15.旅の終わり
森を抜けてからは旅は順調に進んだ。
普通は宿を取るために遠回りもするが、俺らは遠回りをするくらいならと野宿をしたのである。通常なら10日掛かる道のりを7日で、明日の昼過ぎには王都に到着する予定だ。
騎士学院に入学するダンの剣の修理で、今日は王都近くの鍛冶屋にやって来たのだ。
「この町の鍛冶屋はそんなに有名なのか?」
「おうよ、騎士学院に通う奴で知らない奴はいねーそうだ」
その鍛冶屋は町の外れにあり、鍛冶屋の前には広い野原が広がっている。
「ここがその鍛冶屋だっ」
「かなりの者が店前で待っているところを見ると、時間が掛かりそうだな」
「おう、原っぱで昼寝すっか」
ダンが修理を依頼した後、俺らは野原で待つことにした。
「この辺、寝心地が良さそうだなっ」
「そうか?」
すると、風が優しく吹き、柔らかな野原の草がサラサラと揺れて、爽やかな草の香りが広がった。うむ、確かに昼寝にはもってこいだな!
ゴロリと寝転がるのと同時に上から声を掛けられた。どうやら、男女の4人組だ。
「君たちも修理待ちかな?」
「おう、時間が掛かりそうだよなっ」
4人組はダンと同じで騎士学院に入学するそうだ。ふむ、ダンの同級生だな。その内の一人、金髪で青の瞳のデュークと名乗る青年が俺の刀を見ながら聞いてきた。
「その、剣、随分珍しいね。ちょっと手合わせを頼めるかい」
「ああ」
「ルーが手合わせかっ?! それ剣、飾りじゃねーのか?」
「………」
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あのクラウスの三男とは兄上からは聞いていたので、剣の腕前を確認する為に手合わせを願いでた。
クラウスは目を伏せて、ただ鞘に入った剣を片手で持ち、ただ立っている。無心で、何も考えていないからか、次の動きが全く見えない。どこから攻め入ればよいのかさえも、分からない……。
戸惑いながらも打ち込むと、凄まじい威圧感と突き刺さるような殺気に背がゾワっと粟立つ。そして、凄まじい速さで剣を鞘から抜き、気が付いたら喉元で剣が止められていた……。
呆然と眺めていたら、クラウスは剣を鞘に納めたのだが、一つ一つの動きが美しく、その剣を鞘に納める所作までも美しかった。
あまりにもの超越した技量を前にただ口を開けてポカンとすることしかできなかった。
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「おい、おい、おい! ルーは凄かったんだな。今まで知らなかったぜっ」
「腕には自信があったのだが。君には完敗のようだ。また今度、手合わせを頼めるかい」
「ああ、もちろんだ」
その後、ダンは鍛冶屋で剣を受け取り、腹が減ったので夕食を食べてから宿屋へ向かった。
「ルー、魔術学院って何を学ぶんだっ?」
「実は俺も知らん。5年教育で4年間をすっ飛ばしての入学だ」
「ルー、まさかの4年飛ばしか。大丈夫なのかよっ?」
「いや、不安しかない」
「「……………」」
実はかなり心配だ。うっ、考えると胃がキリキリする。
「ダンの騎士学院はどうなんだ?」
「おいっ、領都で飲みながら話したじゃねーか。まさか、覚えてねーとか言わないだろうなっ」
「そのまさかだ」
「そのまさかだ、じゃねーよ。たくっ」
ダンの話によると騎士学院は17歳からで、入学と同時に騎士見習い。1年後には騎士として、ディアス王国のどこかの部隊に配属されるそうだ。
「明日からお互い、それぞれの寮暮らしだなっ! まあ、魔術学院と騎士学院は城を挟んだ隣同士だから、いつでも会えるがなっ」
色々と王都の話をしながら、ダンはぐうぐうと大いびきで寝てしまった。
うむ、明日は初めての王都、とても楽しみなのである!




