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侍領主でござる  作者: ケヤキ
第一章 クラウス領 領都ダル編
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9.宝探し

ディアス王国魔術学院へ向けての出発日まで、残すところ数日となった。うっ、いろいろ心配で目眩がするのである……。


取り敢えず、私服や日常品などの必需品は既に王都へ送った。一つだけ、まだ準備が出来てない物がある。それは杖なのだ。魔力は代々、血統によって受け継がれ、家系伝来の杖も血統と共に引き継がれていく。


クラウス家の場合、有名な王宮魔術師だった祖父上が杖を持っていたそうだ。ちなみに二つ名は地獄の恋人……。うむ。格好が良いのか、悪いのか、よく分からない。


とにかく、祖父上は俺が生まれる前から行方不明になっている。殺された、死んだとも聞くし、なんらかの魔術の失敗でとも聞く。


父上が云うに、理由は分からぬが行方不明は確かで、安否も分からぬそうだ。そしてクラウス家の杖も行方が知れないのである。



どうするかな? そもそも何で杖がいるのか、また困った時のジョセフ頼みで聞いてみた。


すると、杖は魔力を底上げすることができ、特に特別な石が嵌められていると、効果はさらに上がるそうだ。


そして杖は意志を持つという。うむ、これは分かる。刀も意志を持つからな。特に長い年月を経た名工による刀は意志を持ち、使用者を選ぶと云われている。きっと杖も同じなのだろう。



とにかく、杖がないのは困るので、父上に相談してみた。


「父上、祖父上の杖はどこにあるのでしょうか?」

「知らんよ」


「ご、ご覧になったことは?」

「なんか、金だったような? いや木? 石?」


どんな形か、素材もわからなそうである……。どうしたものかと思っていると、父上が何か閃いたらしく、得意げな顔ですくっと立ち上がった。


「それじゃあ、宝の間で探してみるか。ひょっとしたらそこにあるかもしれん」


父上に連れられ、隠し部屋から、階段を降り、隠し部屋。そして、今度は階段を登り、隠し部屋……。


一周して戻ってきたのでは? と思ったのだが、違うらしい。


最後の仕掛け扉を開けて中に入ると、うほほぅ、ぴかーと眩しいのである! 無造作に床に置かれた沢山の酒樽には蓋がなく、溢れるように金貨や宝石に装飾品がてんこ盛りだ。


父上に促され、目を閉じて集中する。ふむむ、杖はその家系の魔力に反応すると聞いたが、何も感じない。無さそうなのである……。



その後も城内を歩き回り、特に祖父上が使用していた部室を重点的に探した。結局、杖は見つからず、祖父上が稀に使用していた書斎の棚上に一冊の本を発見した。


中は色褪せていて、ほとんどが読めないのだが、本の最初のページには祖父上の署名がある。会ったこともない祖父上に一歩近づいた気がして、少し嬉しかった。



そうこうしている内に翌日は祝いの儀に出発日となった。


ふふっ、祝いの儀はどうでも良いのである。王都までの旅の準備が一大事である。市場で、まずは簡素な肩から掛ける皮袋を買った。これに狸の白丸を入れて旅を共にするのである。他にも軽食から旅に必要であろう物までをたっぷりと買い込んだ。


市場からの帰りがてら、ふっと古道具屋が目に入った。何度か前を通り過ぎるだけだったが、気になっていた店のひとつだ。ふむ、この機会に入ってみるか。


小さな店内にはギッチリと棚が並び、天井まで伸びている。その棚には古道具が所狭しと並べられていて、なかなかの見応えだ。


店には店主と思われる恰幅が良い? まん丸とした酒樽のような男がいた。ちょうど棚と棚の間に挟まっている感じだ。ふむ。奥へ戻る時は方向転換ができず、そのまま後へ下がるらしい……。


「店の中を見せてもらうよ」

「おぅ、ゆっくり見ていきな」


ガラクタからお宝もあり、年代物から最新物までもある。特に目を引いたのはマントを首元で留める銀のピンだ。古の物で精巧な絵柄が彫られている。



旅立ちの記念として買い求めた。


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