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侍領主でござる  作者: ケヤキ
第四章 ブルクス領 領村ルクス編
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44.御頭、宴を開く その2

ふむ、何もかも順調なので、特にやる事がない。


ジョセフは孫の面倒を見るように白丸と藤丸の面倒をみている。そうなのである。従魔の白丸と藤丸はとても可愛いのだ。


白丸は白色のもふもふ長毛で青紫の目、見た目は狐っぽいのだが、耳が丸く両手脚は短く、そこが可愛い。藤丸は不思議な茄子色で、顔も茄子のような下膨れに茄子のような体型。目がクリクリとしていて桃色の頬、側から見たらちょっと不細工だが、そこがいいのである。


ひょっとして……俺は親バカならぬ、従魔バカだろうか?



さてと、ともかく手持ち無沙汰でその辺を歩いていると、柄の悪そうな15歳位か? の男どもが5、6人集まって、くっちゃべっている。

 

そうか、これが村長が前に言っていた心配中の若者どもか。両親ともが傭兵で、3年前に他の傭兵を助けるために命を散らした。両親を無くした若者らがやけを起こしているのだったな。 


ダラスやドルド、他の傭兵も両親が命を散らした責苦を負って、若者らと上手く付き合えていないとも聞く。ふむ、腫れ物を扱うように接しているということだろうか。


ここは一つ、話し掛けてみよう。

「ここで何をしているのだ?」

「「「…………」」」


一度一瞥をしたが、すぐさま顔を戻し、元の話の続きを始めた。

(無視されたようである……。なかなかのつんつんだ。まずは名乗りを上げるか)


「俺は領主のルーク=ブルクスだ。少し前に王都からここにやって来た」

「「「…………」」」


今度は一瞥もせずに丸っと無視なのだ。ふむ。



「「「うわぁぁぁ〜〜〜〜…………っ!!!」」」

(いかんっ、強くしすぎたか?!)


注意を引くために風魔術で『軽く若者達の周りに風渦』の予定だったが、放射線を描くように森へと吹っ飛ばしてしまったのである!


森は豊な木々の枝に、ふかふかの土壌があるから死にはしないだろう。怒っているかもしれんから、ほとぼりが冷めたら、また挨拶をするか。



このルクス村では魔術は村長とダラスを前に一度しか使っていない。王都とは違い、村民は魔術を一度も目にしたことがないのだ。そもそも王都でも貴族の限られた者しか魔術を使えない。


どこの国でもそうであろうが、権力者が魔力のある者と子をなし、それが続く。必然的に貴族の中に魔力が強い者が出てくる。


話が長くなったが、ここの村民は魔術を見たこともないのが普通で、魔術が使える者に恐怖を感じるかもしれん。それに魔術、俺がいなくても、己で己のケツを守れる強い村民になってほしい。


だが、ドルドのように痛みがある者や身体の具合が悪い者には光魔法を段階的に掛けて、治療をしている。ドルドの痛む右指だが、『なんかこの頃、痛みも少なく調子がよくなってきたな』位の認識だろう。



さてと、今は若者達を吹っ飛ばして、また特にやること無しに戻ってしまったのである……。折角だ。国への2年後の納税の為にも村を豊にする事に取り組むことにしよう。


今、気になっているのはルクス村の南一帯の山脈だ。大三郎の時に銀山が発見されて、その藩はかなりの富を得たのを知っている。


とある大雨の日に大三郎の祖父上が旅人を家に上げたことがあった。囲炉裏を囲んで食事を共にしたのだが、旅人はその銀山の村の出だと言っていた。話によると、長老が伝承に従って、とある山の崖に行ったそうだ。そこで、地表が黒褐色に変色している鉱脈の先端が発見されたと語っていた。


伝承? ならば、竜の藤丸が知っているかも? と、藤丸に聞いたのが、知らないそうである……。


よし、村の東の外れ。南の山脈から北東へと走る沢を遡って山まで行ってみる事にしよう。下流で釣りをしているドルド達よりも上流へと沢を遡っていく。


んん……何やら声が聞こえた?


「…た………」

「?!」


声が聞こえる方へ向かうと、先程に吹っ飛ばした若者の一人が大木の枝に引っ掛かっていた。おおっ、結構派手に吹っ飛ばしてしまったようである。


「た、た、助けて……」


しかも赤毛のくるくるした髪が枝にもつれていて、痛そうなのだ。早く助けないとだな。一思いに太枝を切って仕舞えば早そうだ。


足に強化魔術を乗せて、跳び上がり、一刀両断で太枝を切り落とす。赤髪くんは受け身もとれず、そのままべちゃと地面に落ちた。


「……おい、受け身ぐらいは取れるようにしておけ」

「……な……」


「「…………」」

ふむ。少し待ったが、先程の無視に続き『な』しか言わぬか。


「俺は先へ行く。お前は適当に村へ帰れ」

踵を返して、もと来た道に戻ろうとすると、何故か後ろからトボトボと付いてくる。


「なんだ? 帰り道が分からないとかじゃないだろうな」


顔を赤ラメ、口籠もりながら話す。

「あ、あに、兄貴……と呼んでもいいっすか?」


どのような心境の変化かわからんが、無視されるよりは良いので、好きに呼ぶように言った。この赤毛の青年はルカと言い、15歳だそうだ。


ルカにこの村が豊になるように鉱脈でもあれば、と探していると伝えた。地表が黒褐色や少し光っていたり、そんな場所を知っているかと聞くと、


「見たことないっす!」


即答なのである……。そう簡単にはいかぬだろうな。


ルカと歩き回っていたら、いつの間にか夕焼けが辺りを照らし始めたので、今日はここまでとした。


村に戻り、明日の宴には顔を出すようにルカに伝え、別れ際に大三郎の祖父上の言葉をそのまま伝えることにした。


「ルカ、この世には儘ならぬことが多々ある。だが、自分なりの努力を最高、最大に尽くし、しっかりと生きろ」


祖父上の言葉がルカに響くと良いなと思いながら、領主館へと足を向けた。


_____


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