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侍領主でござる  作者: ケヤキ
第二章 ディアス王国 王都バート編
25/130

25.魔術学院 日々

魔術学院に入学して一月が経った。反復練習は基本なので、午前中は鍛錬、素振り、そして魔術の自主練習を昼頃までする。


午前が自由なのは、授業に出る必要がないと、王宮にいる学院長に話を通してくれたイアン先生のお陰なのだ。


昼挟んで午後からは研究室の掃除に講義と研究補佐。そして早い時には夜中に、遅いと朝方に寮に戻る。


イアン先生、いや、鬼さんは強靭な体力を持ち、朝の授業から始まり、夜明けまで研究室、そして日々の睡眠は仮眠で済ませているらしい。うむ、流石が鬼さんなのである。



白天さんの魔法の練習も引き続き続行中で、白天さんに教えて貰った空間魔法の一つで転移魔法のコツがわかってきた。


一度行ったことがある場所のみだが、転移したい場所を思い浮かべ、五感の視覚、聴覚、触覚、味覚、嗅覚のうち一つを足し加えれば、楽に転移できる。


始めは近くから、段々と遠くの場所、今ではクラウス領地まで、いつの間にか転移できるようになった。白天さんとの約束で、人に見つからないよう、最も夜の深い時刻に人気がない場所に行って、戻ってくる。


一度誰かに見つかったようで、悲鳴を上げられた。うむ、俺も吃驚して悲鳴を上げるところであったのだ……。すぐに戻ったので、幽霊ぐらいで認識されていると有り難い。



そして、そして、白丸が起きたのである!


ある朝、陽の光を浴びて、白丸が身じろぎした。ゆっくりと目を開けてぼーっとしていたが、少し気だるげに『よく、ねたー』と声を出したのである。 


夏の風鈴の清らかな風の音のような、とても澄んだ透明感のある声音だ。一月ぶりに青紫の目を見ることもでき、とても嬉しかった。


「ーーっ!? 白丸、心配したぞ!! 体の具合はどうだ? 水飲むか? 腹減ってないか?」


「ふふ、心配してもらうのも悪くないね。大丈夫。喉も乾いていないし、お腹も減ってないよ」


「なぜ、一月も眠り続けたんだ?」


「ふふっ、それはね。僕、ずーっと、ずーっと、寝ることもなく、長い間ひとりで彷徨っていたんだよ。道が分からなくなっちゃってね」


白丸は伏し目がちに続けるのである。

「でも、ひょんなことからルークと一緒になって、安心できて、ああ……ひとりじゃないんだなって。魔力までもらえて、体がぽかぽかで、眠くなっちゃった」


その後白丸がポツリポツリと話をしてくれた。白丸は変な狸だと思っていたが、どうやら狸ではなく、白天と白魔(白丸)で一対の狛犬こまいぬの類のようだ。


一対か……思うところはあるが、夫婦喧嘩は犬も食わないと言われるので、詳細は聞かない。うむ、大人の対応なのである。


白丸は何かで、霊獣の位の上から下、そして更にその下に落ちてしまったそうなのだ。力を全て奪われ、白天に嫌われ、ひとり迷い歩いていたら母上に捕まったと。


まだまだ疲れがあるようで、昼間は陽だまりの中、気持ちよさそうにうとうと、肌寒くなると暖炉前の椅子に、そして夜は俺と寝台で寝る。



今日も寝台にやってきたふわふわもこもこの白丸をぽんぽんと撫でながら、心地よい眠りに落ちた。



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