火山島に立ち寄る!
島を飛び立ってから3時間ほど経ったがミコトは平気のようだ。どうやら飛翔にも慣れてきたのだろう。さらに2時間飛翔したところで島が見えてきた。かなり大きな島だ。島の中央には火山のような山が見える。オレ達はその島で休憩することにした。
「アスラ兄。この島は危険!大きなトカゲがいる!」
「どんなやつだ?」
オレは大きなトカゲと聞いて、学院時代にダンジョンで遭遇したキングリザードを想像した。
「すっごく大きい!牙も大きい!爪も大きい!」
なんかマロンの説明ではよくわからない。ミコトも首をかしげている。
「なんか大きなトカゲと言われてもキングリザードしか思い当たらないんだけどな~。でも、キングリザードは私達ならそんなに危険な魔物じゃないだろ?」
「そうね。でも、マロンが危険っていうぐらいだから相当やばい奴じゃないの?」
「そうだな。普段のマロンなら、大抵のことは『余裕』とか言ってるしな。」
リンもミコトもマロンの言う危険なトカゲのことが相当気になるみたいだ。実はオレもかなり興味がある。
「なあ、マロンの言う危険なトカゲを見に行かないか?」
「いいわね~。行きましょ!」
「そうだな。私もどんな奴か見てみたいしな。」
オレ達は森の中を探索することにした。用心のために魔力感知をしながら探索するつもりだが、念のためにマロンがフェニックスのピーちゃんを召喚した。ピーちゃんは上空を旋回しながら大きなトカゲを探してくれている。
「みんな注意して!オレの魔力感知に結構大きな反応がたくさんあるから!」
「ちょっと!アスラ!それって危険なトカゲがたくさんいるってことか?」
するとマロンが思い出したようだ。
「危険なトカゲ・・・ティラって名前だった。」
ティラと聞いてリンが驚いたようだ。
「ティラ?本当にティラなの?」
「どうしたんだ?リン。」
「ティラって数千年前に絶滅したはずよ!」
「ん~・・・でも、ティラだよ。他にもステゴってやつもいる。」
「ステゴ?ステゴだってティラと同じ時代に滅んだはずよ。」
ミコトは何のことかよくわかっていない。
「なんで絶滅した生き物がいるんだ?」
「知らないわよ!多分、人族が魔大陸に行くことがなかったから、絶滅したと思っていただけじゃない。」
「なるほどな。」
上空を旋回しているピーちゃんが戻ってきた。マロンがピーちゃんの頭をなでている。
「ありがと。ピーちゃん。」
「何かわかったのか?」
「うん。南西200m先にティラがいる。」
再びピーちゃんが上空に舞い上がった。オレ達はゆっくりとティラに近づいていく。森を抜けて草原が広がっている場所に出た。オレ達が草の陰から覗き込んでみると、そこにいたのはトカゲどころの話ではない生き物がいた。8m近くある化け物だ。マロンが言っていた通り、口元には大きく鋭い牙が見える。手の爪も鋭く長い。
「どうする?アスラ。」
「別にオレ達に被害が出てるわけじゃないし、放っておくさ。」
オレ達が引き返そうとすると、ティラがオレ達に気付いたようだ。物凄い速さで走ってくる。オレ達は一斉に剣を抜いて身構えた。
グオー
ティラが咆哮をあげた。辺りの空気が振動しているかのように響き渡る。すると、右からも左からもティラがやってきた。どうやら集団でオレ達に襲い掛かるようだ。
「マロンは右、リンとミコトは左を頼む!」
「了解よ。」
「わかった。」
「任せろ!」
オレ達は剣に魔法を付与してそれぞれがティラに向かって行った。上空を旋回していたピーちゃんもマロンとともにティラを攻撃するつもりのようだ。
「ピーちゃん!上から攻撃して!」
ピー
マロンが指示した通りピーちゃんは上から炎のブレスを放った。するとティラはピーちゃんを追いかけようと上を向いてキョロキョロし始めた。その隙にマロンが剣で左足に斬りつけた。
ギャオー
ティラの足から血が噴き出し、ティラはバランスを崩した。すると今度は、ピーちゃんが後ろからティラの頭に向かって鋭い足の爪で攻撃する。ティラは堪らなくなったのか、その場から逃げようと走り始めた。次の瞬間、マロンが大きくジャンプしてティラの胸に剣を突き刺した。
グギャー
バッタン
ティラはその場に倒れて絶命した。
一方、リンとミコトも少し離れた場所でティラと対峙していた。
「ミコト!私が魔法で弱らせるからトドメは頼んだわよ!」
「わかった!」
リンが剣を仕舞い、両手をティラに向けた。すると、リンの手が光始める。
「敵を包み込め!『バブルウオーター』」
リンの手から巨大な水玉が放たれ、ティラの身体を包み込んでいく。息ができないティラが苦しみ始めて暴れだした。
「ミコト!今よ!」
ミコトが聖剣リジルに魔法を付与して鋭く振った。
『断斬剣』
すると、ティラの頭が地面に落ちた。
ドカッ
バッタン
頭を失ったティラはその場に倒れた。
「マロンもミコトも相当腕を上げたな!」
「アスラ!お前の相手はどうしたんだ?」
オレが指さすとそこには真っ黒こげになったティラが転がっていた。
「さすがだな。アスラ。」
するとリンが腕を組みながら言った。
「確かにティラは強いけど、今の私達なら余裕よね。」
「まあな。」
その後も森の中を探索すると、ピーチの実やマングルの実が結構あった。
カサカサ カサカサ
草陰から何やら物音が聞こえてくる。覗き込んでみると4本足の小太りなトカゲがいた。だがかなり小さい。
「これステゴの赤ちゃん。」
「マロン。ステゴってどんな奴だ?」
「うん。草を食べてる。大人しい。でも大きい。」
大きいと言われても、目の前にいるトカゲからは想像がつかない。ミコトとリンがステゴの赤ちゃんのところに行って体をなでている。
「かわいいわ~!」
「そうだな。以外とプヨプヨしてるな。」
2人が赤ちゃんステゴの前にピーチを置くと、ステゴの赤ちゃんがすごい勢いで食べ始めた。
ムシャムシャムシャ
ドシ ドシ ドッシ
なんか地面が揺れて、大きな足音が近づいてきた。だが、殺気は感じられない。すると、目の前に5メートリ以上ありそうな巨大な太ったトカゲが現れた。どうやらステゴの親のようだ。ステゴは赤ちゃんに餌を上げているオレ達を見ていきなり舌を伸ばしてきた。
ペロ
「汚なー!」
リンがステゴの唾液でベトベトだ。ミコトが慌ててリンから離れた。
「リン!私に近づくなよ!」
「何言ってるのよ!ミコト!私達は家族でしょ!」
キャー
リンがいきなりミコトに抱き着いた。
「や、や、やめろー!離れろー!」
「もう遅いわよ!」
リンもミコトもベトベトだ。リンはベトベトが我慢できなかったらしくオレにお願いしてきた。
「アスラ~。お風呂出してよ。」
ミコトが不思議そうだ。
「お風呂?お風呂を出すってどういうことだ?」
「そうだ。ミコトは知らなかったわよね。アスラはフェアリー大陸でお風呂が作れるようになったのよ。」
「そうなのか~。なら私もお風呂に入りたい!アスラ!お風呂を作ってくれ!」
確かにお風呂は作れるが、こんなところでお風呂に入っていたらいつまたティラが来るか分からない。オレは躊躇しているとマロンが教えてくれた。
「リン姉。ミコト姉。温泉があの山の麓にある。そこなら安全。」
「そうなのか?マロン。その温泉まで案内できるか?」
「ピーちゃんに案内してもらえばいい。」
ピーちゃんが上空に舞い上がり、オレ達を温泉まで誘導してくれるようだ。オレ達はピーちゃんの後を追いかけた。30分ほど歩いて行くと卵の腐った臭いがし始めた。どうやら近くに温泉があるようだ。
「あったわ!」
温泉を見つけたリンがいきなり服を脱ぎ始めた。それを見てマロンも服を脱ぎ始めた。
「おい!リン!マロン!ちょっと待ってくれよ!」
「なんでよ?」
「オレがいるだろ?」
「いいわよ。アスラにだったら見られても。どうせ減るもんじゃないし。」
「減らない減らない!」
オレは慌てて少し離れた場所まで行った。3人はゆったりと温泉に浸かったようだ。そしてその日は火山島で野宿して、翌日オレ達は魔大陸に向けて飛び立った。




