表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
侍領主でござる  作者: ケヤキ
第三章 ディアス王国 黒の森編
35/130

35.魔術学院 従魔2

従魔の店には茄子のよう色で茄子のような形の顔。身体つきも茄子で、首から尻にかけてぽってりとした魔獣がいたのだ。龍の守護竜と瓜二つである。違いは前髪の色だな!


先程、一度顔を上げたっきり、そのまま丸まって動かないのである。ふむ、それにしても、黒の森の守護竜と瓜二つだし、友達か兄弟かもしれないな。


「この魔獣は当店に来て一月は経つのですが、食欲もなく、いつも丸まって動かないのです」

ちょっと心配そうに魔獣を見つめている店主に連れて帰ることを伝えたのだ。


通常の魔獣の半値だったが、良い馬を買えるほどだ。皮袋から金貨を取り出して支払いを済ませた。


黒茄子くんを抱き上げて顔を見ると、くりくりした物言いたげな瞳は潤み、弱々しく『くぅ』と声を上げる。なんか、可哀想なのであるぅ。



ふむ。白丸は魔獣なので、会話することが出来るだろう。治療魔術師に具合を診てもらうと、セシル達に断りを入れ、人がいない場所から転移して自室に戻てきたのだ。


自室に戻ると白丸はまだ昼寝中だ。仕方がない、起こすか。むうっとご機嫌斜めな白丸だったが、俺に抱かれている黒茄子くんを見て、ポカンと口を開けていた。


すぐ、気を取り直した白丸がじーっと黒茄子くんの目を見ているので、念話で会話を始めたらしい。しばらくして黒茄子くんが、涙を一粒零した。



白丸が黒茄子くんの話を伝えてくれた。纏めるとこうなのだ。


『南山の洞窟宮殿に住まう黒龍の守護竜で、酷い大雨が降り続いた時に宮殿から外の様子を窺いに行ったそうだ。その時に土砂が上から崩れ落ちてきて、巻き込まれて転がり落ちてしまった。


気がつくと深い地中で、必死に地中から這い出ると、宮殿は半壊していて、目覚めたらしい龍もいない。それから、宮殿を直してずっと龍の帰りを待っているのだ。


龍からの貰っていた魔力が尽きてしまうと消えて無くなってしまう。そこで龍を探しに宮殿を出て必死に歩いていたら、人に捕まって閉じ込められてしまった。龍は見つからない、魔力が底を尽き始めたし、捕まってしまってとても悲しかったそうだ』



「ふむ。今の話を聞くと、黒の森の茄子くんに一度相談した方がいいように思えるが、どうだ白丸?」

「そうだね。竜のことは竜だね」


「善は急げだ。黒の森の宮殿前に転移するか?」

白丸が頷いたのを確認してから、黒茄子くんを抱っこして宮殿前に転移した。一度来たことがあるので、転移できるのである。


見えないが、扉があると思われる手前で白丸が呼びかけると、すぐに茄子くんが出てきてくれた。


抱いていた黒茄子くんを地面に下ろすと、3匹で真剣に見つめ合っている。念話らしいが、なんだか昔遊んだ『にらめっこ』をしているみたいなのだ。微笑ましく思っていると話し合いが終わったようである。


「どうだ、白丸。龍の居場所とか分かったか?」


白丸は首を横に振りながら答える。

「『龍』ほどの力がないので、『竜』は居場所を見つけることができないって。でも、このままだと魔力が尽きて黒竜は消えて無くなってしまう。竜達の願いで、龍が見つかるまでルークから魔力を借りたい。つまり、一時的に従魔になりたいんだって」


「ふむ。従魔は白丸だけと思っていたのだが……」


俺がそう言うと、はにかみながら、なんだか嬉しそうな白丸なのだ。

「……でも、黒茄子くんが消えて無くなるは可哀想だな。よし、白丸が良いなら一時的に従魔契約をするか」


「うん、いいよー」


黒茄子くんはくりくりお目をうるうるさせて見つめている。

「龍が見つかるまでの従魔契約『相互契約』を結ぶぞ。まあ、協力し合う友だな」


白丸の時と同じ青紫に光る幾何学模様の魔術陣を浮かべ、俺と黒茄子くんの手の甲に青紫の古代文字が浮かび消えた。


「おっ?! 何か変化があると思ってたけど、全然変わらないな」

「ルーク、よく見て。ちっこい翼? が生えているよ」

「よく見ると、蝙蝠こうもりのような小さい翼があるな」


黒茄子くんは幼子のようなかわいい声で話した。

「つばさ? ぼく、とべるの?」

「体の具合はどうだ? 大丈夫なら、試しに飛んでみるのはどうだ?」


こくりと頷き、おそるおそる翼をパタパタして、空中に浮かんだ。

「とべるー」

頬を紅潮させ、嬉しそうに言った。


(出会ってから一番いい表情だな)


白丸が青竜の言葉を伝えてくれた。

『ここを離れるわけにはいかないけど、またみんなで遊びに来てね』って。

また来るよと伝えて貰い、転移して自室に戻った。



黒茄子くんは黒竜と呼ばれているけど、特に名がなく、俺が名をつけることになった。


ふむ、黒竜か、黒丸? 体は黒くないし、竜にも見えん。茄子色から茄子丸、茄子助、いまいちだな。うむむ……紫か。


そういえば大三郎の家の近くに大きな藤の木があったな。春になると紫の花房が満開になり、ふわりと甘い香りが漂う。風が吹く度に花が散り、藤の花の美しさは格別だった……。


ふじ……おお、藤丸ふじまるはどうだ?!

「しろまるのまる、ふじまる?」

「ふふ、悪くないんじゃない」


それからはくりくりとした目に桃色の頬の藤丸は白丸の寝床に無理やり入り、白丸と一緒に寝ている。寝床に尻が収まりきれずにはみ出ているのも可愛いものだ。



従魔が2匹になった。

_____


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ