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侍領主でござる  作者: ケヤキ
第三章 ディアス王国 黒の森編
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28.魔術学院 黒の森 2

ディアス王国、ラウトス帝国、ロア国の3カ国の北側一帯の土地は黒の森と呼ばれ、人の立入りは許されていない。


今回は異常事態の報告により周辺の現状確認と調査を行う事になった。


選ばれた騎士団と学院からの5名に、魔術師と学院からの5名で計10名による黒の森まで往復40日、滞在で10日の2ヶ月弱の旅程である。



騎士団と俺とセシルの7名は馬に乗り、魔術師3名は馬車で10日を掛けてディアス王国の北の外れ、最後の宿場町に到着した。


実のところ、因縁の二人と呼ばれているらしい、騎士団長のシリルさんと魔術師シーラさんの度重なる喧嘩以外はとても順調だ。


最後の宿場町というか、田舎の長閑な村? の空き家の一つを借り、宿泊する事になったのである。予定よりかなり早く到着したので、騎士団は剣の稽古を始め、魔術師団は銘々好きなように過ごしている。 



俺とイアン先生は裏庭で研究中の飛行魔術に取り掛かった。


研究は安定性、安全性、継続性、飛行速度、距離、重量、魔力節減など、地形や天候なども含めた様々な角度での魔術陣を研究中なのである。 


知らなかったのだが、魔術師は属性の得手不得手があり、ローディスさんは火属性、シーラさんは光属性、イアン先生は風属性、セシルは水属性が得手だそうだ。


得手ではない属性の魔術を使うと威力も弱く、魔力を多く消費するので、何かの場合に備えて、属性ではない魔術は滅多に使用しないらしい。


俺は魔術を始めて実質2ヶ月なので、まだ得手不得手わからずなのだ。これからゆっくりと探していけたらと思う。


陽の光が眩しいので目を細めて真っ青な空を眺めていたら、


「ルーク、なにぼけっとしているんだ。さっさと飛べ」

鬼イアン先生のゲキが飛ぶ。先程出来た風属性魔術陣の確認をしたいらしい。


魔術陣で体を上昇させ、涼やかな風を頬に感じつつ、風に乗り自由に飛ぶ。何もかもから自由、解放感が心を軽やかにする。鳥もそう感じているのだろうか。



夜は村長さんや村人達の歓待を受け、美味しい田舎料理をたくさん並んだのである。薄味で素材の味が生きた料理の数々と村人達の素朴で人懐っこい笑顔に心がほっこりする。



明日からは馬と馬車を預け、徒歩に野宿となる。 


___


朝が来た!


キビキビした動きで、出立の準備をしている騎士団を横目に、寝起きでぼーっとしている魔術師団。朝のいつもの光景だ。


これから徒歩での山道になるので、ローディスさん、シーラさんも黒のローブから暗緑色のマントになる。


ローディスさんは『魔術師は黒のローブだ』で、シーラさんは『暗緑のマントなんて、野暮ったくてダサい』で最後まで嫌がったのある。因みにこの二人以外は初めから暗緑のマントである。


騎士団のデューク達は暗緑色の襟のある騎士団の上着にトラウザーズ。焦茶色の膝下まであるロングブーツに、トラウザーズの裾をきちりと入れ、腰にはブーツと同系色の焦茶色の剣帯ベルトを上着の上からキッリっと締めている。


そして黒の皮手袋だ……。控えめに言っても恰好いい。


俺は王都で出発前に支給された暗緑のマントと焦茶のロングーブーツに適当な私服の生成りのシャツに焦茶色のトラウザーズ、騎士団の真似をして裾をきちりとロングブーツに入れてみたが、いまいちである……。


山道を登り始め、少しひんやりとした空気に差し込む木漏れ日。大三郎の時に修行をした山中に似ていて、自然に口角が上がった。


___


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