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侍領主でござる  作者: ケヤキ
第三章 ディアス王国 黒の森編
33/130

33.魔術学院 黒の森 7

俺が次々斬り倒し、イアン先生が魔術で広範囲の補助。二人で連携して戦い、日暮れに近い時刻となった。


もう、すっかり、力尽きてしまった。いくら日々鍛錬をしているとはいえ、ここまで酷い負荷は掛けたことはない。イアン先生も同じくである。考えるのも億劫、動くのも億劫な状態だ。


皆ボロボロだが無事だったのは幸いだった。しかし、納得のいかないことがあるのだ。特に騎士団長のジルさんとニックさんには怖がられてしまった。


途中『もう大丈夫ですよ』の意味で微笑んだのがいけなかったらしい。目が合えば二人ともウロウロ視線を泳がす状態なのだ。うぅ、頑張ったのに酷すぎる……。


疲労困憊だが、最後の力を振り絞り、やるべきことをやっている。

イアン先生は風属性、風で魔物の死体を集め

ローディスさんは火属性、死んだ魔物を焼き

シーラさんさんは光属性、皆の治療と洗浄


俺は10人が休めるように白玉の調整と学生の運び入れ。セシルは魔力切れ、デュークは怪我、ティナは疲労困憊。


騎士団長のシリルさん、ジルさん、リックさんは周辺の警備と補助。


日暮れに俺の白玉に、なんとか力が残っている魔術師が防御に隠蔽魔術を2重、3重、4重と掛け、最後に俺が密かに魔法を掛けた。これで、安心して休める。


その後は白玉の中で皆倒れ込むように寝た。実際倒れていた人もいた。


ーーー


昼になった!


昨日の日暮れから昼まで、誰一人と起き上がれなかった。今日ぐらいは休んでもいいでしょうと多数決で決まり、今日は休暇だ。


隅に置かれた袋に食べ物があり、皆食べたい時に食べたいだけ食べる。後はひたすら倒れるように寝ている人多しである。 


ーーー


翌日!


昨日と同じだ。急死に一生を得たのだから休ませろと怒り出す人多数で決定。怒る元気が出てきたようで良かった?


ーーー


翌々日!


遂に重い腰を上げ始めた。まずは騎士と魔術師、シリルさんとローディスさんを中心に協議がはじまった。


イアン先生が黒の森の状況説明。宮殿らしき物も瘴気の原因だと思われる黒煙も消え失せた。黒の森だから人知が及ばない事が発生しても不思議はないと結論。


王宮魔術師と騎士からの魔物との戦闘概況。襲撃理由は色々と考えられるが、もしかしたら、何処ぞの国による襲撃か……。


降って湧いた大量の魔物の出現に、どう結界をぶち破ったかは不明。これからの問題点として、魔物の残存。課題は安全確保と、殲滅方法。まずは探知での魔物数の洗い出しから始める。



そして団長のシリルさんが背筋を正して話を続けた。

「学生組のティナ、セシル、デューク。普通の王宮魔術師に騎士でも死者が出る戦闘を生き抜いたんだ。誇っていい、実によくやった!」


ティナは顔をくしゃくしゃにして泣き、セシルとデュークも涙を零した。


そうだよな、みんなよく生き抜いたと思う。しんみり頷いていたら、


「ちょっと、ルークはあっち側なのに、なんでこっちにいるのよ!」

「そうだよな、そもそもおかしいだろう! 王宮魔術師の俺らに紛れて、なんでお前がいるんだよ。しかも平然と追随してるしよー」


「騎士団長の私とジルは、夜中に君が血塗れで笑みを浮かべてる夢で、うなされている!」


「ああ、筆頭騎士団長でもだ。ジルとニックに手を貸した後、俺らの前に血塗れで現れてよー、疾風の速さであのクソでけー魔物を首チョンパだ。一度お前に首チョンパされる夢を見てうなされた……」


「そうなのか? 俺は研究室でルークといるからな。耐久性があって良かった」


うぅ……っ、頑張ったのに酷い言われようなのである。



最後にシリルさんが纏めた。


「学生組のティナ、セシル、デューク、今は3人とも体調が万全ではない。暫し体調を整えることに専念してもらいたい。魔物の探知は飛行ができるイアンとルークが適任だな。危険を避け、上空からの探知だ。


シーラは、しら、しらまた? ああ、しらたまか? 本拠地のしらたまを中心に円形で出来るだけ強固な結界を。ジルとニックは周辺の警備だな。最後に俺とローディスは地上からの探知に総監督をする」


筆頭騎士団長シリルさんはそこまでシャキシャキ指示した後にくるり振り向き、付け加えるのである。


「ああ、それと、ルークはしらたまの管理もちゃんとして置けよ」

またもや、新入りはこき使われるのである……。


_______


幸いなことに残りの魔物はそれほど多くはなく、地道に殲滅していき、10日後には無事に下山することとなった。下山した後に皆が舌打ちしながら、激しく悪態をついていたのは秘匿事項となっている……。


____


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