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魔王少年アスラ  作者: バーチ君
魔大陸
111/151

総力戦(1)

 意外なことに、アラクネ族の村を出てからはオレ達の前に敵が現れることがなかった。



「どうしたんだろう?絶対にオレ達の行動はバレてるはずなのにな~。」


「もしかしたら戦力を王都に集結させてるんじゃないの?」


「リンの言う通りだ。あいつらは私達の実力を知ってるからな。無駄に兵力を分散させて失うようなことはしないだろう。」


「うん。アスラ兄の実力ばれてる!」



 確かにそうかもしれない。だが、そうだとするとこちらにも犠牲が出る可能性がある。そんなことを考えていると、頭の中にラミリスの声が聞こえた。



“大丈夫ですよ。ガイア様。皆さんのことは我々が援護しますから。”


“ありがとう。ラミリスさん。”



 やはりオレ達の行動がばれていたようで、王都ラーマに到着すると城壁の周りにはかなりの数の魔物が集められていた。そして、その後ろに魔族達が控えている。



「どうするの?アスラ。」


「魔物はともかくとして、魔族の人達はあまり殺したくないんだよね。」


「もしかして操られているかもしれないから?」


「ああ、そうさ。」



 するとミコトが真っ赤な顔で言ってきた。



「アスラ!これは戦争なんだぞ!そんなことを言ってたら何もできないじゃないか!」


「アスラさん。ミコトさんの言う通りですよ。同じ魔族の私が言うのも変ですけど、彼らを殺さずに戦うのは難しいと思いますよ。彼らの中にも相当な実力者がいますから。」



 2人の意見はもっともだ。それでもオレには罪なき人々を殺すことに抵抗があった。すると目の前にいくつも光の球が現れ、その光の球が人化していった。



「話は聞いていましたよ。やはりガイア様は優しすぎるのですね。安心してください。私達が魔族達の相手をしますから。」


「ありがとう。ラミリスさん。大精霊のみんなも気を付けてくれ。相手は魔族だ。もし危ないと思ったら、相手を殺してもしょうがないから。」



 するとウンディーネとシルフィーがいつものようにオレに抱き着きながら言った。



「やっぱりガイアちゃんは優しいのね。そんなガイアちゃんが大好きよ。」


「そうそう。ウンディーネの言う通り。私も大好きよ。でも優しすぎるのって危険だからね。」


「ああ、わかってるさ。」



 最初に精霊女王ラミリスが魔法で魔物達を攻撃する。それを合図に大精霊達が魔族に対処し、その間にオレ達は王都の中に侵入して王城へ向かうこととなった。



「じゃあ、魔法を放つわよ!」


「頼む!」



 ラミリスの身体の周りに巨大な光が現れ、その光が魔物達に向かって放たれた。7大精霊達が一斉に魔族に向かって行く。



「オレ達も行くぞ!」


「了解!」



 ノームが魔物と魔族の間に巨大な壁を作った。魔族達はいきなり壁ができて何が起こったのか理解できていないようだ。戸惑っている魔族達をウイスプとシェイドが光りの鎖と闇の鎖で拘束していく。ドリアードも負けていない。地面から太い蔓を出して、次々に魔族達を拘束していった。サラマンダーとウンディーネ、それにシルフィーは大量にいる魔物達を殲滅している。



「大精霊達は大丈夫そうだな。」


「そうね。強そうなのもいるけど、彼らなら大丈夫じゃない。」



 街の上空を飛翔して城まで向かっていると、巨大な魔力がこちらに近づいてきた。



「来たわよ!」



 前方から真っ黒な光がオレ達に向かって放たれた。



「避けろ!」



 真っ黒な光はオレ達の脇をかすめて城壁にあたり、城壁の一部が大きく崩れた。



「よく避けたではないか!」



 目の前に現れたのはリッチのケルトンだ。



「こいつは任して!」



マロンが前に出てリッチに対峙した。



「マロン!任せたぞ!」


「うん!」



 リッチはマロンを見てニタニタと笑っている。恐らく、マロンが子どもだと思って侮っているのだろう。



「お前のようなガキが俺様の相手になるのか。」



 リッチが両手を広げると地面からスケルトンやゾンビが現れた。上空にはスケルトンドラゴンまでいる。



「ピーちゃん出てきて!」



 マロンが声をかけると魔方陣が現れ、そこからフェニックスが姿を現した。



「ピーちゃん!スケルトンドラゴンをお願い!」



ピューヒュー



 フェニックスは口からスケルトンドラゴンに炎のブレスを放った。スケルトンドラゴンは大きく羽ばたいてそれを防ぐ。その間に、マロンは下に群がるスケルトンとゾンビに向けて光魔法を放った。



「聖なる光よ!この者達を浄化せよ!『ホーリーボール』」



 マロンの手に聖なる光が現れ、その光がスケルトンとゾンビを照らしていく。スケルトンとゾンビは武器を片手にマロンに向かっていたが、その途中で光の粒子となって消えてしまった。



「やるではないか!小娘!」



 ケルトンは両手を広げてブツブツ何かを唱えている。すると、辺り一帯がどんどん暗くなり、暗闇の世界に代わっていく。その暗闇の中にはマロンとケルトンしかいない。



「この暗黒世界から逃れることはできんぞ!死ね!」



 どこからともなく剣が現れマロンに襲い掛かる。



ザクッ 



「痛ッ!」



「ハッハッハッハッ 手も足も出まい!切り刻んでくれるわ!」



 その後も暗闇から剣が次々と襲い掛かる。



カキン バキン


ザクッ



 マロンの手や足に傷ができ、血が流れ出ている。



ハーハーハーハー



「どうやらここまでのようだな。お前の頑張りは褒めてやろう!だが、所詮俺様の敵ではなかったということだ!死ね!」



 巨大な釜が突然暗闇から現れた。そしてマロンを切り裂こうとマロンめがけて飛んできた。だが次の瞬間、不思議なことが起きた。マロンの姿が黒い靄となって消えてしまったのだ。ケルトンは驚いた。



「ど、ど、どういうことだ?」



 マロンには堕天使族の血だけでなくバンパイア族の血も流れている。マロンは無意識のうちにバンパイア族の技で切り抜けたのだ。暗闇の世界での戦いが、マロンの身体に流れるバンパイア族の血を目覚めさせたのかもしれない。



「お前は強い!あたしはもっと強い!」



 マロンが手を振り下ろすとどこからともなく現れた蝙蝠が、リッチの身体にまとわりついていく。リッチは必死で蝙蝠達を振り払おうとしている。



「これはバンパイア族の技!どういうことだ?!」


「お前に答える必要はない!」


「そうか。わかったぞ!お前はカエサルとマジョリーヌの娘だな。ハッハッハッハッ 残念だが、こんなもので俺様がやられるわけがなかろう!わずらわしい!腐ってしまえ!」



 リッチの手から黒い霧が現れて蝙蝠達を腐らせていく。そしてリッチの眼前が開けた。だが、目の前には巨大な光の球を放とうとしているマロンの姿があった。



「待て!待ってくれ!」



 マロンが放とうとしているのは堕天使族の聖なる光の玉だ。



「えい!」



 巨大な光の球がリッチめがけて飛んでいく。



「お、おのれー!この俺様がお前ごとき・・・・」



 リッチは光の球に飲まれて消滅してしまった。そして、マロンの周りを包み込んでいた暗闇が晴れていく。上空にはスケルトンドラゴンを倒したフェニックスがいた。


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