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侍領主でござる  作者: ケヤキ
第四章 ブルクス領 領村ルクス編
43/130

43.御頭、宴を開く その1

ジョセフが来てから数日が経ち、領主館はジョセフの手腕で凄まじく洗練された空間となった。これなら、どのような客人が来ても恥ずかしくない。流石である。


当のジョセフはというと、領主館の客室で居心地良く過ごし、村暮らしを楽しんでいる。剣の手練れでもあるので、傭兵の訓練に立ち合って、皆をぶちのめしたとダラスから聞いた……。昨日は魚釣り名人のドルドと釣りを楽しみ、夜には俺の囲炉裏で魚の塩焼きを振舞ってくれた。



そこで、色々と落ち着いてきたので、延ばし延ばしになっていた宴を開くことにしたのである! 新ブルクス領、ルクス村を祝っての宴だ。


幸い、先だって国王陛下より賜った高級酒類、父上、母上からの大量の酒に食べ物も魔法の皮袋に保存してあるので、村民に十分行き渡るだろう。開催地は領主館の庭である。


早速、村長にダラス、釣り名人のドルド、薬草や木の実採りのリサ、狩人のクリス、料理担当のアリア、そして農耕に家畜担当のボブの計7人に領主館に集まってもらった。


「急ですまないが、明日、領主館の庭で新ブルクス領、ルクス村の祝いの宴を開く。国王陛下に賜った酒も振る舞う予定だ。皆にも手伝ってもらいたい」


ダラスが嬉しさを隠せない表情で言う。

「御頭、そいつぁー楽しみだ! なら、オレら傭兵団は会場の準備をするぜぇ」


精悍な顔立ちで如何やら女たらしとの噂も聞く、狩人クリスも続いた。

「それなら、他の狩人達と美味そうな山鹿や山猪を仕留めてこないとですね」


「御頭の顔に泥を塗らねぇよう、しっかりと子分らと魚をとっ捕まえてきますぜ」

うむ、今日もドルドはドスのある低音声でかっこいいのだ。


リサには山菜摘みと木の実など担当、ボブはその他の食材担当、そしてアリアは村の料理上手達とで宴会料理の担当である。うむ、抜かりなしである!



「……わしは何をしたらいいかのぅ……」

村長がしょんぼりと呟いた。


「「「…………!」」」


いかん、すっかり村長を忘れてた! 皆も同じだったようで気まずそうに顔を見合わせている。ふむ、どうしたものか、何を頼むかな……?


「それなら、村長様には出席者人数の確認と報告をして頂くのはいかがでしょうか」

「おおぅ、これは大役じゃのぅ!」

そつのないジョセフの名案により、村長は恵比寿顔である。


皆それぞれの役目が決まり、俺とジョセフと総締めで全てを取り纏める。


「よし、折角の宴だ。皆で楽しもう!」

「「「おうっ!」」」



領主館の庭にはダラスが纏める傭兵団が集まった。皆筋肉隆々なので60人ほど集まっただけでも、凄い熱量でむんむんだ。うっ……見るからに暑苦しそうである。


近くには寄らず……遠目で見ていると、ダラスの掛け声と共に、力強く会場の準備がなされていく。庭が平され、芝のようなものを敷き詰め、瞬く間に青々しく美しい庭になった。


そして領主館前の馬車が通るために敷かれた石畳みの上に3つの場が設けられた。


1つ目は酒、食べ物、菓子や果物を自由に食べれる場。

2つ目は隣に音楽隊の場で、太鼓や笛、ハーブなどの音楽を奏でる。

3つ目には中央に焚き火を灯し、皆で踊りを楽しむ場。


疲れた者や老人、子供は芝で休むこともできるし、ダラスの奴、なかなかやるのである! 


釣り団はドルドの指示を仰ぎながら、集中して魚を釣っているだろう。薬草や木の実採りのリサ達や、狩人達にクリスも大体同じだろうと想像がつく。


はて、料理担当のアリアはどうしているだろうか。村で料理をしているであろう、アリアを訪ねに村の炊事場に行くことにした。


うほっ! ここも暑苦しそうである。 老いも若きものおなご50~60人はいるであろうか。筋肉女おなご達でぎゅうぎゅうの炊事場で皆が忙しそうだが、賑やかで楽しそうである。 


その女共の中心にアリアがいた。歳の頃は母上と同じくらいだろうか。髪はよくある栗色だが、ぱっちりした大きな栗色の瞳が印象的で、場をシャキシャキと仕切っている。


「アリア、宴会料理はどうだ?」

「あらまあ! 御頭、こんなところで何してんだい?」


そう言いつつも、腕は止めずに話を続ける。

「ボブが肉やその他の食材を用意してくれたんで、肉に下味を付けたり、野菜の下準備をしてるよ。うん、問題なし。明日までにはバッチリだよ」


最後はにかっと笑顔で決めた傭兵団の肝っ玉母さん。シャキシャキとカッコいいのである。そして……いかん、いつの間にか腕周りの筋肉がバキバキで、かなり強そうな筋肉女おなご達に取り囲まれてしまったのであるぅ。


「お・か・し・ら、これ味見してくださいっ」

「これ美味しいよーー」

「あらまぁ、めんこいお顔だべな」

「どんな女性がお好きですか?」


(こ、こ怖いので退散である!)


「す、すまぬ、所用を思い出したので、失礼する」

「「「えーーっ!」」」


次の言葉を聞く前にスタコラと退散したのだ。



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