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侍領主でござる  作者: ケヤキ
第二章 ディアス王国 王都バート編
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20.クラウス辺境伯

バルフィルト=ディアス、ディアス王国王太子は耳を疑った。

「クラウス辺境伯の息子の一人が王国魔術学院へ入学する?!」


驚きのあまり、聞いたことをそのまま聞き返すという、無駄なことをしてしまった。彼らが王国魔術学院へ入学すると云ったなら、そうなのだろう。


入学するのはヴェルヘル=クラウス辺境伯の三男、ルーク=クラウス。しかも、初級からではなく、異例の上級への入学だそうだ。



この王国の国境付近に広大な領地を持ち、武術に秀でた名門クラウス辺境伯とその一族には二つ名がある。


裏王家、もしくは陰の王だ。現にディアス王国は建国300年間、表が文官のディアス、裏が武官のクラウスだ。


表裏、強固な関係を結ぶためにディアスとクラウスの婚姻もあり、今は親族のようなものだ。


だが、その陰の王の名は秘匿とされ、知っている者は極僅かだ。その僅かな者達は陰の王に反旗を翻すことは恐ろしくて出来ないと口を揃える。


クラウスは孤高ここうの狼、牙を剥かれたら最後だ。私も思う、もし敵であったらと思うと嫌な汗が流れてくる。



クラウスの領都は城壁都市で、王都の6分の1ぐらいの大きさだが、とても財政が豊かで潤っている。


領地は二国家の国境に面し、もしも、クラウスが他国へ編入したり、独立国家になったらディアスは終わりだ。


ただ、領を閉鎖するだけでも王都は生活必需品不足で大混乱になる。二国家の交易の玄関口とクラウス領の物流が完全に閉じられるからだ。



実のところ、自国も他国もクラウスの動向や情報を得るのに必死だ。なにせ、クラウスの実態は闇に包まれている。公の場に出ているのは一族の内、現領主とその夫人だけだ。


現領主は領地の総管理者、夫人は華美の才女と呼ばれていて外交から交渉、商談を請け負い、一族の内の複数名が国境付近の守りを任されていることだけは判っている。


堅固の守りで、領内に諜報員を潜入させても、即排除。情報は入らず、戻ってくるのは諜報員の首だけだ。


現に馬鹿な自国や他国の貴族などが刺客や諜報員を送り込んだそうだが、裏仕事をこなす一流の技術を持つ者達に瞬殺されたそうだ。しかも依頼主を割り出し、ご丁寧に闇夜に紛れて、首を館前に届けたと聞いた。



そこでだ、病で伏せられている国王陛下、御父上に代わりに、クラウス辺境伯の三男、ルーク=クラウスと良い関係を結びたい。


ルークと思われる人物が二人連れでクラウス領を出発したと、鳥の伝書で情報が入った。それによると連れは騎士学院に入学するようだ。


そうなると話は早い、騎士学院の学生が必ず行く場所がある。王都近くの宿場町にある鍛冶屋だ。 


私は責務があり、身軽には動けない。そこで弟のデューク、デューク=ディアス、ディアス王国第三王子を呼び出し、その宿場町でルークにそれとなく接触するように命を出した。


______

___


「兄上、只今戻りました。兄上がおしゃた通り、黒髪長髪で目を惹く美丈夫でした。機会があったので剣の手合わせをしたのですが、完敗です。背筋を駆け上がるような恐怖を味わいました」


「騎士学院に主席で入学するお前がか? そんなに剣の腕は確かなのか」


「凄まじい速さで剣を抜いたと思えば、剣先が喉元でした。卓越した技量、大負けです。歳も同じですし、興味もあります。一度会う約束を取り付ける予定です」


「そうか、頼んだ」



____


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