11.仲間と愛執事弁当
ディアス王国の魔術学院へ入学する俺と騎士学院へ入学するダン。黒馬の黒丸、狸の白丸、ダンの愛馬ダンスインザカメハメメハと王都まで10日の旅になる。
早朝から太陽が真上に上がるまで、ダンとのんびり会話をしながらここまで来た。
「ああーーっ! 五助!!」
いかん、思わず叫んでしまった。
ダンの横顔を見たときに、今ハッキリと判ってしまったのである。祝いの儀で会った時から初めて会うような気がしない、この胸に突っ掛かる何かが。
大三郎の愛馬 、五助だ!
焦茶色のモコモコした前髪につぶらな瞳。よく見ると可愛いような、よく見ると精悍な顔立ち……よく見るとである。
「な、何だよっ、突然! 吃驚したじゃねーか!」
「すまん、ちょっと思い出したことがあってな」
「たくっ」
体高は低めで胴長短足にぽっこりとした腹、意外と頑固だが、優しい性格の馬だった……それにしても似ているな?!
「ダン、お前の出身地はどこだ?」
「おう、フォートの砦近くだ」
上の兄、ラッセル兄上が守っている山間部の砦だ。五助も山間部生まれの在来馬で足腰が強く頑強だった。元気でいてくれてたら良いがな……。
「ルー、ここらでメシ食おうぜ!」
「ああ」
それはそうと、気が付くといつの間にか『ルー』になっていた。人懐っこいダンには敵わないな。悪い気はしない。
見渡す限りの草原に頼りげなさそうにひょろっとした若木があったので、その下に腰を下ろした。
昼食はジョセフ監修の塩漬け肉にチーズとハーブをパンに挟んだもの。名付けて、塩漬肉サンド、そのままである……。
「ダン、沢山あるから食べてもらえると助かる」
「おおっ、美味っそうだなー! ありがとさん!」
料理したのはもちろん料理人だがジョセフが監修してくれたのだ。愛妻弁当ではないが愛執事弁当といった所か。何はともあれ美味しいのである!
「少し汗かいた後の塩漬け肉は最高だな!」
ダンは笑顔でもりもりと実に美味しそうに食べるのである。
ところで、白丸はダンと俺の間ぐらいの位置に陣取り、いつもと同じ様に2本足で立ち、両手で俺らと同じサンドを食べている。
「ところでさ、その、白いやつ、白丸だけ? 本当に狸か?体型的には狸だけどさ、なんかおかしくねー?」
「そうなんだよな」
サンドを口に入れるようとして、固まった白丸。
「なんか言葉がわかってね? あっ、逃げたぞ!」
白丸は黒丸の近くに走って逃げた。不思議な狸だ。
草原で気持ちよさそうに休みながら、黒丸とダンスインザカメハメメハもおやつにとジョセフが用意してくれたりんごと人参を美味そうに食べた。
遠くまで広がる開放感たっぷりの大草原。風の流れにサラサラと草が優しく揺れる。




