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侍領主でござる  作者: ケヤキ
第八章 助太刀
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123.粗方お役御免6ーバシバシ

フレディエル魔術学院と名付けたことを言うと、嬉しそうな顔した束の間、フレディエルは口を一文字にして、きゅっ、きゅっ、と応接間を後にしてしまった。


俺達には計り知れない思い、300年に亘る思いがあるのだろう。


だが、やはり、ピチピチトラウザーズは歩きにくそうなのである……。変なきゅっ、きゅっ、と音もするしな!


____

__


この時をもって、俺の名はルーク、クラウス、ブルクス、ルーエルになった。格好いい名だろうか? まあいいか。


ふむ、領主となっているブルクス領はどうなるのだろうか? 新たに国を造るなど、ここ数百年なかった事だ。手探り状態だが、一つ一つ取り組んでいくしかないな。


「デューク、これからロアの王太子、それとラディスに会いにいく。明日の建国記念と戴冠の儀の打ち合わせもあるしな」


「分かった。フレディの事は心配しないで任せてよ」

「ああ、頼んだ」


フレディはあの300年にケリをつけて、明日からは新たな始まりだ。よし、浴衣でもしっかりとした良い生地なので、同じ藍色の男羽織を羽織って、と。


「転移」



ウルと二人でロア国の俺に充てがわれた部屋に戻った。先ずは王太子ラズエルとビリーに会いに行くか。


「ウル、王太子の所在を聞いてきてくれぬか?」

「はっ!」


いつにもまして、ウルは元気でチャキチャキしている。ウルもこれから新たな国造りに加わるからな。新たな役割、文官としてデュークの補佐役になるそうだ。


暫くして、しょんぼりと眉を下げたウルが戻ってきてた。後には……王宮守りの儀を執り行う御仁だな。相変わらずに御仁と呼ぶに相応しい風格の老齢の男だが、顔色が非常に悪い。


んん? 明日の儀に大喜びしていると思ったのだが?


「どうかしたのか? そのままでよい」


膝をつきかけたのを止めさせて、改めて御仁を見ると瘴気にでも当てられたようだ。黒いモヤモヤ君が見える。


「御仁、背を向けてもらえるか?」


少し不思議そうな顔をしたが、素直に俺に背を向けた。ふふっふ!



バシィィィーーーーン!!!



いかん! うっかり強くしすぎたか? 御仁が前につんのめって、すっ転んでしまった。ウルに手助けされて起き上がったのだが、『なぜ私は背を叩かれたのでしょうか?』という顔で目を白黒させている。


「少し強く叩きすぎてしまったようだが、気分はどうだ?」

「は、はぃ? はっ! か、体が楽に、楽になりました!」


黒のモヤモヤ君を叩き潰したのである。だが、蠅を叩き潰したような気分の悪さがあるのだ。取り敢えず今は浄化して、後で手を洗おう。



御仁と話をしたのだが、殆どの北の城にいた者は正気を取り戻したかのように従順で、一時謹慎処分等などの処遇。新国王によって温情がかけられる手筈となっているとの事。


そして問題が旧国王とその一部の者達だそうだ。魔術封じの手枷をされているのだが、災いの言葉を吐き続け、近寄ることもできないそうだ。


ふむ、あの光の剣で浄化しなかったとは、ある意味すごいな!



「先頭で指揮を取られた王太子殿下もご気分が優れなく、王宮魔術師が治療にあたっております」


「なら、見舞いに行くか。ウル、行くぞ」


御仁も引き連れて、スタコラと王太子ラズエルの部屋へ向かう。前に王太子の間に行った時は変な黒蛇の首を切り落としたな。


ふむ。それにしても、自動扉のようだな。どの扉も足を止める必要のない、絶妙な間合いで扉が開くのだ。無論それぞれの扉番が開くのだが、姿を見ただけでスッと開かれる。これが市井で言われている『顔パス』だろうか?


ほほぅ、と思っていると王太子の控えの間を通して、部屋の扉も開かれた。改めて見回すと書物は沢山あるがキチンキチンとした部屋である。


ラズエルは……おっ、いたいた。長椅子で横になっているな。顔パスで扉が開き、起こす間もなかったのだろう。近くに控えている従者達が大いに慌てている。


ふふっふ、どう起こすかな、と考えていたら、ラズエルが起きてしまったのである。ふむ、つまらぬ。


「し、し、しっしゃ様」


寝起きを襲われたように素っ頓狂の顔で狼狽えているラズエルなのだ。それにしても御仁と同じだな。


「ラズエル、そのままで良い。背を向けてくれぬか?」



バシィィィーーーーン!!!



ますます鳩が豆鉄砲を食らったようなラズエルである。


また蠅を叩き潰したような気分の悪さを受けたが、ラズエルも体の具合が良くなったそうなので何よりだ。


聞くと第二王子のビリーに第三王女のマリーも気分がすぐれないらしい……。



バシィィィーーーーン!!

バシィィィーーーーン!!

バシィィィーーーーン!!



他も適当にバシバシ叩いて、手を洗ってラズエルの部屋に戻ってきたのだが、ラズエルは服装も改め、茶とハムサンドを用意してくれていた。どうやらウルから俺の好みを聞き出したようだ。うむ、気配りラズエルなのである!


白丸にあげてしまったので、食べ損ねたハムサンドなのだ。ふむ、作り手によって、こうも味が違う。ハムサンドは奥が深いな!



もぐもぐと頬張っていると、ラズエルが事の経緯を話し始めた。


北の城の件では大勝利で終わったが、騎士達、御仁やラズエルも含めて体が鉛のようで、頭痛や眩暈があったそうだ。


これは『瘴気に当てられた』だろうな。ウルフスによると地が汚れ『地毒』、人の負の念でも地が汚れ『人毒』で瘴気が湧き溜まるそうだ。



食後の爽やかな香りの茶を楽しんでいると、ラズエルが口を開いた。


「使者様の御手を煩わせることに誠に心苦しく存じますが、かの者らに会っていただく事は叶いますでしょうか?」


事が好転することを願って、俺にあの旧国王達の背に試しの一叩きを頼むのであるぅ。御仁までも『是非にとも、あの御力『バシィィィーーーーン!!』一発を!』


二人に深々と頭を垂れて頼まれてしまったら……断れないのであるぅ。



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