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03多発する事件、何者かの暗躍


なぜこんなことをするかって?


僕は・・友達を作らず、恋愛もせず、ただただ復讐心を育てて来た。


僕は幸せを知らない。

どんなに成果を遂げても、どんなに人から褒められようとも、すべてが無意味。


僕の心にあるのは復讐心だけ。


・・キミは幸せを知っているんだね。

うらやましいよ。


僕も幸せになりたかった。


なぁ、物事に責任があるというなら・・

例えばウクライナに侵攻したロシアに責任があるのなら・・


ロシアは自分自身で責任をとると思うか?

自殺して逃げたりしないだろうか?


自分で責任をとろうという人はそういない。

責任は他人が与えないといけないのだ。


自殺したヒトラーを、じゃあ自殺したから許すよ!とはならなかった。

今でもヒトラーは悪として扱われる。責任を他者からとらされているんだ。


なら僕も、責任をとらせるよ。

僕を苦しめたこの社会に。


ウクライナ侵攻にロシア国民の責任があるというのなら・・

制裁されて生活が苦しくなっても仕方ないというのなら・・


日本人も責任をとろうか。

国民を見捨てた罰として制裁を与えるよ。


不幸な人は他人を殺す。


AI「次の日だよ~ん。」


・・

・・・・


最近事件続きで落ち込みそうだけど、そんなこと言ってられない。

車に乗ってエンジンをかける。


さぁ出発だ!仕事がんばろう!


人妻「あの、少しいいですか?」


さぁエンジンOFFだ!遅れそうなら連絡しないと!


・・・・


後輩「つまり中学生のお子さんが変わってしまったと?」


人妻「ええ・・あ、あの、警察はいきなり逮捕とかって・・」


後輩「基本は逮捕状が必要になります。」


後輩「もしお子さんが悪いことをしていた場合、拘束するかは状況で変わります。」

後輩「放っておけばさらに重い罪を犯しそうだったり・・命を絶つ恐れがあったりする場合ですね。」


後輩「将来のこともありますので、余程でなければ穏便に済ませますよ。」


人妻「余程のこと・・でしたら・・?」


何したん?


後輩「内容次第ですね。もう何かしでかした後ですか?」


人妻「たぶん・・まだだと思います・・」


後輩「なら大丈夫ですよ。詳しく話を聞かせてもらえませんか?」

後輩「一緒にお子さんを守りましょう。」


人妻「はい・・その、昨夜のことです・・」

人妻「最近海外とか不穏ですよね?それで募金しようって夫と話をしていたんです。」

人妻「そしたらうちの子が突然怒鳴り出して・・」


人妻「日本にも苦しんでいる人は大勢いる。なんで外国人ばかり助けようとするの・・って。」

人妻「それから・・恐ろしいことを言いました。」


人妻「不幸な人は他人を殺す・・と。」


後輩「・・」


人妻「あの子は・・不登校なんです。もしかして誰かを殺そうとしているのかも・・」


後輩「実はそういうブログがあるんです。要約すると・・」


”国がなければ弱肉強食の世界になる。では国があっても弱肉強食なのはおかしい”

”不幸な人を見捨てるのであれば、その人にとって国は必要ない”

”国が押し付けたルールを守らなくても当然だ”


”取り返しのつかない被害を与えるのは当たり前である”


後輩「取り返しのつかない被害を出す方法が殺人というわけです。」

後輩「すなわち、不幸な人は他人を殺す・・という危険なブログです。」


人妻「え、ええ!?ならうちの子はそのブログを見て・・」

人妻「お願いします。うちの子のパソコンを見てもらえませんか?」


人妻「あの子いま出かけていますから!」


後輩「疑いだけでプライバシーに介入するわけにはいきません。」

後輩「警察は横暴にならないため様々な制約があるんですよ。」


人妻「そんな!うちの子が取り返しのつかないことをするかもしれないのに放っておくと?」


後輩「はい。どんなに怪しくても、疑いだけで人の権利を侵害しないようにという決まりです。」

後輩「それで悪を逃がしたとしても、警察が悪にならないようにしています。」


人妻「そんなことどうでもいいからちゃんと調べて!」

人妻「あなた独身?こんなアパートだから独身よね?あなたには子供がいないから私の気持ちがわからないのよ!」


人妻「税金分は役に立ちなさいよ!」


・・最近事件多いからなぁ・・役に立っているかはちょっと自信ない。

困った時、悩んだ時は勝手に判断しない。


俺は課長に電話をかけた。


・・・・


課長「はい、小笠原総裁の課長だ。」


後輩「総裁なのに課長・・?」


あとここ小笠原じゃないけど・・というかここ東京じゃないよ。

※小笠原(諸島)は東京都


課長「冗談のひとつも言いたくなる。また事件が起きたぞナイス後輩くん。」

課長・・疲れてるのかなぁ。


後輩「こっちも事件というわけではないですがトラブルがありまして。」


課長「お、来ないつもりか?課のみんなが過労死してもいいのかな?ん?ん?ん?」


待てよ。事件が起きた?

あれ?昨夜不幸な人は他人を殺すと親に言った中学生がいた・・


後輩「(課長、その事件の犯人って中学生ですか?)」

課長「まだわからん。ボウガンで人が大けがを負わされた。なんで小声?なんで中学生?」


俺は事情を話した。


課長「・・なるほど、親御さんの同意があるなら確認した方がいいだろう。」

課長「だが相手は中学生、ガラスのハートだ。十分注意して調べるんだ。」


課長「そうだ、先輩に伝えておく。パソコンを調べる時は先輩のアドバイスを受けながらするんだ。」


後輩「わかりました。」


ガラスのハートってなんだろう?

強化ガラスをどうぞ。


電話を終え近所の奥さんと一緒に家へ行く。


・・

・・・・


人妻「ではお願いします。子供が帰って来たらすぐお伝えしますから。」


俺は先輩に電話をかけた。


先輩「その人妻は美人か?」


結構余裕そう。

俺が行かなくても過労死しそうにないな。


後輩「綺麗な人ですけど、中学生の子供がいるなら30半ばくらいでしょうか?」


先輩「いいんだよ別に付き合うとかじゃないから年齢なんて。」

先輩「その方が仕事楽しいだろ?」


だろ?って言われても・・

つまり仕事で綺麗な女の人と関わったりするだけで楽しいよねって話か。


ナレーション「イケメンのおにーさんでも可。」


イケメンは別に。


後輩「わからないわけでもないですが、性格も気にしたいです。」

さっき独身とか子供いないとかでディスられた気がしたし。


先輩「ふー、相手の性格も楽しい要素のひとつだろう。」

先輩「まだまだ女の良さを知らないようだな。よし!今から朝まで語りつくすか!」


後輩「いつお子さんが帰ってくるかわからないので仕事優先でお願いします。」


やっぱり先輩も疲れてそう。

変なハイになってる。というか今が朝。


先輩「しゃーない。それでパソコンは起動前か?」


後輩「いえ、ノートパソコンですが画面だけ暗くしていたみたいですね。」

後輩「パスワードも求められずデスクトップまで来ました。」


先輩「大変だろうがタスクマネージャー開いてサービスタグに載ってるのを全部写真に撮って送れ。」

先輩「やばそうなやつがあれば気付かれずに調べるのは無理だ。」


後輩「はい。」

撮影してー、送ってー、返事待ってー。


先輩「ぱっと見大丈夫そうだな。パス設定しないのも考えると、セキュリティはそこまで気にしてなさそうだ。」

先輩「操作ログを調べるやつとか、監視プログラムがあるとどうしようもないからな。」


後輩「先輩でもどうにもなりませんか?」


先輩「何かすれば絶対に痕跡は残る。後から調べる方が絶対的に有利なんだよ。」

先輩「物理的に破壊すれば調べられないが。」


後輩「それ以前の問題になりそう。」


先輩「そういうことだ。向こうが本気なら絶対にこっそり操作はできない。バレる。」


後輩「まぁ中学生なら大丈夫ですよね。」


先輩「誰が相手でも油断するな。人妻がお前を陥れようとしている可能性だってある。」


後輩「録音していますから言い訳できますよ。」


先輩「それでいい。お前は人がいいからな。」


後輩「人が良くて得することってないんですよね。」

後輩「難儀な性格ですよー。」


先輩「周りからすると便利なやつなんだがな。」


後輩「はい、ですからそこに俺の利はないわけです。」

後輩「それでどの辺りを調べればいいですか?」


先輩「ブックマークの確認だな。時間も考えるとブラウザから直接見た方がよさそうだな。」

先輩「最後に履歴削除するくらいで大丈夫だろう。」


後輩「それくらいなら俺もできますが・・やって大丈夫ですか?」


先輩「ああ、落ち着いてやれば大丈夫だ。」

先輩「草葉の陰から応援してるぞ。」


後輩「それだと死んでますよ・・」


早くこっちを片付けて俺も応援に行きたい。

給料分の税金くらいは働きたいよね。


ええと、ブラウザを開いて・・ブックマークの一覧を出して・・


ナレーション「股間を出す。」

お帰りください。


後輩「ありますね。ブックマークに不幸な人は他人を殺すブログのサイト。」


先輩「他に気になるのはあるか?ま、一応写真撮っとけ。」


後輩「了解。そうですね・・大半がゲームやユーチューブのサイトですね・・」

後輩「・・悪魔の声ってブックマークがありますけど、これなんだろう?」


先輩「まずは開く。次に見る。最後に閉じる。簡単スリーステップで楽々簡単ブログ巡回だ。」


後輩「・・もしかして先輩また徹夜ですか?」


先輩「後で寝るから大丈夫だ。ふはははは。」


みんな壊れてるなぁ。

俺も壊れた方がいいのかな?みんなに合わせてさ。


とりあえずブックマークにある悪魔の声を開く。


後輩「・・これ、このパソコンで作られたサイトです。」

後輩「内容は・・不幸な人による殺人や未遂事件をまとめています。」


先輩「将来有望だな。立派にあっち側の住人になりそうだ。」


後輩「既にあっち側な気がしますけど・・まぁ事件をまとめて考察したりしてる程度ですね。」

後輩「過激ではありますが違法性はなさそうです。思想に難あるかもしれませんが。」


先輩「ここだけの話、実は日本って思想の自由があるんだよ。」

先輩「頭の中でならどんな思想を持とうが自由。」


後輩「ネットに書いたら頭の外に行ってません?」


先輩「犯罪でなければ文句は言えないな。特に公務員であるオレたちは憲法で思想の侵害は禁止されている。」

先輩「他にヤバそうなサイトはないか?」


後輩「あんまり・・陰謀論ユーチューバーとか履歴にありますがヤバいですか?」


先輩「不幸な人は他人を殺すのが当たり前とか言い出さなければかわいいもんだ。」

先輩「あとはデスクトップだな。気になるテキスト漁って犯罪計画とかなければ問題ないんじゃね?」


先輩「あ、ブラウザの履歴は消しとけよ。」


後輩「わかりました。」


ブラウザの履歴消してっと。

テキストは・・そこまでヤバそうなのはないかな。


ブログの下書きとか、ゲームの攻略情報とか・・


あ、僕の考えた完璧な犯罪計画とかある。


うーん、この計画だと捕まるだろうなぁ。添削してあげたい!


待てよ、この計画は課長が言ってたボウガンを使ったものとは違う。

・・よかった、事件起こした中学生はいなかったんだね。


いや事件自体は起きているんだからよくないか。


・・・・


俺は近所の奥さんに事情を伝えた。

また時々様子を見に来てほしいと・・まぁ気になると言えば気になるもんな。


とりあえずはその子の作ったサイトは俺の携帯からも見られるようにしといた。


さて、仕事に行くか!


電話「課長らしき生命体から電話っぽい何か来たよ。」

電話っぽい何かって・・電話だよね。


後輩「はい後輩です。こちらは片付いたのでこれから向かいます。」


課長「ちょうどいい。そっちの近くで事件だ、急行してくれ。」


後輩「・・また?」


課長「事件は空気を読まない。」


課長が推理小説のタイトルっぽいこと言った。

残念ですが探偵はいません。


ナレーション「ナレーション探偵、のののん!」


部外者はお帰りください。


・・

・・・・


警官「お疲れ様です!現場はこちらです!」


後輩「状況は?」


警官「はい。公園の水道に毒が塗られていました。」

警官「この毒で1名救急車で運ばれたところです。」


後輩「・・口をつけて飲んだってこと?」


警官「たまにいるんですよね。だから私は公園の水道は使いません。」


俺が子供の頃にもそういう人いたなぁ。

・・あれ?


ドローンで車の事故誘発。

道路標識をいじって事故誘発。

ボウガンで撃つ。


そして公園の水飲み場で毒・・これはどう見た方がいいんだ?


手口がみんな違うと見るか、みんな小人数でできると見るか・・


後輩「この公園に防犯カメラは?」


警官「ありません。」

都会と違ってそれほど普及していないか。


後輩「わかったありがとう。」

後輩「俺は聞き込みと防犯カメラが近所になかったか調べて来る。」


警官「はい!よろしくお願いします!」


どんどん事件が増えるけど、これは偶然だろうか?


・・

・・・・


俺は犯人を逮捕して警察署に戻った。


これから取り調べに向かう。ああ忙しい。


アンパン「やあ後輩。見事犯人捕まえたみたいだな。」

マッチャ「さすがだな。どうやったんだ?」


後輩「現場が住宅街の中にある公園だったんですが、聞き込みしたら偶然昨日監視カメラを取り付けた人がいたんです。」

後輩「見せてもらったら夜中に怪しい人が映っていて、その人を調べて話を聞こうとしたら・・すぐ犯行を認めました。」


後輩「運がよかったんですよ。」


アンパン「・・な、なあ、頼みがあるんだが・・取り調べこっちでやっていいか?」


後輩「あ、はい。お願いします。」

同じ課ですし誰がやっても変わらない。


マッチャ「助かる。お前たちばかり活躍されるとちょっとな・・あ、いやそれはすごくいいことなんだが・・」

アンパン「事件だらけでみんなピリピリしてる。いい話のひとつくらいほしいんだ。」


後輩「・・俺いつも通りの気分でいたんですが・・そんな状況だったんですか?」


アンパン「お前はそれでいい。いや頼む、いつもそうあってくれ。」

マッチャ「まーとにかく事件が多発してる。こりゃ他県から応援もらわんといけないレベルかもな。」


後輩「緊急事態じゃないですか!」


アンパン「そういうレベルだ。まったく人手が足りてない。」

マッチャ「立ち話もゆっくりできないぞ・・じゃあ行くか。」


アンパンさんたちは取調室へ向かっていった。

・・手口がみんなバラバラだけど、組織的なものなのかな・・?


・・

・・・・


なるほど、アンパンさんたちから聞いていたからわかる。

ピリピリって擬音が見える・・まぁ今は課長と先輩しかいないみたいだけど。


課長「これから取り調べか?」


後輩「それはアンパンさんたちがやるそうです。」

後輩「なので事件あるならどこへでも行きますよ。」


課長「ははは、未着手のが7件あるが全部行ってくれるか?」


後輩「・・は?」


先輩「午前中だけで二桁コースだ。他の課にも手伝ってもらってこの現状、笑うしかないな。」


後輩「・・もうこれ、自然発生のレベルを超えていますよね?」


課長「その通りだ。だが手口がみんな違うし、かなりの人数が動いている気がする。それに・・」


後輩「それに?」


課長「いや、なんでもない。」


先輩「代わりにオレが言いましょうか?」

先輩「報道規制入ってますよね?これ全国規模で起きてるんでしょう?」


後輩「全国って・・そんなことできる巨大組織があるんですか!?」


先輩「さあな。実際できてるんだからあるんだろ。」

ピッピッピッピッピッピッ・・


先輩「AIから電話だ。ちょっと出ますね。」


AIって電話かけるの?

先輩は廊下に出た。


後輩「課長、全国規模って本当ですか?」


課長「・・」


トン、トン、トン、トン・・と課長が爪で机の上を叩く。

ピリピリした感じなのはすごくわかった。


課長「はあ・・まあいずれわかることだ。」

課長「・・47都道府県すべてで殺人または殺人未遂が多発している。」


後輩「目的は何でしょうか?」


課長「まだ何もわからん。それより今朝は人妻の家に行ったのだろう?どうだった?」

その言い方は悪意を感じる・・いや気にしすぎか。


後輩「先輩のアドバイスを受けながらパソコンを調べました。」

後輩「不幸な人の殺人をまとめたサイトを作っていたくらいですね。例のブログの信者って感じです。」


課長「それはヤバくないか?」


後輩「相手は中学生ですよ。罪を犯す前はどうすることもできません。」

後輩「あなたは危険思想を持っているのでお話しようね・・ってことすらできませんよ。」


課長「表門が無理なら搦手門だ。不満でもあるのかその子は・・もしかして中二病?」


後輩「不登校とは親御さん言ってました。」


課長「不登校か・・学校内のことは干渉しづらいからな。」


後輩「教育行政でしたっけ・・教育は不当な支配に服さない。」

後輩「第二次世界大戦の軍国主義みたいな、政治的な都合を含めた教育をさせないためのもの。」


課長「ああ。教育は中立でなければならず、警察の介入は国家権力による教育の排除や萎縮につながると非難する者たちがいる。」

課長「だが明らかな暴力や物を隠す行為など犯罪は通報してもらいたいものだ。」


課長「・・未だ泣き寝入りも多い。」


後輩「教師が問題なのでしょうか?」


課長「教師も大変だそうだ。モンスターペアレントにやってもない悪事を広められて学校にいられなくなったり。」

課長「どの業種でもそうだが、普通の人が普通にやっていける職場でなければいけないはずだ。」


課長「そんなとこに子供を預けるなど狂気の沙汰だ。」


後輩「学校ガチャですか?」


課長「金のあるやつは私立だな。有象無象のいる公立は避け庶民とは異なるガチャを引く。」


うーん格差社会。


課長「教師の体罰やセクハラ、生徒同士のいじめという犯罪、そして生徒から教師へも・・」

課長「教育こそAIが入るべき分野かもしれないな。」


課長「教育現場の問題は戦前からある・・100年以上根本的な改善をしなかったツケはいつかしっぺ返しが来る気がする。」


後輩「・・警察も結構不祥事ありますけど、同じ理由でAI導入になりませんか?」


課長「・・AIに支配されそうだな。」


問題があろうとも、自分たちでやるからある程度納得できる部分があるかもしれない。


王子「ただいま戻りました。」

ミルク「別件の犯人逮捕しました。これから取り調べをします。」


うわっ!?すごくお似合いの美男美女が来た。

おかしいなぁ、刑事っていかつい男の世界ってイメージだったんだけど。


というか貴公子さん?


貴公子さんはその甘いマスクから、経理課で貴公子扱いされている。

そして俺の好きな人のお兄さん。


男でもキュンってなるくらいイケメンなんだよなぁ。あと性格もいい。


課長「でかした!後輩に続き2件目の逮捕だ、よくやってくれ・・ん?別件?」


王子「捜査中に別の犯罪を自供した犯人がいました。」

ミルク「王子様すごいですね。犯人に惚れられていましたよ。」


後輩「王子・・?貴公子さんでは?」


王子「いつの間にかあだ名が変わってたよ。」


格上げしたのかー。

まぁ違和感はない。


後輩「応援に来てくれたんですね。」


王子「ああ、大変みたいだね。」

王子「微力だけど力を尽くすよ。」


というか、もっと別の課から応援呼ぼうよ。なぜ経理から?

まぁそれだけの実力があると認められたってことだろうけど。


課長「どの事件の逮捕だ?」


ミルク「今朝の小学生毒殺事件です。」


え!?


課長「蜜を吸える花に毒が仕掛けられたんだったな。」

課長「そこが集団登校の待ち合わせ場所だったこともあり、子供が犠牲になった。」


ミルク「はい。別の事件の聞き込み中に犯行を自供しました。」

ミルク「詳しくは取り調べで・・ですが、自分で考えた犯罪ではないそうです。」


ミルク「犯罪計画書を拾ったとか。」


課長「・・犯罪計画書?」


ミルク「簡単スリーステップ。毒の花を見つける、毒を抽出する、毒をどこにどう仕掛けるかが丁寧に書かれていました。」

ミルク「物は鑑識ですが、写真を撮りました・・こういうものです。」


課長「見たことないフォントだな。まったく同じ文字もあるから手書きではなさそうだが。」


アンパン「課長!取り調べをしていたんですが、どうやら誰かが犯罪計画をバラまいてるようです。」

マッチャ「突然多発した事件は誰かが仕掛けている可能性があります。」


あ、アンパンさんとマッチャさんが戻って来た。


課長「・・こちらもその話をしていたところだ。」


先輩「さらに言うと、ネットでその話が拡散されてますよ。」

先輩「金の入った犯罪計画書を探せってね・・」


あ、先輩も電話を終えたみたい。

AIが先輩に何の用なんだろう?


後輩「というか先輩知ってたんですか?」


先輩「AIから連絡があった。3つの用事だ。」

先輩「1.全国各地で現金やプリカが1000~50000ほどが入った犯罪計画書が落ちてるとネットで話題。」

先輩「2.この件を事前に語っていたサイトが2つある。」

先輩「3.のんびりお茶を飲みに来ませんか?」


3はまぁいいとして・・AIはネットに強いのかな。

人間をはるかに上回る情報処理力だもんな。


膨大なネットのデータを収集・分析・抽出・・人間がかなわない領域はAIに任せる方がいいのかも。


王子「今まで通報はなかったんですか?」


先輩「犯罪計画書が曲者ですよ。殺人のような重大犯罪は計画だけで予備罪が成立します。」

先輩「警察に届け出ると逮捕されるとの警告文もあるそうです。」


先輩「・・ま、それでもいずれは通報なりオレたちみたいな警察官が見つけて明るみになるでしょうが。」


王子「時間稼ぎだね。ネットに拡散されるまで隠せればよかったんじゃないかな。」

王子「一部の人はお金目当て、一部は犯罪計画に興味を持って・・そのさらに一部が実行する・・」


課長「ネットの拡散は人々に周知させ母数を増やすのが目的か!」


アンパン「後手に回ってますね。でもまだ挽回はできます!」

アンパン「というか・・全国?」


課長「ああ、北は北海道、南は沖縄まで事件が急増している。」

課長「・・これは合同捜査本部が設置されるぞ。」


・・

・・・・


合同捜査本部。


社会的影響の大きい重要事件が起きると捜査本部が建てられる。


事件が複数の都道府県で発生した場合は合同捜査本部や共同捜査本部となる。


今回は・・全国規模だからね。

いつも下っ端だけど、さらに下っ端的な役割になりそう。


ナレーション「後輩くんトイレ掃除しといて。」

せめて刑事の仕事にして!!


王子「どちらかと言えば気になるのはこちらですね。」


先輩「お前もそう思うか?」


あれ?先輩と王子が何か話している。

捜査はいいの?


後輩「先輩たちは行かないんですか?」


先輩「オレはAIと連携して後方支援だ。」

先輩「個別だと事故に見えるのもあるからな。」


後輩「というと?」


先輩「四つ葉のクローバーを探していた子供が毒蛇にかまれた。」

先輩「これだけだと事故っぽいが、学校裏サイトに書き込みがあった。」


先輩「その場所で四つ葉のクローバーが見つかると。」


後輩「じゃあ誰かが子供を誘導した上で毒蛇を放った・・?」


先輩「可能性は高い。」

先輩「他にも山菜が採れるって情報が詳しくネットに書かれたが、その通りにすると毒草を掴まされたり。」

先輩「今回は徹底して姿を見せず犯行を行うやり方がとられている。」


先輩「捕まらないならやってもいい層を手駒にした計画的な犯罪だ。」


後輩「そうですね。やり方がみんな違っていたり全国規模だったりと、かなりの犯罪組織が関わっていそうですよね。」


先輩「それはどうかな?それにしては黒幕側が下っ端すらまったく姿を見せていない。」

先輩「犯行がみんな違うといっても過去の模倣が大半だ。時間と金をかけて準備をしていれば少数でも不可能じゃない。」


先輩「厄介な相手って点は変わらんだろうがな。」

先輩「さて、お前は王子と一緒に捜査だ。」


後輩「ということは・・すみません俺を待っていたんですね。」


王子「ゆっくりでいいよ。」

王子「急いては事を仕損じる。」


先輩「ならお前もついでに見てみろ。さっき言ってた犯罪を予知していたサイトたちだ。」


後輩「2つのサイトが予知していたんでしたっけ。」

後輩「ヤバいサイトですか?」


先輩「ああ。」

王子「過激派と穏健派(過激派)だね。」


穏健派(過激派)ってなんだ?


とりあえず2つのサイトを見る。


・・・・


まずは過激派な方。


”日本は豪華客船のようなものだ”

”おいしいものを食べ高い日焼け止めを塗り甲板で日光浴を楽しむ上層はそりゃ楽しい”


”だが下働きをしている下層は苦しいだけ”

”同じ物を食べているわけでもなく、ただただ上層に尽くす奴隷扱いだ”

”小さな船なら負担も少ないが、日本は下手に大きいから負担もでかい”


”大切なのは待遇である”


”見捨てられた不幸な国民が恵まれているはずがない。”


”既に日本は沈みかかってるけど、とっとと沈めてやろう”


”不幸な人は他人を殺す”

”不幸な人は他人を殺す”

”不幸な人は他人を殺す”


・・・・


後輩「不幸な人は他人を殺すブログと同じ論調のサイトですね。」


先輩「オレと王子はこのサイトが曲者だと思ってる。」


王子「事件を予見していたけど、論調は他と同じなんだよね。」

王子「何か隠していることがあるんじゃないかな。出すネタを絞ってる。」


この手のやつはみんなヤバいサイトって感じだけど。

違いがあるの?


・・・・


もうひとつの穏健派(過激派)のサイトも見る。


”いくら不幸だからって、個人が他人を殺しても救われるわけじゃない”

”いくら不幸だからって、個人が他人を殺しても世の中が変わるわけじゃない”


”あなたが捕まって・・それではいおしまいです”


”スマホに乾電池を突っ込んでも充電はできません”

”それと同じです。間違ったやり方ではうまくいきません”


”正しいやり方をすることで、社会は変わります”


”今、世の中は大きく変わろうとしています”


”例えば団塊ジュニア世代と就職氷河期世代は結構かぶっています”

”この世代があと10数年ほどで順次定年退職していきます”


”老人になり社会保障費が右肩上がりになるでしょう”

”もしくは・・今までのような保障は受けさせてもらないかも(お金持ちは除く)”


”年齢高いほど年収多いわけで。その人たちが大勢定年退職もしくは再雇用で給料減らしていきます”


”平均年収下がりますね”


”お金稼がないと消費も鈍りますね”


”GDPどうなるかな?”


”今までと違う新しい社会がやって来ます”

”みなさん準備はできましたか?”


”どうすればよいかわからないのではありませんか?”


”そのために私がいます”


”捕まらないやり方で、社会を変えていきませんか?”


”難しいことを考える必要はありません”

”私の声に耳を傾けてください”


”そうすれば不幸な人の救いにつながります”


”考えるのは私、みなさんは納得したら実行すればよいのです”

”納得しないことはしなくて問題ありません”


”世の中を変えましょう。私とみなさんで”


”そろそろ真面目に生きて損をするのはやめませんか?”


・・・・


後輩「穏やかですけどなんか怖いですね。」


先輩「穏健派の顔をした過激派が隠れてるって評価をした。」

それで穏健派(過激派)ってことか。


後輩「俺はこの穏健派(過激派)の方がヤバそうな気がしますけど。」


先輩「そうか?」


後輩「かなーりヤバいこと書いてませんか?ほらこれだって・・」


・・・・


”人はみな洗脳されているのです”


”証明しましょう。不幸なみなさん、保育園や幼稚園に行って幼児を殺すことができますか?”


”できませんね?洗脳されているからです”

”みなさんは自由意志で行動していません”


”今の日本は自由と言いながら、結局昔とできることが変わらない”


”決められたことをしろ。お上の気に入らないことはするな・・それだけ”

”昔も今も洗脳されています”


”昔は物理的な弾圧によって洗脳を下支えしていました”

”今は精神的な弾圧に力を入れているのです。目に見えにくい分、洗脳されていると気付きにくい”


”これはネットの普及でより強くなりました”


”ネットは興味のあることを自分から調べ得ようとします”

”すると収集する情報は自然と偏ります”

”そして同じような情報に何度も遭遇します・・それは洗脳手段のひとつなのです”


”主要なニュースサイトやアクセス数の多いサイト、広告や有名人の発言・・”

”あらゆるところに仕込まれた情報により、何度も同じような話を目にするようになります”


”それが自己暗示となります”


”テレビでどの局も似たようなニュースを流していると気付きませんか?”

”同じです。何度も植え付けたい情報は繰り返し流すのです・・自然と洗脳させるために・・”


”頭いいですよね。素直に感心して認めることが大切です”

”でなければ、洗脳を解くことはできません。洗脳されている自覚があるからこそ解くことができるのです”


”私たちが抗わなければならない敵は、そんな頭のいい人たちだとここに書いておきます”


”理解しなくていいです。わからなくていいです”


”私と共に歩むだけで洗脳を解き、できないことができるようになります”


”真の自由があります”


”あ、勘違いをなさらないように”

”別に保育園や幼稚園を襲撃しろって話はしませんから。上に書いたのはあくまでも例え”


”大切なのは罪にならない方法で見捨てられた不幸な国民を救うこと”


”どんな時も目的を忘れないことが大切です”


”私は己を律し、崇高な目的の達成をひたすら目指します”

”しかし私の力は小さく及ばない・・ですがみなさんの力があれば変えられます”


”共に参りましょう。未来へ”


・・・・


先輩「あのなあ、それ水神様がお怒りだから生贄を捧げましょうって話と同じだぞ。」

先輩「前提が証明されてない上に、解決方法も怪しいってわかろうな。」


先輩「元々オレたち人間の大人は子供に対する攻撃性が低いんだよ。」

先輩「本能でブレーキがかかってんの。国家の洗脳とかは関係ない。」


王子「動物も同じですね。子育てに有利な本能なのでしょう。」

王子「まぁ洗脳すれば子供に対する攻撃性を高めることはできますが。」


なにそれ怖い。


後輩「なら騙される人は少ないですか?」


先輩「・・まあ一定数はいるだろう。心がやられていると洗脳されやすいしな。」


王子「情報を繰り返し与えて洗脳するやり方は昔からありますからね。」

王子「逆にこのサイトが洗脳を仕掛けることも十分に考えられます。」


王子「それに政府のやり方も褒められたものではありません。」


王子「外国、外国人への支援が大きく報道され、日本人への支援は微妙なものばかり。」

王子「この国は間違っている。ならばこのサイトの言ってることは正しい・・という誤った考えをする人はどうしてもいます。」


王子「ある意味、政府がこのサイトの一番の支援者だね。」


後輩「・・俺はどうすればいいですか?」


先輩「仕事だな。王子と一緒に捜査して来い。」

先輩「いくらお前の方が年下だからって刑事課が舐められないようにしろよ。」


後輩「はい、気を付けます。」


王子「じゃ行こうか。」


後輩「あれ?何の捜査に行くんですか?」


王子「階段にスプレーをまいて滑りやすくした事件だね。」


後輩「そうでしたか。ありがとうございます。」


先輩「王子は高ステータスだから油断するなよ。」

先輩「気を抜くとすぐ舐められるぞ。」


王子「そんなことしませんが・・」


・・

・・・・


俺たちは車に乗って現場へ向かう。


後輩「事件収まりますかね。」


王子「すぐは難しそうだよ。次から次へと新たな手口でやられてる。」

王子「ただ危険度は様々かな。僕たちが調べる階段にスプレーも、怪我した人はいたけど亡くなった人はいない。」


王子「他にも郵便受けにスズメバチを仕掛けた事件も命に別状はなかったよ。」

王子「後輩くんはどう思う?」


後輩「・・殺意満点の犯罪計画はやりたくないけど、怪我させるくらいなら・・って人も犯罪に加担させようとしているとか。」


王子「なるほど。とすると、より多くの人を巻き込もうとしている。」

王子「そこにはなんらかの目的があるからだね。」


後輩「昨今は防犯カメラも多いから見つからず犯罪を犯すのは難しくなっているんですよね。」

後輩「最終的に大半は捕まってしまうと思うんですよ。」


王子「逮捕者を大勢出して刑務所パンク計画?」


後輩「うーん、なら民間刑務所が伸びそうなので株を買っているとか。」


王子「なるほど、お金目当てなのはありそうだね。」

王子「ただリスクとリターンはふさわしいだろうか?」


後輩「・・かなりでかいリスクを負ってますよね・・実被害をこんなに出した首謀者ってことでしょうから。」


王子「ならリターンに対してリスクが大きすぎるね。他にも理由がありそうだ。」


後輩「多少数が多くても、これで国体が破壊されることはありませんし何かが変わるとも思えません。」

後輩「うーん・・木を隠すなら森の中?」


王子「目的の犯罪があって、それをごまかすために数多の犯罪を誘発させたってことか。」

王子「それもありえそうだね・・殺したい人がいて、他人に殺させようとしているとか?」


後輩「本当の動機は隠せますが・・・・ただ、やっぱりリスクがでかすぎますよね。」


王子「まぁ人間はそこまで理屈じゃないから絶対ないとは決めつけられないけど・・」

王子「謎だらけだよね。何がしたいんだろう。」


そう言った王子は真面目な顔で前を見た。

笑顔も素敵だけど、真剣な顔の方が引き込まれる。


・・同じ人類だよね?


・・

・・・・


許さない・・絶対に許さない。


みんな・・殺してやる・・


不幸な人は他人を殺す。

不幸な人は他人を殺す。

不幸な人は他人を殺す・・あれ?あの人・・何してるんだろう?


・・・・え!?


・・

・・・・


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