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侍領主でござる  作者: ケヤキ
第三章 ディアス王国 黒の森編
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31.魔術学院 黒の森 5

俺はかなり離れにある下の茂みに向かった。


茂みの陰に座って確認をする。左右よし! 前後もよし! イアン先生は飛行するから、上もよし!


魔術を使うとイアン先生に気付かれると思うので、全て魔法を使うつもりだ。召喚魔法で「白丸っ!」


地面にころりと白丸が転がって現れた。

「白丸っ! 煙と参上とか、空間から参上とか思っていたけど、転がって参上なんだな」


「むっ!? なあに、とつぜん。寝てたのに」


いかん。ご機嫌斜めだ。

「すまない。ちょっと聞きたい事があって来てもらった。今度礼はするから、考えておいてくれ」


「なら、いいよ。それでなに?」


「黒の森についてだ。岩壁に宮殿や黒煙が出ているし、魔物も出ている。何か知っていることはあるか?」


「んん? 黒の森には前に出入りしてたけど、何だろうね?」

「前っていつだ?」

「前って前だよ。人とは違って、数えたりはしないよ」


「そうか。宮殿の中を見たいが、黒の森に人は立ち入ることが出来ない。ひょっとして、白丸と一緒だと入れるかと思ったのだが、どうだ?」


「人で言えば国だからね。黒の森に立ち入り禁止は当たり前だよ。勝手に他国人が国内に入ってきたら嫌でしょう?でも、入れるかどうかは試してみようか?」


茂みから宮殿を目視し、姿と気配を消す隠蔽魔法に念の為に防御魔法をかけてから白丸と転移した。



おお?! 攻撃されると思ったが、宮殿の入口にあっさりと着いた。

「簡単にここまで来ることが出来たな」

「そうだね。んんっ!? これは魔獣の匂いだね。かなり怒っているみたい」

「魔獣?」


白丸の魔獣の説明で分かったことは魔獣とはあやかし、物のもののけの類いらしい。神獣のような良い魔獣もいれば、悪い魔獣もいるそうだ。天狗さんや鬼さんのような感じなのだろうか。


白丸によると、ここにいるのは悪い魔獣ではなく、良い魔獣。でも、かなり怒っているらしい。刀を向けるつもりはないが、もし襲い掛かってきた場合は覚悟しないといけないな。


宮殿を見ると外観はかなりの高さのある重厚な造りで、巨大な円柱の飾り柱が何本も立っている。入口だけでも寮の3階建と同じくらいの高さの長方形である。


そして扉もなく、吸い込まれるような暗闇がぽっかりと開いているのだ。入口はよじ登る必要がある高さなので、白丸を抱っこして飛行で入口の前に立った。うぅ……武者震いがする。


床に下ろした白丸を先頭にして、恐る恐る入口から入ると、

「はっははは、はは! このクソがっ!!!」


射止めるようなひどく冷たい目をした何かがいた。すごく怒っているし、クソって呼ばれたし、何と答えれば良いのか分からん。少し困っていたら、白丸が俺を庇うように前に立ってくれた。


(うぅ、格好いいのである!)


側から見れば睨み合っているようにも見えるが、念話で話をしているらしい。

「このクソボケがっ!! 白魔に免じて勝手に侵入したことを許してやる!」


なぜ白丸の本名、白魔を知っているのか? ふむ、基本の名乗りを上げたのだな。それにしても『クソとクソボケ』はどちらがマシなのか疑問が残るところだが、ひとまず謝罪をしよう。


「勝手に入ったことは謝罪しよう。俺の名はルークだ。宜しければ、貴殿の名を教えてもらえるだろうか?」

「教えるか、ボケっ!」

「………っ!」


「く、黒い煙、瘴気と思われるものを出しておられるようだが?」

「…………っ」


「あのねっ、ルーク。この龍、体の具合が悪いんだよ」

(…… 龍?!……)


「龍は寝る時と起きる時の周期があってね、体を休める為に長い間眠りにつくんだよ。この龍は長い長い間、起きていた龍で、もう眠りにつく時期はとっくに過ぎているのに眠れない。


体が辛くてキツイから、知らず知らずのうちに瘴気を出していたみたいだよ。それと、宮殿も隠蔽していたけど、体も力も弱くなって、維持することが出来なくなったって」


(そうか、辛くてキツイか。それは大変だな。何かできることはないだろうか? 眠れないか……)


「あっ、白玉だ! ちょっと待ってくれ!」

白玉を空間袋から引き摺り出した。大きさを調整しないとだな。


「龍殿、見舞として差し上げたい品がある。大きさを調整したいので、姿を見せてもらえるだろうか?」

「クソみたいな品だったら、お前を食べるからなっ!!」


(えええぇ?!)


そして、顕われたのは真夏の青空のような濃い青をした青龍だった。鱗の一枚一枚がきらきらと光輝く美しい龍だ。


「さっさとしろ、ボケっ!」 口は悪いが……。


しかし思わず、見惚れてしまった。思っていたよりも大きいな。ひょろ長いから蛇のように丸まってくれれば大丈夫か?


「よし、出来たぞ! 白玉の中はふかふかもふもふなので、寝心地が良いはずだ」

「ふんっ、どうだかなっ!!」


青竜は白玉の中でちょっと狭そうにしていたが、気に入ってくれたようで顔が柔らかく穏やかに見えた……と思ったら寝落ちである!


ええ?! もう?! である。 

「白丸、寝息を立てているし、ひょっとしなくても寝ているよな!?」

「うん。すっごーく早かったよね」


すると突然、白玉から何かが勢いよく、ぽんっと飛び出てきた。変な紫の物体である。大きさは白丸ぐらいで、茄子のよう色で茄子のような形の顔、くりくりとした目に桃色の頬。


身体つきも茄子である。首から尻にかけてぽってりとし、大きな尻。よく見ると短い手足に、お、尻尾もあるな。


短くまとめると短足胴長の茄子の竜? である。


「ああ、守護竜だね。龍が眠りにつくと、守護竜が宮殿を隠蔽してくれて、寝てる間を守ってくれるんだよ。無防備だからね」


「さっきの青龍とは随分違うな」

「そうだよね。ちょっと不思議な姿は姿だよね」



ふっ、それにしても青龍は口が悪かったな。白玉でゆっくりと休んでくれ。


白丸に礼を言って先に寮に戻ってもらい、

茄子くんに別れを告げて転移した。


____


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