16.王都と白丸
昼過ぎて、ディアス王国 王都バートに到着した。
クラウス領の領都ダルと同じく城塞都市で、朝を告げる鐘の音で城門が開かれ、日暮れに城門が閉まる。
しかし、さすが王都だ。昼過ぎなのに王都への行列が途切れる事はない。俺とダンはそれぞれ魔術学院と騎士学院の入学書を見せて王都に入った。
俺もダンも興味津々、あちらこちら、キョロキョロしながら寮に向かう。側から見てもおのぼりさん丸分かりで、ちょっと恥ずかしいのである……。
いくらか歩いて分かった事は路地も全て石畳で家々も含めて全て整然とした街並み。そして、兎に角、人が多い! 真っ直ぐ歩くことも困難なのだ。
市場も領都ダルの倍以上で、丘の上から見る王都の大きさに俺もダンも驚いて目を白黒させた。
美しい街の中心部には城が聳え立ち、その城を挟むように右側に騎士学院、そして左側に魔術学院がある。
「ここからはダンは右で、俺は左だな」
「おうよっ、次の休日に王都見学と洒落込もうぜっ!」
ダンとは次の休日に会う約束をして、それぞれの学院寮へ向かった。
ダンと別れて、すぐにディアス王国魔術学院の正門に着いた。正門にある受付のポーラさんに入学書を手渡し、寮の説明を受ける。
「ふうー、新入生が入学する今の時期ってたいへんよぅ。えーっと、そこのコの字型の建物の右側が女子寮、左が男子寮よ。君は上級、あら? 上級に新入生は珍しいわねぇ」
ポーラさんは首を傾げながら続ける。
「ともかく、上級だから左の建物の3階よ。3階のそれぞれのドアに名前が書いてあるから確認してね」
「馬はどこに繋げたらいいですか」
「従魔くん達は寮裏にある従魔専用の小屋があるからそこに。ルークくんは黒馬と白狸……狸?! は登録済よ」
書類に記入されている狸に驚く、ポーラさん。 それにしても従魔? 登録済? とは何だろうか?
「他の施設、食堂、図書館、練習場などはこのパンフレットを見てね。それと、この指輪は学院の学生であることの証明もできるし、寮や部屋はもちろん、他の施設の鍵になっているから無くさないようにね」
ポーラさんは超高速の説明後に慌ただしく次の学生の対応に取り掛かった。
ふむ。取り敢えず、寮裏に小屋があるみたいだから行ってみるか。
学院はコの字型の3階建てで、男女の寮と寮の間は本館。辺りは一面の芝で、本館前には噴水と馬車が通れる石畳が敷いてある。
そして、寮裏に木製の大きな小屋があった。中は小分けに区切られていて、風通しもよく清潔だ。
「黒丸、たくさんの藁が敷いてあるし、ゆっくり休めそうだな」
辺りを確認するように鼻をヒクヒクさせて満足そうな黒丸。管理人さんに黒丸を預けて、寮へ向かった。
寮の管理人さんも、ポーラさん負けず劣らずの、超高速型だった。
学院が始まるのが7日後、それまで好きに過ごしてよし。
支給される教本、ローブ、荷物、他は既に部屋に手配済み。
学院内はローブを着用するように、部屋は3階、1人部屋。
うぅ、今日はたくさんの説明を受けて疲れたのである。しかも超高速であった……。
疲れたからさっさと部屋に入って休むとするか。
部屋は入ると正面に大きな窓があり、机や寝台などの家具はクリの木素材の落ち着く焦茶色。年季も入っているし、落ち着く古民家風だな。
暖炉の前には居心地良さそう椅子もあったので、椅子に座ってひと休息した。
ふと、ポーラさんの『従魔』を思い出したので、白丸に声を掛ける。
「白丸、従魔ってなんだかわかるか?」
「きゅぅ?」
ふむ、白丸も分からなそうだ。よし、図書館に行って調べてみるか。
重厚な図書館の扉を開けると、吃驚だ! 大量で豊富な蔵書に何やら興味深げな古書もたくさんある。
詳しくは今度来た時にでもにしよう。今日は『従魔』である。早速『従魔』の書物を数冊を取り出し、その中から1冊の本を選んだ。
上級生は本の持ち出しが1日、2冊まで許可されているので、自室の暖炉前の椅子に座っり、借りた本を読み始めた。
本を読んで分かったことは、従魔契約とは2つの種類がある。
1つは、『強制契約』主が強者の場合、魔力を持って服従させ、使役が可能。
1つは、『相互契約』主に使役されるが、主の力を借りる事もできる。相互協力。
白丸に2種類の契約があることを伝えた。
「それと、従魔契約の『相互契約』は俺には制限がないが、白丸にはある程度の制約があるようだ」
白丸はいつもの2本脚姿で聞いている。
「術式自体は難しくないから、すぐ出来ると思う。白丸が『相互契約』するかを決めてくれ」
旅の間に練習して『きゅう』と返事ができるようになった白丸に聞く。
「きゅうっ、きききっき、きゅきゅ、うっ!」
両手を振り振り、歌舞伎のような派手な動きと語りをする白丸。特に最後のよろけて2本脚で踏ん張った仕草はキマっていたような? いないような? 兎に角、さっぱり分からないのである!
「……聞くから好きな方に返事をしてくれ」
「『相互契約』を結ぶか?」
「きゅうっ!」
「今のままがいいか?」
「……」
「よし、わかった。白丸、今から従魔契約の『相互契約』を結ぶ、頭の上に俺の手を乗せるぞ」
術式展開で青紫に光る幾何学模様の魔術陣が浮かび上がる。白丸と俺の手の甲に青紫の古代文字が浮かび、粒となって消えた。
無事に終わったようなので、白丸を見ると、し、白丸が、ずんぐりむっくり狸から、しゅっとした狐っぽくなった?!
「…………っ!!」
よく分からぬけど、ふわふわな白の長毛に俺と同じ青紫の目。しかし、手足の短さと丸い耳は変わらないな……。
白丸が俺の胸あたりに飛びついた。おお、ふわふわで、素晴らしき触り心地なのである!
「ちょっとはかっこよくなった?」
澄んだ透明感のある音、いや声がした。
「白丸、話せるのか?! しかもふわふわで抱き心地が良いぞ!」
「ふふっ」
今日、白丸は変化して、ふわふわのもふもふになったのである!
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