23.魔術学院 休日
とうとう、待ちに待った休日だ! この解放感、涙が出そうである。
騎士学院と魔術学院のちょうど真ん中に王城があるので、その王城前にダンと待ち合わせ、王都見物の予定だ。
約束の時間に到着すると、王城の前には既にダンが待っていた。今日は騎士服ではなく、楽な生成りのシャツに焦茶のトラウザーズ、それと朱色の腰帯だ。魔術学院のセシルに聞いたのだが、王都で色鮮やかな腰帯が流行っているそうだ。
「おう、おう、おう! 久しぶりだな。ちょっと痩せたんじゃねーのか?」
「そうかもな、魔術学院には鬼がいた……」
鬼の王宮魔術師、イアン先生の顔を思い浮かべながら、げんなりと言った。イアン先生は強烈なのである! 午後からは魔術の教えをビシバシと、研究も共にしているのだが、終わるのはいつも朝である……。
そして、朝からイアン先生は上級生の魔術の授業を受け持っているのである。うむ。ひょっとしたら、もう人ではないのかもしれない。
「ほら、元気出せって! 俺と同じ騎士学院のデュークを連れてきた。デュークは王都に詳しいから、案内してくれるってよっ! 前に鍛冶屋で会ったの覚えてっだろう?」
ダンは俺の背中をビシバシ叩きながら、にかっと笑顔を向ける。絵に描いたような金髪で青の瞳、細身で引き締まった体に見覚えがあった。
「ああ、そうだな。久しぶりだな」
「そうだね。今日は白狸君はいないのかい?」
白丸は相変わらずで、鬼イアン先生にも見てもらったが、『特に異常はないし、従魔契約にこのような例は聞いた事がない。お前の魔力と体を馴染ませているのか、この個体が珍しいのか、なんだろうな?』とよく分からなかった。
王都の市場に行く道すがら、魔術学院のことや白丸の状態、鬼が白丸を眺めながら、寒くなったら襟巻きに丁度良さそうだと真顔で言っていたので、心配なことなどを話した。
ダンとデュークからは馬の五助の話や騎士学院の仲間の話、剣の訓練や鬼教官、寮の寮食の問題点などの面白い話を楽しく聞いた。
デュークが案内してくれた場所は炭火の躍るような炎と白く立ち上がる煙、そして、香ばしい匂いがが辺り一面に漂う。
(うぅ、こ、これは旨そうである!)
「おおっ、旨そーだな! ここがデュークが言ってた屋台屋かっ?」
「そうだよ。串焼き肉にこの香辛料が刺激的で、一度食べたら病みつきになるって評判なんだよ」
丁寧にじっくりと焼かれた串焼き肉に刺激的な匂いのする香辛料をふりかけて、ガブリっと食べるようである。皆で一斉にガブリっとかぶりつくと、調合された複数の香辛料が舌にピリッと鮮烈で香り高い。
「「「美味い!!!」」」
その後は何本もの串焼きを食べたか分からんが、ダンは俺とデュークの倍は食べたと思う。
他も見て回っていると小麦を揚げて、蜂蜜にくぐらせた菓子もあったので、皆で頬張り、最後の締めは果実汁である。複数な果実を混ぜ合わせてある爽やかな果実汁を飲みながら、市場を見て回った。
人混みに埋め尽くさせた市場は活気があり、色とりどりの多様な品々が軒先に並らぶ。商人たちの活気のいい掛け声が飛び合い、買い物客は楽しそうに品物を選んでいる。
抜けるような青空の下、名所や王都を一望できる場なども楽しく見て回った。
夕暮れの光が辺りを照らし始めた頃、大きな買い物袋を抱えたダンが楽しそうに前を歩き、俺は案内をしてくれたデュークに礼を述べた。




