表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
18/20

十八話 出発

リーヴァにかけられた呪いを解くため、魔導国へ向けて出発することを決めたいろは。旅に向けてリーヴァの回復を待っていたが、遂に出発する日がやってきた。そんないろはとクスタ、チャオ、リーヴァ、レックスに、新しい装備が送られた。新装備を身につけた一行は、ドラキア公国の公都を抜け、隣国である機械の国メカニエンス国との国境にやってきた。そこでいろはは、自分の信条に反する許せないものを目撃する。いろはの目の前に現れたものとは?

 その数週間後。ついに、いろはが旅立つ日がやって来た。起床したいろはは、机の上で寝ている心音に声をかけると、カーテンを開けて日光を浴びた。

「よしっ!」

掛け声をかけたいろはは、クローゼットを開けて、旅のために購入した洋服を出した。いろはが用意したのは、半袖の白Tシャツとジーンズ生地のオーバーオール。それに、少しばかりの防具機能がある上着だった。更にオーバーオールは、上着と同じく防具機能がある。着替え終わると、冷蔵庫を開けて簡単な朝食を作る。朝食を食べていると、心音が話しかけてきた。

「いろは。よく眠れた?」

「うん。今日から頑張らなくちゃだしね。」

いろはの答えに安心した心音は、ひとつだけ伝えることにした。

「いろは。1人で背負い込まないでね?私も話くらいは聞いてあげられるし、クスタ達もみんな頼りになるから。」

「うん。ありがとう。」

心音達の心強さに改めて気付いたいろはは、お礼を言って柄の部分を人差し指で優しく撫でた。

 準備しておいたリュックを背負い、心音を納めたソードベルトを腰に巻いたいろはは、寮を出て竜種園の陸竜舎へ向かった。陸竜舎に到着すると、事務所を覗いて柊木蓮に声をかけた。

「おっ、来たな。準備は出来てるぞ。」

蓮はそう言うと、展示スペースからチャオを連れてきてくれた。

「手綱と鞍は、付けといたから大丈夫だ。頑張れよ。」

「ありがとうございます!」

いろはの肩に手を置いた蓮は、そう声をかけて送り出した。

「よいしょっと。」

チャオの背中に跨ったいろはは、合図を出して空竜舎へと向かった。空竜舎の前でチャオを止め、事務所を覗いたいろはは、黒滝の姿に目をとめた。

「黒滝さん、おはようございます!」

「ん?ああ、竹野か。おはよう。準備は出来てるから、少し待ってろ。」

そう言い残した黒滝は、しばらくしてレックスを連れて戻ってきた。

「体調は問題ない。気を付けて行ってこいよ。」

「ありがとうございます。しばらく留守にしますので、よろしくお願いします。」

丁寧に頭を下げたいろはは、レックスの手綱を受け取り、元気に去っていった。黒滝は、その背中を優しい眼差しで見送った。チャオとレックスを連れたいろはは、竜種園の事務所前にやってきた。そこには、クスタを連れた卵堂とエリカ。リーヴァを抱えた篭波。園長のリョウとショウタがいた。

「おはようございます!」

元気よく挨拶をしたいろはが、皆のもとに駆け寄る。

「おはよういろはちゃん。よく眠れた?」

「はい!バッチリです。」

エリカと言葉を交わしていると、クスタが顔を擦り寄せてきた。

「おはよういろは。」

「あははっ。おはようクスタ。」

「朝から元気で何よりだ。こいつもちょっとは元気になったみたいだぞ。」

篭波がそう言ってリーヴァを差し出す。

「ありがとうございます。篭波さん。」

リーヴァのケージを受け取ると、頭だけは動かせる様になったリーヴァが、鳴き声をあげた。

「心配かけてごめんねって。」

リーヴァの鳴き声を、クスタが訳してくれる。

「そんなことないよ。」

いろはは優しく声をかけた。すると、卵堂が何かを差し出した。

「いろは嬢。これを持って行くといい。」

卵堂が差し出したのは、ネックレスタイプの玉のような装飾品だった。

「これは?」

「それは、ドラゴンに属性を付与できるマジックアイテムだ。首にかけてやると、ブレスや物理攻撃に属性が付与されるんだ。今回は、炎と水と雷が手に入ったから、こいつらに使ってやるといい。」

いろはは、言われた様にチャオとレックスに炎と雷のネックレスをそれぞれかけた。水は、リーヴァのために取っておくことにした。

「それと、これはいろはちゃんに。」

いろはが振り向くと、紫色の刀身をした剣をエリカが持っていた。

「エリカさん、これは?」

「それは、毒竜剣ポイズンホーン。この前、毒竜が暴れてるって情報が入ってね。結局暴走竜じゃなかったから私が対処したんだけど、その時に手に入った毒竜の角を加工したの。毒竜の角には猛毒があるから、毒を付与する剣になったみたい。私は剣は使わないから、いろはちゃんにあげようと思ってね。」

剣を受け取ったいろはは、半透明の紫色に目を奪われていた。

「それにこの剣があれば、いろはちゃんの戦い方にも幅が出ると思うよ?」

ウインクをしながら言われ、いろはが言葉の意味に気付くのと、心音の声が聞こえたのは同時だった。

「エリカさん、ありがとうございます!」

いろはの弾む様な声に、エリカは嬉しそうに頷いた。

「いろはちゃん。お金は国が払ってくれるから、そこは心配せずに行っておいで。帰りを待ってるから。」

ショウタにかけられた言葉にクスリとしながら、いろははリョウにも礼を言った。

「園長。手続きとかしてもらって、ありがとうございました。」

リョウは、小さく笑って返した。

「いいのよ。いろはちゃんのためだしね。リーヴァ、ちゃんと治してきなさい。」

「はい!行ってきます!」

毒竜剣をソードベルトの空きスペースに納めたいろはは、チャオに跨って合図を出し、出発した。

 竜種園を出発して数分。いろは達は、ドラキア公国の公都を囲む城壁の側にやってきた。公都の出入り口である門には、関所の様なものが設置されており、出入りする資格がある事を確認される。これはここだけではなく、各国の首都及び国境に設置されていることを聞いていたいろはは、チャオから降りるとクスタとレックスを待たせ、関所までやってきた。

「すいません。公都の外に行きたいんですけど。」

窓口で申し出ると、担当の男性が言った。

「じゃあ、許可証か通行手形みたいなのは持ってるかい?」

いろはは、リョウに渡された国の使者としての身分証を提示した。

「はい。1人だけかい?」

「いや、ドラゴンが3匹いるんですけど……。」

いろはが視線を向けると、それを追いかけた男性が、3匹のドラゴンを確認して通行許可印を押した。

「陸竜は向こう側。空竜は飛んで上から通って下さい。」

「はい。ありがとうございます!」

いろはは戻ってチャオに跨り、レックスとクスタに飛ぶ様に指示を出して、門を通過した。公都は、ドラキア公国の北寄りにある為、門を通過してしばらく進むと、機械の国メカニエンス国との国境が見えてくる。国境沿いの街に到着したいろはは、街の外れにある空き地でキャンプの支度を始めた。公都を出発する前、お店で売っていたキャンプギアを見てピンときたいろはは、とりあえず一式揃えたのだった。

「いろは、なんでキャンプにしたの?宿屋にでも泊まればいいのに。」

「心ちゃん。それは私達だけ、もしくはこの子達が小さかったらの話でしょ?この子達が一緒ならこの方が一緒にいれるしね。」

そう言ういろはに、心音は忠告をした。

「でも、年頃の女の子が夜中に人気のないところで寝てたら危なくない?」

それを聞いたいろはは、待ってましたとばかりに反論した。

「でも、3匹のドラゴンに囲まれている女の子に手を出すかな?それに、心ちゃんだって守ってくれるんでしょ?」

心音は、大袈裟にため息をついて言った。

「はぁぁ。分かったよ。いざという時は、私が守る。」

「ありがとっ!」

いろははテンション高めに返すと、心音を抱きしめた。

 やがて日が暮れ、クスタ達が食事をせがむ様な視線を送ってくる。彼らの食事を作り終えたいろはが持っていくと、3匹でモリモリ食べ始めた。

「よしよし。いっぱいあるからね。」

そこそこ成長したドラゴン3匹分の食事というのは、えげつない量だと実感するいろはだったが、作るだけであればさほど苦ではない。むしろその前、今後の食糧調達に頭を抱えたくなった。食事が終わり、片付け終わった後で休憩していると、上空に異様な雰囲気を感じた。空を見上げると、異様なオーラを放った飛行物体が見えた。

「レックス!飛ぶよ!」

本能的にそう叫んだいろはは、飛ぶ準備を瞬時に済ませたレックスの背に飛び乗って上空へ舞い上がった。レックスは、一気にトップスピードに乗り、謎の物体を追いかける。後方から左側に逸れながら横に並ぶと、いろはは自分の目を疑った。彼女の目に映ったのは、生物味の感じられないドラゴンだった。金属のボディに覆われ、関節には機械的な仕組みが見え隠れしている。そしてその背には、反竜教の服を着た男性が乗っていた。

「何あれ……。」

いろはは、あまりの衝撃に言葉が出なかった。ただ、目の前のものが生き物に対する冒涜の様に感じられ、無性に腹が立った。しかし、今すぐ手を出すのは、情報も戦力も足りないと思い、悔しみながら離脱した。キャンプ地に戻ったいろはは、心音と話し合った。

「心ちゃん!あれは許せない!今すぐにでも倒しに行くよ!!」

「いろは。あれは、今すぐどうにかできるものじゃない。いろはの怒れる気持ちもわかるけど、まずはメカニエンスに入って情報収集するのが先だと思う。」

怒りの感情が入り、単純な思考になるいろはに、心音が冷静に言い聞かせる。その言葉で我に帰ったいろはは、こういう場面での親友の心強さを感じた。

 機械仕掛けのドラゴンの性能チェックをしていたアバレスは、だいぶ距離をとって隣を飛んでいたドラゴンに気付いたが、気にしなかった。

「あれは、噂の色彩剣士(カラフルセイバー)だったのか?聞くところによると、三冠の他にもドラゴンを従えているらしい。アマネのやることが成功していたのであれば、次は俺の番だな。」

ニヤリとしたアバレスは、確認を終えた機械仕掛けのドラゴンに電源プラグを差し込み、拠点としている国防軍人宿舎へ入って行った。

お読みいただきありがとうございます。

もし本作を気に入っていただけた方は、評価やブクマ等宜しければお願いします。また感想も、本作の感想欄や作者名のTwitterにて募集中ですので、ぜひお聞かせください。

また、小説家になろうにて公開中の他作品も併せてお楽しみください。よろしくお願いします。

今後も更新予定ですので、宜しければお付き合いください。よろしくお願いします。

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ