密室で結ばれた婚約〜意地悪な幼馴染だと思っていたけど、実は愛されていたみたいです
『なろうラジオ大賞3』応募作品です。
テーマは密室
久しぶりにここに来た。少し埃をかぶった本達が私を出迎えてくれる。
ここには、私の好きな物が集まっている。私の秘密の図書室。今日も一人で本の世界に浸る。
「見つけた、何読んでるんだ?」
「また……鍵は掛けたのに、毎回どこから入って来るんですか?」
本に夢中になっていると、突然声をかけられた。この図書室に、唯一侵入してくる幼馴染。
母親同士が特に仲良しで、幼馴染の中でも一番付き合いは長い。けど、私は彼が苦手だった。
「俺との婚約話、断ったって本当?」
「本当です」
「何で? 俺の事嫌いなの?」
「意地悪な人と、婚約なんて嫌です」
昔は私達も仲が良かったと思う。よく二人で本を読んだり、ごっこ遊びをしていた。でも、いつからか彼は私に意地悪をするようになった。
「意地悪? そんな事してない」
「嘘よ、私が本を読んでいる時、今みたいに突然やってきて、虫を手の上に乗せてきたじゃない」
「あれは、君が昆虫図鑑を読んでいたから、昆虫が好きなんだと思ったんだ」
「図鑑を読んでいただけよ、そのせいで今は虫は見るのも駄目になったわ」
「ごめん」
「それに、髪を引っ張ったり、読んでる本を取り上げたり、意地悪ばかり」
「あー髪は引っ張ったんじゃないんだ、綺麗な髪だから触ってみたくて、でも急に君が動いたから……」
「誰も居ないはずの図書室で、突然髪に何か触れたら驚くに決まってるでしょう!」
「それは……悪かった。でも、本を取り上げたのは、君が本に夢中になりすぎて食事も忘れて読んでいるから、止めただけだ」
「その後、本を追いかける私を見て楽しんでたわ」
「それは、君が追いかけてくれるのが嬉しかったからだな」
突然嫌われて意地悪をされた、と思っていたけど違ったらしい。
「あなたは、私の事が嫌いなんだと思ってたわ」
「まさか、全て好意からだ。俺達はすでに永遠の愛を誓っているだろ?」
「え?」
言われて思い出すのは、幼い二人のごっこ遊び。確か結婚式の真似事をした後、夫婦になって子供が二人生まれた設定で遊んでいた。
「ちゃんと誓約書も作って名前も書いて、誓っただろ?」
そう言って彼は一枚の紙を私に見せた。幼い子供の字で私達の名前がサインされていた。
「それとこれ、誓いの証として、君に貰ったんだ。俺の宝物」
そう言って彼は、見覚えのある鍵を取り出した。それは、この秘密の図書室の合鍵だった。
「俺と結婚してくれますか?」
意地悪だと思っていたけど、実は愛されていたみたいです。
秘密の場所=密室
な解釈の意味もあると知って思い付いたお話です。
最初、主人公は本大好き夢みがちで、相手の幼馴染はヤンデレぎみに書いていたら、密室に監禁しそうな方向に話が向かいそう&文字数が…1000文字軽く超えそうだったので、2週間放置して大修正。
全く新しいお話になりました(笑)
読んで頂きありがとうございました!