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侍領主でござる  作者: ケヤキ
第五章 ロア国
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52.魔術学院 ロア国2

そして、その直後にイアン先生とそのおなごに引きづられて、先生の研究室に戻ってきたのである。戻らされた?


「おい、ルーク。また一子相伝の何がしらか?」


(どの魔術の事だろうか? うむ、ここはぼかして話す方が良さそうだな)

「はい、祖父上の祖父上直伝の一子相伝ですっ?」


「そうか、まあ、いい。コイツは俺と同じく第一級王宮魔術師のケイトだ。ケイトは土魔術を得意としている」


「はじめまして、ルークくん」


ケイトさんは20歳後半ぐらいで、長い髪を横に流すように結った知的で控えめな感じのおなごだ。


「実は短期で完成させたい土魔術があるの。協力してくれると助かるわ」


ええぇ? 今日からロア国へ旅立つのでは? という顔でイアン先生を見ると『俺らは飛行すればいいから、すぐ追いつくだろう』っと、にべもない。


鬼に師事している身としては、返事は肯定のみなのである……。



これから取り組む魔術陣は、魔術を組み立てると即発動する土からの強固な石の盾だそうだ。


早速、山のように積み重ねられた書物を3人で横にずらす。途中、『イアンの研究室は何故こうなのかしら?』とケイトさんとイアン先生が喧嘩をしていたが、研究室の片隅に座る場所を確保したのである!


そして、魔術陣の研究が始まったのだ。


「土魔術で構築して、風魔術で石の盾の向きを変えたり、動かすか」

「もし、石の盾が自動的にある程度探知で動けば、動かす手間が省けるわ」


「光魔術、もしくは闇魔術を重ね掛けすれば石の盾をもっと強固に出来ますね」

「前が見えないのは困る。透明感のある盾にすることはできるか」


どんどんと魔術陣を具体化する。



うほほ、明け方には魔術陣が完成したのだ! 一寝入りしてから、次は確認と必要な改良をなのである。


何はともあれ一寝入りだ。ふと見るとイアン先生は床でいつものような寝相の良さぶりを発揮している。知らない人が見ると死体と間違えられると思う……。ケイトさんはいびきが派手というか、うるさい。


魔術師ってなんか個性的な人が多いな、と首を捻りながら、俺は用意した白玉で一寝入りした。


しばらくしてから、なんか蹴飛ばされているような感じで、目が覚めた。そのままで、鬼が起きろっと白玉を蹴飛ばしていたのである……。


何度か声を掛けても起きないのと、自分は床で寝ていたのに、弟子が一人居心地良さげですやすや寝ていたのも気に食わなかったらしい。



イアン先生が『魔術陣の確認をしたいから、お前がしろっ』で、俺が石の盾を出した。瞬時に出たには出たが……小さい。 俺の膝下ぐらいの高さである。


「「「…………!?」」」


練習場の片隅に座り、この古代文字を付け加えたらどうだ? この線外そうか?と作戦会議の後に魔術を展開し、また改良を何度も繰り返して、ついに出来上がった! 多重展開魔術陣だ。


今度はイアン先生が魔術陣を展開する。金色に光る幾何学模様の魔術陣が浮かび上がり、


ドドォーーン!


前方に無色透明の盾が出た。盾の周りは金色に光っているので大きさは分かる。先生の倍ほどの大きさの盾が前方にあり、前へ動くと盾も前へ、左右に体を動かすと左右へと自動的に盾が動くように調整されている。


それに付け加えて、左右、後方にも盾を自由に動かすことも出来るし、二盾を同時に出すこともできる。


しかしこの後、『はい、終わり!』とは勿論ならず、イアン先生の盾に向かって、今度は攻撃魔術を繰り返し、強度の調整をする。ケイトさんは記録係だ。


イアン先生に向けての攻撃魔術なので、心配して力を抜くと怒られ、力一杯すると『おい、痛いだろう!!』と怒られる……。くぅ、弟子は辛いのである。


最後に一つだけ問題点を残したが完成した。その問題点とは消費魔力がかなり多い事。一級王宮魔術師でも長い間は無理がありそうだと二人が云っていた。


そのほかの大小の改良はおいおいで、ほぼ丸2日、3人で掛かりでついに完成したのだ!



もう夜明けが近く、東の空がうっすら赤くなり始めたので、一度仮眠を取ってからロア国へ向けて出発することになった。


ひとまず、自室に戻って白丸に報告をする。ご機嫌斜めでプンプンしていたが、後で埋め合わせをすることで納得してもらい、白丸を転移でルクス村に送った。


昼過ぎにケイトさんは王宮へ報告に、イアン先生と俺はロア国へと向かう事となった。



ロア国のダンジョンまでは馬車で8、9日の距離だ。イアン先生も俺も疲れが取れていないので、無理はせずに休み休みで飛行し、そして、翌日の昼過ぎに昼飯を食べに? 皆と合流した。


合流して初めて知ったのだが、魔術学院の上級生20名に騎士学院の学生10名の計30名の小隊だった。魔術学院の上級生がダンジョンでの中間試験、騎士学院の上位の学生が特別野外訓練だそうだ。


(魔術学院の上級生は俺を入れると21名なのだが? 忘れられているぅ?!)


魔術学院生を引率するのは、あの黒の森メンバーの特級王宮魔術師のローディスさんとシーラさん! 騎士学院生を引率するのは筆頭騎士団長のシリルさん!


相変わらず、ローディスさんは寝癖がついてるし、シーラさんはよれよれローブだ。


「おお、イアンにルークのコンビが今到着か」

「ちゃんと、あの魔術陣完成させたんでしょうね」

「ああ、見せてやるから来い」


いつものような会話でイアン先生がローディスさんとシーラさんを引き連れて行った。



がっちりと鍛えられた体の筆頭騎士団長のシリルさんも元気そうだ!


「ルーク、昼飯まだ食ってないだろう、ちょっと待ってろ、すぐ用意してやる」

相変わらず、キビキビと段取りをするシリルさんだ。


「おいおいおい、ルーじゃねーか、元気にしてたか!?」

この大声は、そう、振り返るとダンがいたのである!!


「半年ぶりだな、おい!」


相変わらず、背中をバシバシと叩く。懐かしさに思わず口角が上がった。

「ああ、元気だ。ダンも元気そうだな! 五助も元気にしているか?」


五助の名前に反応してか、少し離れたところにいる馬の五助が

「ぶひぃーぶひぃー」と答えた。


まだ話をしていたかったのだが、ローディスさんに呼ばれたので後にした。時間はまだいくらでもあるからな。


「ルーク、今回はロア国の魔術学院とディアス王国の魔術学院とでの合同魔物退治だ。調整でイアンと共に先に向かってくれ」


(えええぇーー?!) 


そして、尻を叩かれるように、イアン先生と共に飛行でロア国に向かう羽目になったのである……。


_____


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