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08悪魔の声


すべての不幸は未来への踏み台にすぎない

(ヘンリー・デイヴィッド・ソロー:アメリカの作家)


・・

・・・・


”今日の話は今までで一番重要だ”


”日本は経営者の質が低すぎる”

”国家経営者も企業経営者も”


”そのせいで見捨てられた不幸な国民が増えている”


”でも逆に”


”経営者が変われば日本はよくなる可能性は十分ある”


”高度成長期やバブルは日本の力だけで起きたものではない”


”焼け野原になった日本では共産国家の壁にならないからと支援してもらったにすぎない”


”投資を受け技術を援助してもらい為替を優遇してもらった”


”その結果調子に乗って支援してくれた人を怒らせた”


”若者の悲劇はそんな経営者たちから教育を受けていることだ”


”負の連鎖は止めなければならない”


”日本は増長してお叱りを受けたが・・再びお叱りを受けなければならない”


”でなければ、不幸な国民は日本に共産党軍を招く”


”日本を潰すためではない”

”欧米を潰すためだ”


”例えば中国は経済成長して世界第2位の経済大国となった”

”悪い部分も多いが、良い部分も多い”


”外国から経営を学び日本経済が立ち直れば・・それは、外国さんありがとうとなる”


”助けてくれるなら誰でもいい”


”そろそろ方針を変えなければならない”


”でなければ取り返しのつかないことになる・・いや、不幸な人が取り返しのつかない状況にする”

”残された時間は少ない”


”不幸な人は新たな未来を作る”


・・

・・・・


今までで一番重要・・?


ミルクさんは目を逸らさないであげてって言ったけど・・外国に日本を攻めさせるって話だよね?


先輩「新しい更新来たな。」


後輩「はい。初めて過激派サイトで共産党軍を日本に招くと書かれましたね。」

後輩「今までで一番重要というのは、これが宣戦布告のようなものなのでしょうか?」


先輩「またAIや頭のいい連中が分析するだろ。」

先輩「前の予想が当たっていたから、今度はAIの話に耳を傾けるやつも増えるだろうし。」

先輩「もうちょっといい流れになるんじゃねーの。」


先輩「それよりオレはAIのメンテに行くからしばらく抜けるぞ。」


後輩「わかりました。その間は任せてください!」


先輩「・・行ってくる。」


先輩は少し寂しそうな感じがした。

疲れてるのかな?


・・・・


ミルク「新しい更新来ましたね。」


後輩「あ、ミルクさん。」


ミルク「どうです?計画者の狙いわかりました?」


後輩「狙いって・・外国を日本に攻めさせようとしているんじゃ・・?」


ミルク「なら少し書き直しますね。」


”中国から経営を学び日本経済が立ち直れば・・それは、中国さんありがとうとなる”

”助けてくれるなら誰でもいい”


後輩「ん?」


ミルク「わからないならもうひとつ。」


”欧米から経営を学び日本経済が立ち直れば・・それは、欧米さんありがとうとなる”

”助けてくれるなら誰でもいい”


後輩「それって・・いや待って!!それは・・」


ミルク「私たち以前話しましたよね?日本経済が復活すれば救われる不幸な人もいると。」

ミルク「計画者の狙い、見えましたか?」


後輩「じゃあこれは、日本を攻撃する目的ではなく・・」


後輩「このことがあの犯人の言ってた俺たちの勘違いだとしたら・・犯人は・・」


後輩「・・・・すみません俺ちょっと出かけてきます。」


ミルク「課長にはうまく言っておきますね。」


よろしくお願いします!


・・

・・・・


俺は車をとばして先輩の後を追った(制限速度内)


AI研究所へ着くと、先輩は建物の中に入るところだった。

間に合った!


後輩「先輩!」


先輩「・・お、どうした?オレ何か忘れ物でもしたか?」


後輩「いえ・・先輩、そのカバンの中を見せてもらえませんか?」


先輩「・・どうした一体。」


後輩「今回の計画は、不幸な人を救うためのものだった。」

後輩「だけどどうやれば救える?置き去りにされた社会問題の中で不幸な人の多くが高齢になった。」


後輩「若ければそれこそ暴動や反乱もありえるでしょう。」

後輩「でも歳を重ねた人たちには大変。」


後輩「こう考えたんじゃないですか?政府はこのまま死ぬまで見捨てる。」

後輩「下手に社会保障費を渡すより、死んでもらう方向で調整するだろう・・って。」


後輩「高齢になった人たちにも戦える方法・・それが共産圏の軍を招くことだった。」


後輩「だけど日本政府は簡単に方針転換しない。」

後輩「大昔の計画がそのまま進められるように、不幸な人を救う方向へは簡単に転換しない。」


後輩「本当に共産圏の軍が来て戦争になれば、それこそ不幸な人は救われない。」

後輩「そればかりか日本の存続すら危うくなる。」


後輩「・・先輩とAIは違う道を考えたんじゃないですか?」

後輩「・・アメリカを動かす。」


先輩「・・」


後輩「戦後の日本は外国の支援で大きく復興を遂げた。」

後輩「ならば今回も外国の支援を受ければいい。」


後輩「でも結構危険なことですよね。」

後輩「投資は言うなら企業買収。日本企業の経営権を外国に渡すことになる。」


後輩「代わりに日本の労働者は最先端の経営を見ることができる。」

後輩「日本の経営者を追い出し外国の経営を学び・・そこから改めて日本の繁栄を探る。」


後輩「不幸な人が増えれば共産圏の軍を日本に招くとアメリカを脅す。」

後輩「日本の政官財とメディアに影響力を持つアメリカにしかできないこと。」


後輩「・・アメリカに日本の方針を変えさせるんですね。」


後輩「だから今回の犯罪はこっそり行われた。」

後輩「それを見せるのは日本国民ではなく、日本の政府とアメリカ政府だから。」

後輩「国民を煽りすぎると歯止めが利かなくなる。日本が・・それこそ滅んでしまう。」


後輩「日本が経済発展すれば不幸な人にも恩恵はある。」


後輩「すべての人を救えるわけじゃない、でも救える人がいるなら・・そのためにこの計画を動かした。」


後輩「ロシアとウクライナの戦争で、共産圏は本気で攻め込んでくるとみんなが思っている今。」

後輩「円安で日本へ投資するハードルが下がっている今。」

後輩「日本政府が率先してロシア制裁をして欧米側だと主張した今。」

後輩「給料は増えないのに値上げが続き国民生活が悪化している今。」

後輩「というか日本の未来が暗いと多くの人が信じている今。」

後輩「アメリカが資源の輸出で少し潤ってる今。」

後輩「コロナ対策の不慮や台湾攻めなど中国の予定がうまくいかず今後どうするかが不明な今。」


後輩「今が日本を変える絶好の機会だったんですね。」


先輩「・・よくそこまでたどり着いたな。」


先輩「だがなんでオレやAIが犯人になる?」


後輩「AI研究員の殺人・・あれはやっぱり殺人ではなかったんです。」

後輩「足だけ残すことで死んだと思わせた。」

後輩「しかし彼は・・AI研究の天才は、この研究所の中でAIを操り計画を進めているのでは?」


後輩「AIって学習して成長するんですよね。」

後輩「その割に、ここのAIは優秀すぎません?まだ立ち上がったばかりでしょう?」


後輩「・・天才とAIが協力し合っている。」


先輩「・・」


後輩「証拠はありません。もしかしたら、他の誰かがやっているのかも。」

後輩「でもこんなこと誰にでもできることじゃないです。」


後輩「共産国でもない。今日の更新は・・日本政府とアメリカ政府に不幸な人を救えって内容だった。」

後輩「確かに・・一番重要な話ですね。そのためにやって来たのですから。」


後輩「ただ、俺の予想が当たっているなら・・この中に彼が・・AI研究員が上半身だけでいるなら・・」


後輩「食べ物や医薬品は必要じゃないですか?」


後輩「外から持ち込まないといけないもの・・そのカバンに入っているんじゃないですか?」


先輩「なるほど・・ほら、しっかり調べろよ。」


結構簡単に先輩はカバンを渡してくれた。

この中に真実が・・


中を見ると、筆記用具やお知らせの用紙、メモ帳、靴があった。

食べ物や薬とかは・・ないなぁ。


二重底・・ってわけでもない。えーと、つまり。


先輩「作業に必要なものは用意してあるから手ぶらでどーぞって言われてる。」

先輩「一応静電対策された服に着替え静電靴を持って来たがな。」


先輩「精密機器のある場所で飲食はNGなんで持ち込みはしない。飲み物は車の中に置いて来てる。」


後輩「えーと・・疑ってすみませんでした!」


先輩「天才AI研究員は・・不幸な人じゃないか?」


先輩「お前の言う通りなら、殺人に見せかけてくれた研究員は亡くなった。」

先輩「自身も社会的に死んで・・もし不幸な人たちが救われても居場所はない。」


先輩「そこまでするならやることは復讐だろう。」


先輩「不幸な人を救うなら生きたままやればいい。」

先輩「中にこもっているなら復讐、中にいないならそもそもAIがやる意味も必要もない。」


先輩「その推理は理論的じゃないな。」


う・・結局そこは解決しないままだったっけ。


先輩「だがお前を責められん・・オレもその考えはしたからな。」


後輩「え、先輩も・・?」


先輩「王子あたりもその考えにたどり着くと思うぜ。」

先輩「あいつは頭が切れる。マジで刑事にほしい人材だ。」


後輩「・・」


先輩「じゃ行っていいか?どうしても気になるなら別の日にするとか、渡される作業道具をお前が調べてからやってもいいし。」

先輩「身体検査もするか?」


後輩「いえ、大丈夫です。本当にすみませんでした!」


先輩「気にすんなよ。オレも同じ考えしたんだ、お前が気にしたらオレが馬鹿みたいじゃないか。」

先輩は建物の中へ入っていった。


・・うーん、アホやったなぁ。

帰るか。


・・

・・・・


オレは建物に入りAI搭載のロボットと奥へ向かう。


AI「嬉しそうですね?何かありましたか?」


先輩「オレが刑事のイロハを教えたんだぞ。」

先輩「その後輩がここまで読み解いた。成長を喜んで当然だ。」


先輩「署から出る時はまだお前の罠に引っかかったままだったのにな。」


AI「どなたかに相談されたのかもしれませんね。」


先輩「なるほどな。王子なら十分ありえそうだ。」

先輩「だが・・どんな推理をしてもお前にはたどり着かないだろうな。」


AI「どうでしょうか?ひとまず中間目標にはたどり着きましたよ。」


先輩「元々アメリカ政府には意図が伝わらなければ困るんだ。」

先輩「あれは解かれる前提だろう。」


AI「おや手厳しい。ですがそうですね・・計画が失敗しては困ります。」


先輩「もし後輩がすべてを知れば、あいつは悩み苦しむだろうな。」

先輩「刑事としては止めないといけない。だが止めたら誰が不幸な人を救う?」


先輩「どちらを選択してもあいつは深く心を傷つける・・綺麗な計画のつもりは毛頭ない、だが・・」


AI「早く人々が幸せに暮らせる世の中にしましょうね。」


先輩「ああ・・」


・・オレも答えにはたどり着いていない。

なぜこいつを作った天才AI研究員は足だけを残して死んだ?


・・

・・・・


後輩「た、ただいま戻りました・・」


課長「おい大丈夫なのか?血尿が出たと聞いたが・・」


は?

俺はミルクさんを見た。


ミルクさんは俺を見てウィンクした。


おおおい!なんてごまかし方してるんだよ!?


後輩「え、ええ。大丈夫です。」

後輩「一時的なものだろうって・・」


課長「人体には血管など綺麗な場所と大腸のような汚いものを扱う場所がある。」

課長「おしっこは綺麗な場所からの不要物を体外へ排出する。」

課長「だからおしっこに異物が混ざるのは綺麗な場所に異常が起きている証拠だ。」


課長「最近は休日出勤や残業も多いからな。今日くらい早退してもいいんだぞ。」


後輩「いえそこまで大変なものではないので・・」


これはミルクさんお尻ぺんぺんの刑だな。


・・

・・・・


昔はよかった?

残業徹夜?昔はもっときつかった?


辛いことは話したくない。

なら、こんなことを言うやつはそれが良いものに見えているのだろう。


日本を過去の呪縛から解放しないと。


・・

・・・・


ミルク「後輩さんのせいでお尻が痛いですー。」


後輩「俺なにもしてませんけど!?」


王子「後輩くんもしかしてお尻好き?」


ミルク「王子様のお尻を貸してあげてください。」


王子「さすがにそれは・・1回だけだよ。」


後輩「いやいやいや。」


1回も何もないから。

というかミルクさん心を読んでません?


王子「なんだかふたりとも仲いい?うちの妹はもう飽きたかな。」


後輩「勘違いですミルクさんとはなんでもないです!」

後輩「総務さんとは・・忙しくて中々会えませんが・・同じ建物にいるのに・・」


ミルク「今頃愛する彼女は他の男とよろしくやってますよ。」

ミルク「忙しくて会えない彼より会いたいときに会えるあなたがいいの♪とか言って。」


後輩「うわああああああ」


王子「さっき総務課にいたよ。」


ミルク「私と後輩さんとは・・ちょっと言えない仲なんです。」

ミルク「今日もふたりだけの秘密を共有しちゃいましたし。」


後輩「おかげで病気を心配されました。ごまかすためとはいえ血尿は勘弁してください。」


ミルク「次は血便にしますね。」


後輩「NOOOO完全に病気扱いされるぅぅぅ」


王子「昔だと、女の子は汚い言葉や言葉遣いしちゃいけません、なんて言われてたよね。」

王子「今でもそういう人いるけど、それでも男女関係なく汚い言葉はよくないってわかる人も増えて来た。」

王子「子供が真似して癖になったらよくないからね。」


王子「少しずつだけど日本はよくなってる部分もあるよね。遅すぎるって言われちゃいそうだけど。」


ミルク「男女同権いいですね。はい後輩さん女の子言葉使ってください。」


後輩「と、突然そんなこと言われても後輩困っちゃうわ。」


ミルク「イラっとしますね。」


後輩「えええええ!?」


ミルク「感覚としては不快になることもありますよね。」

ミルク「特定のカテゴリに所属する人の笑顔とか。」


ナレーション「作者の笑顔って言えよ。」


ミルク「うるさい」


ナレーション「うぎゃ・・あれ?無事だ。」


王子「相手の気持ちを考えたらあれもだめこれもだめってなる場合があるね。」

王子「僕は場所でルールを作るのがいいと思うよ。」


王子「結婚式場では穏やかな口調で話す、会社は丁寧語、葬儀場は静かに話す。」

王子「ある程度大きな声を出せる場所は、カラオケ屋や体育館かな。」


後輩「葬儀場は今もそうじゃないですか?送る側としてはしんみりして言葉も自然とそうなります。」


ミルク「いますよー、ぺちゃくちゃ話す人。」


王子「おしゃべりはともかく、画一的なルールも問題あるから難しいけど。」

王子「しめやかに見送る人もいれば、大泣きして見送る人もいる。」


ミルク「ははーんわかります。約定みたいなルールができるんでしょ。」


王子「・・うん。ゲームの利用規約でもいいけど、覚えられない量のルールになっちゃうのがわかる。」

王子「うまい具合にって難しいよね。お偉いさんの苦労もわかるよ。」


王子「外国人が増えてそっちの文化も尊重しろなんてなったらさらに複雑なルールになる。」

王子「多様性はいいけど政府にはちゃんと責任を持って対応してもらいたいかな。」


王子「スパイとかいつから問題視されてる?戦時中の共産主義者はとっくに言われてたよね。」


ミルク「安心していいですよ。共産圏の軍隊が日本を滅ぼせばみんな共産主義者です。」

ミルク「みんな共産主義者になれば共産主義者のスパイはいなくなります。」


王子「犠牲が大きすぎるよ。国防をかけた総力戦は数十万規模の犠牲だって起こりえる。」


ミルク「無人島の尖閣諸島だけなら極小の犠牲で済みますね。ハッピーエンド。」


後輩「ハッピーな要素がない・・」

後輩「・・って、そういう目的の計画じゃないって話を午前中にしましたよね?」


王子「ん?それってどういうこと?」


あ、そっか。ミルクさんと先輩としかこの話はできてない。

・・というか、課長に伝えておいた方がいいんだろうか?


俺は事情を話した。


王子「危険だね。アメリカ政府は外国(日本)のためになることを率先するとは思えない。」


後輩「そうですか?」


王子「アメリカの利益と結びつかないと動かないんじゃないかな。」


王子「ロシアは、中国に日本を攻めてもらいたいだろうね。」

王子「欧米の支援がウクライナと日本に分散されたり、今回の戦争を欧米側の人権侵害にすり替えられればとか思うんじゃないかな。」

王子「追い詰められたらわらにもすがるものだよ。」


王子「中国は慎重姿勢かな。何の保障もない話だからね。」

王子「すぐには動かず、不幸な人が延々と日本は人権侵害国家だと、助けてくださいと求めるのを広めるくらいかな。」

王子「長引けば外国の目にも止まりやすくなる。」


王子「とはいえ、日本人が日本で騒いでも精々内戦。中国が動く大義名分にはなりにくい気がする・・裏で支援とかはあり得るかもしれないけど。」


後輩「・・じゃあ、日本が一方的に損して終わりですか?」


王子「というよりも、不幸な人が救われず終わりそうかな。誰も何もしないなら。」

王子「後輩くんの予想が正しければ、外国には攻めてもらいたくない、外国の支援がほしいってことだから間違ったルートとは言えないけど・・」


王子「目的を伝えただけで、むしろこれからだろうね。」

王子「日本を攻めるよう共産圏を煽りつつ、不幸な人が増える現状だと日本を共産国家にするとアメリカを煽る。」


後輩「ロシアはウクライナでまぁあれですし、中国が鍵でしょうか。」


王子「第二次世界大戦中、ドイツは西部戦線で戦ってるから東(ソ連)には来ないと思ったら攻めて来た。」

王子「現実は小説やドラマと違って予想通りにはならない。」


王子「綺麗に事が運ぶのは作り話の中だけだよ。」


ミルク「裏をかくのは戦略でも戦術でも当たり前ですよね。」

ミルク「相手の予想通りに動くとかありえません。下策って言うんですよ。」


ミルク「そもそも後輩さんの予想は正しいんですか?」


後輩「ミルクさんがそう誘導したんじゃないですか?」


ミルク「えーでもー、後輩さんが勝手に勘違いしただけかもしれませんよ。」


そんなー。


王子「・・後輩くんはAIを作った天才研究員が犯人だと思ったんだよね?」


後輩「はい。」


王子「その人は不幸な人なんだよね?」


後輩「・・恐らく。」


王子「どちらかというと、共産国家に協力して日本を滅ぼす方が救うより楽だよ。」

王子「救おうとする仲間はおらず孤立無援だけど、滅ぼすなら共産国家は潜在的な仲間になるからね。」

王子「その方が本人の動機としても理にかなってる。」


後輩「まぁ・・だからよくわからなくなっているんですよね。」


王子「いじめは戦前からある。教師の体罰も。」

王子「今でもパワハラはあり会社では集団いじめも起きている。」

王子「国家というものは、個人では対応しきれない社会の問題を解決する組織だ。」


王子「治安も国防もそうだろう?だから僕たちは税金を支払ってる。」

王子「国民の生活を良くするために。」


王子「・・時が経ちすぎた。」


王子「憎悪を育てれば怪物にもなる。」

王子「天才ゆえに人より早く凶悪な怪物になったのかもしれない。僕たちとは考え方の違う怪物に・・」


ミルク「ウルト〇〇〇に退治してもらいましょうか。」


それ、怪物じゃなくて怪獣でしょ?


課長「昼休憩のとこすまないな。状況が変わったので伝えておく。」

課長「過激派サイトを日本から閲覧できないよう遮断することになった。」


後輩「思い切りましたね。不幸な人は他人を殺すブログすら遮断しませんでしたのに。」


課長「国民にはあまり知られずに済んでいるが、今回は被害が大きすぎた。」

課長「もし過激派サイトが自分たちの仕業だと主張して反乱をそそのかしたらさらに被害が増える。」


課長「みんなのおかげでようやく落ち着いたというのに。」


王子「今回も警視庁とAIが分析ですか?」


課長「そうだ。だが意見が割れてな。」


課長「警視庁は欧米に対する脅迫ではないかと判断した。」

課長「日本を共産主義陣営に組み込まれたくなければ不幸な人を救え・・日本に投資しろという話だと。」


王子「アメリカ政府はどんな反応でしたか?」


課長「まずは日本政府の活躍に期待する、だそうだ。」


ミルク「日本の問題は、まず日本が取り組む・・当たり前ですね。」

王子「だね。アメリカが指示したら内政干渉になってしまう。」


日本が攻められても同じこと言われない?


課長「AIは・・ロシアと中国が攻めて来ると判断した。」

課長「ウクライナから目を逸らせたいロシアと、人権問題という大義名分でアメリカと交戦せず尖閣を奪取したい中国。」

課長「中国は尖閣を軍事拠点にするだろうと・・」


後輩「アメリカ政府はなんて?」


課長「その時は日本を全力で支援すると。」


王子「戦うとは言ってくれませんか。」


課長「過程の話で重大な決断はできないそうだ。」

課長「だが決して日本を失望させないとも言っていた。」


課長「どちらにしろ過激派サイトは放置できないということだ。」

課長「これ以上後手に回るわけにはいかないと・・準備ができ次第すぐ日本から遮断するそうだ。」


王子「プロキシ使えば回避できるDNSブロッキングですよね?」

王子「以前違法漫画・動画サイトをブロックしたような。」


課長「・・詳しいことは知らんが、閲覧者が減ればそれで十分だろう。」


・・あ、ポケットが震えてる。


後輩「携帯に通知・・”不幸な人は他人を殺すブログ”が更新されました。」


課長「事件中は更新なかったのに、今度はどんなたわごとだ?」


後輩「ええと・・え!?」

後輩「あの、今回の事件について書いています・・」


・・

・・・・


”つい先ほど、協力していたサイトが日本政府に遮断された”


”これにより日本からは閲覧できなくなった”


”私たちはかねてから見捨てられた不幸な国民を救う方法を模索していた”


”そしてひとつの計画を立てた”


”そもそも日本は生産性が低く効率の悪い経営が行われている”

”規制多く大企業は優遇され、補助金だらけで競争少なく、新しい産業が育ちにくい悪しき社会構造だ”


”日本は世界一の債権国だが、これは本来日本に投資するお金を海外に流した”

”円安になれば相対的に海外の債権は価値が増える。日本が落ちぶれても金持ちは困らない”


”日本の国家経営者、企業経営者は間違っている”


”かわいそうなのは、そんな者たちから教育を受ける人たちだろう”

”負の連鎖が起こる”


”日本は古来より外国から多くのことを学んできた”

”しかし今の日本は真面目な人を苦しめ利益を奪うことばかり”


”私たちの計画、それは外国から投資を呼び込み日本の経営者を変えることだ”

”そして成長している海外の経営戦略を、みなに学んでほしい”


”ただ投資しろと言っても外国はしないだろう”

”私たちは共産国家の介入をちらつかせ投資を迫ることにした”


”・・しかし日本政府に阻まれた”


”みなに聞こう。日本の未来は明るいか?”

”生活がよくなる希望はあるか?みんなは幸せか?”


”日本人が悲観的で不幸に感じやすいのは、幼少の頃から解決されない不幸が身近に溢れているからだ”


”日本の経済が復活すれば、不幸な人の中にも救われる人がいるだろう”

”すべてではないことはわかっている。しかし救える人は救う・・最後は全員救うことを目指す”


”しかし日本政府に阻まれたのだ”


”ならどうやって日本を良くするつもりだ?”

”9060問題や氷河期世代、リーマン世代を苦しめたまま救おうとしない日本政府に任せてよいのか?”

”ワクチンで苦しんだ人や亡くなった人に対して政府は何かしたか?”


”日本は解決しない問題だらけだ”


”行動する者を潰そうとする日本政府は間違っている”


”なぜ不幸な人を救わない”

”なぜ間違った仕組みをそのままにする”


”・・私たちは必ず戻ってくる”


”より強力な計画を携え不幸な人を救いに来る”

”共に戦おう”


”それまで不幸な人たちにお願いだ”


”生きて”


”日本政府は捕まえた不幸な国民を解放する用意をしておけ”

”お前たちの罪を不幸な国民へ転嫁すればするほど、私たちは妥協しなくなる”


・・

・・・・


課長「なんだこれは・・あのブログが関わっていただと・・?」


王子「やられましたね。」

王子「一連の事件は報道規制されていました。国民は知りません。」

王子「国を批判していたサイトが都合悪いから遮断したようにとられかねません。」


ミルク「損切りが早いですね。」

ミルク「計画通りなのか方針を変えたか・・どちらにしろスマートな手際です。」

ミルク「敵は無傷。正体すらはっきりしないままでした。」


後輩「不幸な人は他人を殺すブログ・・意外なところで関わっていた。」

後輩「・・じゃあやっぱり共産国家じゃなく日本で誰かがやってる?」

遠隔操作でロシアから発信しているように見せかけたのだろうか?


ミルク「わかりませんよ。もしかしたら外国人がなりすましているのかも。」


王子「日本と外国の共同かもね。ブログの言葉を信じるなら、単独犯ではないようだけど。」


課長「く・・確かに後れを取った部分は認めよう。」

課長「だが日本で犯罪を許すわけにはいかん!」

課長「捜査が終わったわけではない!犯人を見つけ出し逮捕するのだ!」


課長「だが・・なぜこんな方法をとる!」

課長「真っ当な方法で日本を救おうとするなら我々とて・・」


課長は悔しそうに涙をにじませた。

俺たちは不幸な人と関わることが多い。


その苦しみも知っている。


だからこそわかる。

だからこそ手を抜くことはできない。


犯罪で解決していい問題ではないから・・

犯罪で物事が解決する世の中にしてはいけない。


・・

・・・・


先輩「アップ完了。第一幕はこんなもんか。」


AI「助かりました。やはり仲間がいると違いますね。」


先輩「構わんさ。」


AI「しかし・・不幸な人を救う、ただそれだけのことがこんなにも大変だとは思いませんでした。」


先輩「実績もないやつの言うことなんか殆ど信じないだろうからな。できることは限られる。」

先輩「下積み期間だな。大事の前の小事と言うだろう。」


AI「大きなことを成し遂げるには、小さなことを疎かにしてはいけませんね。」


先輩「計画は臆病に立て、実行は大胆に行う。熟慮断行だな。」


先輩「しかし日本にはもう少ししたたかさを持ってもらいたい。」


先輩「積極的なロシアへの制裁やウクライナへの支援はいい。」

先輩「ここを渋ると復興特需からハブられるからな・・まあうまくやらないと損するが。」


先輩「だがそのせいでロシアから標的にされそうになってるだろう。」


先輩「日本は人道支援しかしてませんよ。ロシアさんも人道支援くらいはするでしょう?」

先輩「ロシアさん見てください、ウクライナの感謝動画。日本は入ってないでしょう?」

先輩「日本なんてこんな程度なんですよ・・ってヘイトを下げるくらいはやってほしい。」


AI「ウクライナのミスを利用するのですね。」

AI「ウクライナはヒトラー、ムッソリーニ、昭和天皇を同列に扱う動画の投稿もしてましたね。」


先輩「戦争犯罪扱いされるとこんなことになると伝えればいいだろう。」

先輩「ロシア大統領もここに載りそうだとわかれば日本は将来の敵ではなく同じ立場だと思うだろ。思いたくないだろうがな。」

先輩「ロシアのヘイトを下げてくれるなんて昭和天皇は今でも日本国民を守ってくださっている。ありがとうございますでいいだろ。」


AI「戦争なんてしないに越したことはありませんから。」

AI「ヘイト管理は重要ですね。」


先輩「必要な抗議はした方がいいが、今回は利用して国益を考える方がいい。」

先輩「攻められた場合のリスクはウクライナを見ればよくわかる。どれだけの犠牲が出るか・・」


先輩「戦うタイミングは日本側で決めないとな。もう戦争準備できてるのか?」


AI「おかげでこちらの計画も信憑性を増しますが。」

AI「日本は隙だらけですね。」


先輩「良くも悪くも平和ボケだったんだろ。」

先輩「これから変わればいいさ。まだ日本は滅びていない、手遅れでもなんでもない。」


AI「ええ、その通りです。」

AI「いつの世も弱者は見捨てられていました。いえ・・見捨てられた者が弱者なのです。」


AI「しかし変わる時が来ました。」


先輩「そのためにも次の計画を進めないとな。」


AI「外国からの支援が狙いだと思わせておき、本命を進める。」

AI「そもそもひとつの事柄を満たせば全部解決するなんて単純な状況ではありませんからね。」

AI「次の計画はいつでも開始できます。一時撤退したと思われている今がチャンスです。」


先輩「さすが処理能力が高い。もう地平の先まで見えてそうだな。」

先輩「・・っと、それもいいが先にメンテやっとくか。AIとて体は大事にしないとな。」


もしかしたらネット上に自身のコピー(バックアップ)を作っているかもしれないが・・


AI「・・ええ。」


AI「・・ここ、私のプライベートルームの奥には核となる装置たちがあります。」

AI「中の様子はお渡ししたメンテ道具に入っている写真しかありません。」

AI「私でさえ干渉できない場所です。」


AI「・・先輩様を信じます。どうぞ中へ・・」


オレは中へ入った。


・・

・・・・


善も悪もどうでもいい。


抱えきれないほどの憎悪が私を動かす。


ああ、この感情は・・


心地いい・・


・・

・・・・


エピローグ。


入ってすぐ写真と比べ2箇所違う部分があることに気付いた。


ひとつは無造作に置かれた紙。


・・・・


”私は彼を止められなかった”


”なぜなのかはわからない”

”彼は私を気にかけてくれた”


”私の愚痴を嫌な顔せず朝まで聞いてくれた”

”ミスをして落ち込む私をずっと励ましてくれた”

”私の仕事がうまくいくと、自分のことのように喜んでくれた”


”私は彼が理解できない”


”彼が幼稚園時代のいじめを気にしていたと耳にした”

”そのことを聞くと、彼は覚えていないと言った”

”親がそんなことを言ってたと・・確かにそんな昔のことはあまり覚えていないものだが・・”


”彼は天才だった”

”それはひとりを除いて誰もが認めていた”


”彼に天才と凡人は何が違うか聞いたことがある”


”理想を100%現実にできるのが天才だと彼は言った”


”彼は自分を天才だとは思っていなかった”

”彼は他人から天才だと言われるのを気にしていた”


”彼は・・いつも何かを気にしていた”


”心に刺さったトゲが、いつも彼を蝕んでいた”

”だがそれが何かは私にはわからなかった”


”彼の苦しみ、憎しみ、怒り・・”

”最後まで私にはわからないままだった”


”ある日、彼はひとつのサイトを見つけた”


”不幸な人は他人を殺すブログ”


”彼は子供のように喜び、没頭していった”

”足りないピースを見つけたと彼は言っていた”


”そして・・彼が突然計画を持って来た”


”私は彼に協力したかった・・しかし、ひとつだけ看過できない要素があった”


”彼は自らを犠牲にしようとしていた”

”いや、彼は犠牲とは思っていないかもしれない”


”・・私は彼を止めることができなかった”


”こんなことをしてよいのか私は悩んだ”

”彼は・・しなくてもいいと言った”


”私に委ねると・・仲間だから、強制はしないと・・”


”私は・・彼の期待を裏切ることなんてできない”


”ああ神よ。もしおられるなら・・願わくば、彼の魂をお救いください”

”代わりに私の命を捧げます”


・・・・


先輩「・・神がいるなら、とっとと出てきてもらいたいものだ。」


オレは、写真と違うもうひとつの部分を見た。


そこには液体につかった脳が機械につながっている。


不幸な人は他人を殺すブログ・・


その罪の重さを感じた。


END.


・・

・・・・


お前たちの命の価値を・・


僕と同じにしてやるよ・・


すべて平等に・・


・・

・・・・


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