をしていた。
「あなたやるじゃない。でも、同じ速さの攻撃なら足の数で優ってる私の勝ちね。」
グルシアは12本の足に武器を持っている。それに対してミコトは剣1本だけだ。
カキン バキン
ボコッ
グホッ
ミコトが剣で防いでいるがやはり不利だ。グルシアが複数の足の武器でミコトを攻撃している。たまらずミコトは膝をついて口から血を吐き出した。
「他の連中に比べてお前は弱いな!人間!所詮、人ごときが悪魔族の私に勝てるはずがないのよ!」
「ああ、そうさ。私は人間だ!私はアスラ達よりもはるかに弱い!そんなことはお前に言われなくたってわかってるんだよ!だがな、お前は知らないだろうが人間にだって無限の可能性があるんだよ!」
「ならば、その可能性ってやつを見せてみろ!その前にお前の命があればの話だがな。」
グルシアの身体から黒く鋭い物が飛んでくる。ミコトがそれを剣で叩き落す。さらに、グルシアの身体から黒く長い脚が伸びてミコトを突き刺そうとしてきた。
カキン カキン
ハーハーハーハー
ミコトは息が切れ始めている。そして自分の魔力を聖剣リジルに注ぎ込んでいく。
ウオー
ミコトは大声をあげて自分の持てる魔力を聖剣リジルに注ぎ込んだ。大量に魔力を吸い込んだ聖剣が、ミコトの意志に反応するかのように形を変化させていく。そして過去に召喚された勇者が持っていた『刀』になった。その刀からはとてつもない魔力が溢れ出している。
「すべてを断ち切れ!『真空斬』」
ミコトが刀を振ると空気が切断されていく。そして、グルシアの身体も上下2つに切断段された。
「これが人間の可能性だ!思い知ったか!ハーハーハーハーハー」
「終わったようね。ミコト。」
「ああ、見てたのか。リン。」
「まあね。あなたがどの程度強くなったのかと思ってね。」
「人が悪いな~。」
2人が話をしているとそこにマロンがやってきた。
「マロンも終わったのね。」
「余裕!」
「そうか~。マロンも余裕だったのか~。私はぎりぎりだったな~。」
「鍛錬鍛錬!」
「そうだな。そうだよな。」
3人は城の中に入っていった。