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侍領主でござる  作者: ケヤキ
第一章 クラウス領 領都ダル編
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7.父上と魔術

子狸の白丸を脇に抱え、午後に父上の書斎へと向かった。父上は黒髪が歳を重ねて灰色になり、いい感じに渋みがでた美丈夫だ。黒で整えた服装に銀糸の刺繍が施されたロングコートを格好良く着こなしている。


「ルークか、精悍な顔立ちになったな。体も鍛えたのか?」

「はい、クラウスの名に恥じぬよう精進しています。父上、お手隙の際にでも、手合わせをお願いできますか」


「勿論だ。それにしても『男子、二月会わずは刮目して見よ』正にその通りだな」

ニ月ではなく、三日な気はするが、お元気そうで何よりなのである。


「そう言えば、魔術の方はどうだ?」



魔術っ?! すっかり忘れてた!


この国では5歳になると、賢者の石で適正を判定する。その石は見た目は青いゴツゴツした石なのだが、握ると手の甲に適正が浮かび上がるのだ。


俺は『魔術』だった。因みにジン兄上は『陰王』で、格好良いのである。


魔力量はかなりあると煽てられ、朝から晩まで、魔術本の魔術陣を片っ端から暗記したのだ……。しかし、知識は有っても実力が伴わず、へっぽこだったのである。


基本の<火の術式>では、線香花火程の火で、悲しいことにすぐにポトリと落ちて消えた……。 


<風の術式>は髪の毛1本がふわりと揺れた? の微弱風。

<水の術式>は使えず、<土の術式>も使えず。


この時に深く挫折を味わい、10年以上の努力の末に魔術は封印したのである。ルーク、黒歴史なのだ。



下ろしていた両手のひらをぎゅっとて握り、俯きながら父上に報告をした。

「父上、く、苦心に苦心を重ねましたが、才能がないようです……」


「変だな? お前の祖父上がそうだったように、クラウス家の魔力ある者は15歳を過ぎると魔術が段々と使えるようになるのだがな?」


「ええっ?! 父上、なぜ教えて下さらなかったのですか!」

「え? 言ったと思ってたよ」


「………っ!」

今までの辛酸の苦労を思うと涙が出そうだった。事実、涙を必死で耐えたのであるぅ!



次の日、黒丸と共に領都を離れた草原に来ていた。黒丸は子狸の白丸に合わせて、黒丸と名付けた黒毛の馬だ。ちなみに白丸は城で留守番をしている。


父上の話にあまりにも動揺していた俺を見て、少しは悪いと思ったのだろうか。父上がくれた黒馬だ。


とにかく、今日は気を取り直して、このだだっ広い草原で魔術の練習をしに来た。褌も締めてきた事だし、切り替えて気合いを入れるのだ。


基本に戻って、<基本その1の火>だ。

下半身を安定させて立ち、背筋を正す。両掌を地面に向けて集中する。すると青紫に光る幾何学模様の魔術陣が浮かび上がった。


へそ下三寸、丹田に魔力を溜めて、前に伸ばした両腕に魔力を通す。


ドドドォォーーッンン!!!


すっ、すごく、お、驚いた! なんだ今の?! 火ではなく、爆発だったような?

な、何にしろ、今日はここまでだな! 黒丸を探しに行かねばである。


そして半日ほど掛けて、驚いて走り去ってしまった黒丸を探し出し、城へと戻ったのだった。その晩に父上に呼び出された。


「ルーク、王都のディアス王国魔術学院に入学するように」

入学試験は父上のクラウス辺境伯の名で無試験合格だそうだ。う、裏口入学?!

  

「ち、父上、入学日はいつでしょうか」

「1ヶ月後だ。前に伝えた祝いの儀の後だな」

「え? 祝いの儀とは何でしょうか?」

「え? 言ったと思ってたよ」

「…………」


「クラウス領内で、今年17歳を迎える者を城に招く、成人祝いの儀だ。楽しにみしておけ。そして、祝いの儀が終わり次第、どさくさに紛れて王都に行くように。お前の母上が泣いてしまうからな」


「えええっ?!!」


父上に振り回され、最後には爆弾発言で吹っ飛ばされたのであるぅ!


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