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侍領主でござる  作者: ケヤキ
第三章 ディアス王国 黒の森編
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30.魔術学院 黒の森 4

俺とイアン先生は皆と別れ、風魔術を使った飛行魔術で黒の森へ向かった。


まだ研究中の飛行魔術だが息苦しさや体の不調もなく、燕や鷹のように滑翔かっしょうで飛行できている。うむ、側から見ても格好良いのではないだろうか?


山にはよく霧が掛かるが、黒の森に近づくにつれて霧が段々と灰色になり、気温が一気に下がったような感じがするのだ。そう、視界は悪いわ、寒いわなのである!



日暮れに一旦地上に降りて休むことになった。地上は地上で空気が張り詰めていて何やら嫌な寒気がする。


こっそりと魔法を使って二人が入れるぐらいの光球を造った。何故か好きでよく食べていたきな粉の白玉団子が頭に浮かび、見た目は黄檗色きはだいろのつるんとした見てくれ。せっかくだから白玉しらたまと名付ける事にしたのである。


白玉の中は白丸のふかふかもふもふを思い浮かべたので、中はふかふかもふもふ、暖かくてとても居心地が良い。入った途端に眠くなる優れものである。しかも魔術と違い、魔力の消費もないので安心して休めるのだ。


白玉の中に入り、興味深そうに中をぐるりと見回すイアン先生。

「これは……驚いたな。しかも、ゆっくり休めそうだ」


「こ、これは王宮魔術師だった祖父上のその又祖父上によるクラウス家直伝……いっ、い一子相伝の秘術ですっ」


「……そうか。色々と聞きたいが、それなら聞くことはできないな」


誤魔化せたことに安堵しつつ、イアン先生が隠蔽と防御魔術を施すのを眺めつつ寝てしまった。



外が少し明るくなり始めた頃に目が覚めた。ぼんやりとここはどこだ? と思い出しつつ、体を起こして大きく伸びをする。イアン先生に視線を移すと、生きているのか心配になるほどの寝相振りである! 無音で無表情、真っ直ぐ仰向けで、両手を軽く胸の近くで組んで……寝ている? うむ、寝相が良すぎるのもだな。


ぼーっと、腹減ったな、あれ? 夕食食べてない? と考えているとイアン先生も目を覚ました。しばし二人でぼーっとしていると、


「おい、ルーク! これは研究室に必要だ! なんなんだこの寝心地は?!」

何年かぶりに熟睡できたようで、朝っぱらから元気なイアン先生なのだ。



付与魔術付きの皮袋と言い張る事に決めた普通の皮袋を空間魔法の空間袋へ繋げて、白玉を無理やり押し入れた。結構入れれば、入るものである。


その後にすぐに飛行を開始し、今日の昼過ぎには黒の森近くに到着する予定だ。


_____________


「「ーーー‥‥‥」」


山の頂上でイアン先生と眼下を見下ろした。


山々が連なり、山脈の裏には深閑しんかんの森が広がっている。一面見渡す限りが鬱蒼とした深い森なのである。


よく目を凝らすと、巨大岩を削り建てたような宮殿らしき建物が見え、その建物の正面にはぽっかりと誘い込むような暗い入口のようなものが見える。


そして、どうやらその入口から黒煙が噴き出ているようなのだ。



「ーーどうしたものか」


イアン先生の言葉に頷く。最初の目的、黒の森に立ち入らずに周辺の現状確認と調査は終わった。王宮魔術師のローディスさんとシーラさんに報告だが、既に手に入れていた情報以外、何も目新しい情報はない。


宮殿らしい建物の調査をしたいところだが、人の立入りは許されていない黒の森にある。そこで冒頭の『どうしたものか』なのだ。



『立入りを許されていない……人は立入りを許されていない……』


「イアン先生、腹が痛くなりました! 少し下の茂みに行ってきます!」

「……ああ、勝手にいけよ」

「少しばかり時間がかかるかも知れません、覗かないでください!」

「っ、誰が覗くかよ、さっさといけ!」



俺は下の茂みに向かった。

____

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