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侍領主でござる  作者: ケヤキ
第五章 ロア国
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51.魔術学院 ロア国1

兄上の元で修行をするルカ達をフォート砦 へと連れて行き、藤子と転移でルクス村に戻って来た。


今日は遂に魔術学院へ戻るのである! たった一月、ルクス村にいたのだが、されど一月だった。


魔術学院に戻るのは俺と白丸だけで、ジョセフと藤子に留守を任せる。月に何度か村に転移して様子を見に来るので問題はないだろう。


「ちょっと、行ってくるな」


笑顔で頷く二人と、元気よく『パパ〜いってらっしゃ〜い』と返す藤丸に別れを告げ、そのまま魔術資料と白丸を抱えて転移した。




久しぶりの魔術学院の寮である! お気に入りの暖炉に革椅子、焦茶色の栗木机に寝台。とても居心地がいい。暖炉前の椅子に座って、白丸と一休息することにした。


「たった一月だったが、一年ぐらい離れていたような気がするな」

「うん。こっちの方が気が楽といったら楽だよね」

「そうだな。ところで藤子との喧嘩は終わったのか? かなり気配を消して、避けていた様な気がするが?」

「うーん、まあね」


疲れたので、昼寝でもするかとなり、ふわふわもふもふの白丸を抱えて、どっこらしょと寝台に転がる。相変わらず、お日様の匂いがするぅ……




朝が来た。気分爽快である!

白丸抱き枕、ふわふわもふもふの素晴らしきかな。


それにしても、起きたら朝だったのだ。今日からは気を引き締めて頑張るのである。魔術学院の卒業まであと半年だしな。



久々に腕を通すローブに入学した日のことを思い出していた。確かあの時もこんな感じだったな。ワクワクもするが、心もとなさが五分五分のような。懐かしい気分だ。


先ずは腹ごしらえからだな! 朝食を食べに上級生用の食堂に入った。長い天板の食卓にはセシルとナターシャがいて、俺を見て、目をパチクリさせている。


「ルーク! 驚いたな。いつ戻って来たんだ?」

「ちょっと、今まで何してたのよ!」


セシルは乱れた金髪に目下には黒々としたクマがあり、ナターシャの小豆色の髪は無造作に後で一つに結ばれ、大きな目には疲れが滲んでいる。


「そんなことより、 そのボロボロの姿はどうしたんだ? 」

「へ? 忘れてたりしてないよね。中間試験だよ」

「そうよ! 落ちたら、退学よ、退学!」


いかん! そんなものがあることすら忘れていた。

「そ、そう、だな。どんな試験だったか、な?」


二人とも深くため息をついたのである。

「その言草、絶対忘れてたわね、中間試験。あのねぇ、ルーク、今回の中間試験は学院初の試みで、ダンジョンにいる魔物を倒すことよ!」


「ダンジョン?」


二人は再度大きなため息をついた後に説明をしてくれた。ダンジョンとは西のロア国にあり、地下にある迷路状の旧鉱山。地深くの瘴気から魔物が湧き出すそうだ。


そのダンジョンは年に数回、定期的に魔物退治を行う。そこで、今回はロア国のとディアス王国の魔術学院上級生とでの合同の魔物退治でもあり、中間試験でもあるとの事だ。



ともかく、セシルとナターシャの話によると、鬼のイアン先生と第一級王宮魔術師のケイトさんが、上級生をぶちのめ……いや、訓練? 厳しい訓練と指導を行なっているそうなのだ。


今日の午後にロア国へ向けて出発すると聞いたので、その前にイアン先生に挨拶をしに行くか。


久しぶりにセシルとナターシャと食事を共にし、イアン先生の研究室に山のような資料とともに立ち寄る事にした。



研究室の扉を叩くと相変わらずの気だるそうな返事が返り、扉を開くと……これは、想像以上に酷い状態である!


一月前も凄まじく散らかっていた研究室だったが、書籍や書物がうず高く天井まで積まれ、イアン先生がどこにいるのかも分からぬ状態なのだ。


どこにいるのか分からぬが返事があったので、居るのだろうと声を掛ける。

「ルークです、昨日戻り、魔術の研究資料を持って参りました!」

「たくっ、えらく時間がかかったな!」


ふふっふ、どこに居るのか分からんし、鬼顔が見えないので怖く無いのである。

「セシル達から聞きました。今日から中間試験でロア国に行くのですか」


すると、山の一つが崩れ落ち、鬼が顔を出したっ! どうやら山の一つを蹴り飛ばしての登場だ……。


「『行くのですか』じゃないだろう。俺もお前も行くんだよっ! この一月、しっかり魔術の練習したんだろうな?」


腕を組みながらギロリと睨まれた。魔術の練習は2日だけ、一応したので肯定かな?

「はいっ……?」

「なんか歯切れが悪いな。よし、直々に見てやる」

引きづられて、魔術の練習場に連れて行かれた。やはり鬼である……。




練習場に投げ込まれて、イアン先生は腕を組み、顎で促す。

(うぅ……あの顔はさっさとしろだな)


えっと、祖父上の魔術本、第一章と第二章は水魔術と土魔術。まずは水魔術からだ。


魔術陣を正確に組み立て、幾つもの水玉を端に沿って浮かべる。俺を中心に激しく渦のように回すと、まるで滝の裏側にいるうな水の壁ができる。次は水玉を雪に、雪を氷に、氷を氷柱に。


ふっふふ、やはり魔術は面白い!


突然黒雲が練習場を覆い、雨が降り始めた。いつの間にか魔法も使ってしまったようだ。ちびっこ黒雲に極小の範囲での雨だ。うむ、藤子が見たら、多分また腹を抱えて大笑いするだろう。


一旦魔術を解くと、イアン先生と黒縁メガネをした焦茶髪のおなごがいた。


イアン先生が頷きながら次を促す。

「他は?」


そこで、次は土魔術だ。土を土壁、土壁を石壁、石壁を土に、土を砂に。砂をイアン先生と練習した風魔術とで砂嵐にしてみた。


____



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