37.魔術学院 王宮と御褒美
会議室に黒の森調査総括で6人が集まった。
筆頭騎士団長 シリル
騎士団長 ジル、リック
特級王宮魔術師 ローディス、シーラ
第一級王宮魔術師 イアン
議長を任された筆頭騎士団長のシリルが背筋を正して開始する。
「おう、忙しいのにすまんな。今日はあの森の調査総括で集まってもらった。皆忙しいからサクッと終わらせよう。議題は二つだ。まずは一つ目、あの森の調査の件だ。自由に意見を述べてくれ。まずは魔術師側からの意見から頼む」
不機嫌な表情を隠さず大きな声でシーラが口を開いた。
「言わせてもらうわよ。最悪よ、最悪! 死ぬかと思ったわよ、とうかほとんど死にかけたわね!、そうよね、ローディス?」
「ああ、シーラの言う通りだ。俺らの意見を纏めて言う。あれは誰かに仕掛けられた罠だ。何らかの妨害魔術があの山に張り巡らせてあった」
眉間に深い皺を寄せてしばらく考えていたローディスが静かに発言をした。
「そうだなー、風魔術も全ての威力が桁違いに落ちていた。威力の弱いのを複数でカバーした、といった感じか?」
すっと目を細め、イアンを睨みつけるようしてシーラが言う。
「イアン、あなたね、最後にひょろっと現れただけだから、そんなに淡々と言えるのよ! 私たちなんか夜中から駆けずり回って、飲まず食わずで昼過ぎまでだったのよ!」
「ああ、そうだな。昼過ぎてやってきたお前とは違う!」
「…………」
このままだと話が違う方向に行きそうだと予感したシリルが騎士団に話を振った。
「よし、わかった! 次は騎士団長のジルとニック!」
騎士団長らしく、ニックは背筋をピッシリと正して発言する。
「そうですね。降って湧いた大量の魔物による襲撃はあまりに不自然です。しかも執拗に私達を狙う。明確な殺意を感じました」
眉間の皺を深くしたジルも頷き首肯する。
シリルが深くた溜息をつき、一呼吸置いた。
「お前達の意見は分かった……俺もお前らと同意見だ。俺たちは誰かに貶められたと推測されるが、情報が全く足りてない。推測の域を出ないってところだな。今のところは引き続き、徹底的に、調査を続けることにする」
「ローディスは文官に提出する意見書の用意を頼む。ニックも騎士団長の代表として用意しておいてくれ。二人とも詳細にな」
シリルは背もたれに背中を預け、次の議題に移った。
「最後の議題だ。官僚の使者がきた。今回の魔物退治の功績で皆が褒美を頂くことになるが、一番の功績者を確認したいそうだ。皆に聞く、誰が一番の功績者に相応しいか?」
「「「……………」」」
皆で頭を突き合わせて、ひそひそと話しを始めた。
「これはひょっとして、ひょっとしなくても……」
「ダメだ、殆ど死ぬなーーってところに誰かさんが来たよな」
「ああ、黒髪の誰かさんが来たような、な!」
「剣腕も熟練の域に達してて、あいつが立ち去った後は魔物の死屍累々だ」
「あれは熟練の域じゃなく、それ以上です!」
「あの子、艶やかな黒髪にあの青い瞳、それに妖艶でぞくりとするような表情、まだ若いのに末恐ろしいわね」
「そういや、寮に婚約者を連れ込んだこともあるらしい。しかも、休暇中は違う女を連れ込んでるそうだ」
「あ? 研究室に長時間一緒にいたが、それは知らなかった」
「そういや、聞いた事があるぞ。あいつ脱がせると凄いらしいぜ。すげーいい体してるってよ」
「ちょっ、誰よ。そんなこと知ってるのは?」
「筋力鍛錬部だ」
「そんな部あったか?」
一番の功績者についての話は長く続いた。
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ワシがディアス王国の国王になり、かなりの年月が経った。
黒の森の一件について、国一番の魔術師に騎士団長、そして騎士学院に王族であることを隠して通っている第3王子デューク、3人を個別に呼び、話を聞いた。
今回ばかりは床に臥してる場合ではない。国の存亡の危機だ。無理を押しても前に出なくてはな。
魔物の件では非常に驚いた。まさか魔物が……。大量で獰猛な魔物、あの10人でさえも命が危なかったという。
もし、大量の魔物が王都に攻め込んでいたら……心臓に鋭く痛みが走る。
一つ確かなことはこの国は非常事態で、攻撃を受けている。どこの誰か、国かはまだ分からぬが、国を滅ぼされる惨事になり得る。追って、意見書や調査書などから側近らと重要な決断をする事になるだろう。
ひとまず今は功績を上げた者ら、それぞれに褒美を授けねばな。一つ興味本位で大臣に聞くように命を出した。この10人の中での一番の功績者だ。
黒の森調査の総括で6人が一人の名を挙げたそうだ。
『ルーク=クラウス』
ローディスもシリルも言った。あの状況下では確実に全員死んでいた。それを変えたのは偏にルークの他ないと。
国一番の剣士に言わしめる、超越した剣の技量。魔術もまだ荒削りなところはあるが、普通の王宮魔術師なみ、もしくは以上の魔力に知識と技術。そして、独自に会得した魔術式までもあると言う。
今回も剣に闇魔術を巧みに重ね掛けした技量と制御には舌を巻くらしい。更にクラウス家に伝わる一子相伝に秘術も会得しているそうだ。
確かクラウス家は嫡男の長男が引き継ぐはず。ルークは三男だと聞く。土地の縛りもなければ、他国で暮らす事もできよう。しかし、決して他国に流失させてはならない人物だ。
側近と話し合い、ルークに褒美として爵位と土地を授けることにした。領主になり、領地に領民を持つ、そうなるとこの国に留まることになるだろう。土地の縛りとも言うがな。
せめて、土地に愛着ができるよう、領地に名を付ける栄誉も授けることにする。
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いつもの日課に白丸と藤丸の従魔と共にのんびりと過ごしていたが、休暇も終わりに近づく頃に王宮からの呼び出しを受けのだ。ふむ、何であろうか? 父上、母上なら分かるが、俺が呼ばれる理由が分からん。
ディアス王国魔術学院の学生なので、正装は学生服で許される。謁見の間にて玉座に座られているのは確か床に臥せられている国王陛下、その脇に王太子殿下が立たれていた。
この国の礼を流れるような所作で、御下命を賜る。
「この度の黒の森での功績を讃え、そちに褒美として叙爵男爵と土地を授ける。詳細は首相からあるであろう」
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「はっ、ありがたき幸せ、恐悦至極に存じます」
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