マジョリカ王国の女王マジョリーヌ
マジョリカ王国の街フィレントにある湖の畔に世界樹の幼木を植えたオレ達は、再び王都ナポリに向けて出発した。王都に到着した時にはすでに日が沈みかけていた。そして、街の中に入って目を疑った。
「これが王都ナポリか~!」
「凄いわね~!こんなきれいな街は初めてよ!」
「アスラ!ここは間違いなくナポリだよな!天国じゃないよな!」
ミコトが天国と間違えるのも無理はない。家がすべて真っ白なのだ。しかも、家の前にはきれいに花々が飾られている。家の建築様式も人族の者と大きく違う。恐らく木造というよりも魔法で作ったのだろう。
「あれがお城!」
マロンの指さした方向には真っ白で巨大な城が見えた。
「凄いな~。なんか圧倒されたよ。」
「だから言った!ナポリは綺麗って!」
マロンの言葉を疑うわけじゃないが、ここまでの街だとは想像もしていなかった。すぐに王城に行くのかと思ったら、マロンがオレの手を引いて走り始めた。
「マロン!どこ行くんだ?」
「レストラン!」
マロンに連れられて街の中を走って行く。すると、街のいたるところで街灯がどんどん明るくなっていく。恐らく魔石を利用しているのだろうが、時間でつくようになっているのか、明るさに反応するのかその仕組みはわからない。いずれにしても人族の街にはないものだ。
「この店!すっごく美味しい!」
オレ達はお洒落なレストランに入った。店の中のテーブルや椅子もすべて白色だ。メニューを見ると変わった名前の料理が沢山あった。よくわからないメニューを注文して失敗するよりも確実なものを選ぶことにした。
「オレはこのシチューのコースで。」
「私も一緒でいいぞ。」
「私は同じコースとこのボアステーキね。」
全員が注文した。そして、料理が来るまでの間にこれからのことを相談した。
「お城にはいつ行くんだ?」
「明日!」
「マロン~。今日じゃなくていいの?」
「うん。」
「マロン。お前、母親と長いことあってないんだろ?会いたいだろうが。」
「うん。」
料理が運ばれてきた。目の前のテーブルが美味しそうな料理で一杯だ。オレはシチューを一口食べた。
「旨い!これめちゃくちゃ旨いぞ!」
オレのあまりの驚きようにリンとミコトもシチューを食べる。そのあまりの美味しさに言葉が出ないようだ。他のどの料理も今まで食べたことがない程に美味しかった。
「あ~、もうお腹いっぱい!」
「アスラ!すごく美味しかったな!この店にまた来ような。」
「このお店最高!世界で一番!」
すると先ほどとは違った女性がデザートを運んでいた。その女性を見ると魔力量が半端ない。それに神聖な魔力だ。
「もしかしてマジョリーヌさんですか?」
オレの言葉を聞いてリンもミコトも女性を見た。マロンはニコニコしている。
「やっぱりわかっちゃったかしら。マロンの言う通りね。初めまして。私はマロンの母親のマジョリーヌです。皆さんをお待ちしていたんですよ。」
「やはりそうでしたか。オレはアスラです。」
「私はリン。」
「私はミコトだ。」
どうやらこのお店はマジョリーヌが経営しているようだ。マジョリーヌはマジョリカ王国の女王でありながら、趣味が高じてレストランを経営しているのだ。
「皆さん。お城の方に来てください。」
オレ達が王城に行くと応接室に案内された。しばらく待っていると、女王らしい服装に着替えたマジョリーヌがやってきた。
「改めまして、皆さん、私がマジョリカ王国の女王マジョリーヌです。ようこそお越しいただきました。マロンがいつも大変可愛がっていただいているようでありがとうございます。」
「マロンはオレ達の家族ですから。家族はお互いに助け合うのが普通ですから、気にしないでください。」
「アスラさんはマロンが言っていた通りの方なんですね。なんかマロンが好きになるのもわかった気がします。」
「えっ?!」
「何を驚いているのよ!アスラ!私やミコトだってアスラのことが大好きなんだからね。」
「あ~、そういうことね。オレはマロンを妹のように思っていたからさ。」
なんか恥ずかしそうにしていたマロンが肩を落とした。
“何かオレへんなこと言ったかな~。”
するとマジョリーヌがマロンを見て言った。
「皆さんと旅をさせていただいたおかげでマロンもだいぶ成長したようです。感謝します。」
するとマロンが胸に手を当てて言った。
「やっぱり気付いた!もうリン姉より大きい!」
すると焦ったのはリンだ。
「マロン!違うから!マジョリーヌさんはマロンが強くなったって言ってるのよ!」
「マロンは強い!でもアスラ兄はもっともっと強い!」
なんかやっぱりマロンはマイペースだ。
「マジョリーヌさん。確かに私やアスラと旅をした影響でマロンもミコトも魔力量は増えたかもしれないけど、マロンやミコトが強くなったのは2人が頑張ったからよ。」
「そうですね。良かったわね。マロン。」
「うん。いっぱい戦った!」
マジョリーヌに頭を撫でられてマロンは嬉しそうだ。すると、ミコトが不思議そうに聞いてきた。
「なあ、アスラ。お前やリンの魔力が特別なのはわかるが、私の魔力もそんなに増えたのか?」
「ミコト。あなたちょっと考えてみなさいよ。人族であなたほど魔法が使える人がいる?あなたの今の魔力量は、かつて存在した勇者と同じぐらいなんだから。」
「本当か?!」
「本当さ。オレとリンが別格なだけだから。」
「考えてみればそうだよな~。私はアスラやリン、マロンとずっと一緒にいるようになって感覚がおかしくなったのかもしれないな。」
するとマジョリーヌがミコトに言った。
「ミコトさん。あなたほどの魔力量は魔族の中にもいませんよ。自信もっていいと思いますよ。」
ミコトの顔がどんどん紅潮していく。嬉しさを隠せないようだ。なんかミコトが可愛い。