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この作品には 〔残酷描写〕が含まれています。
苦手な方はご注意ください。

殺意の所以 ~神様。私は弱い人間でしょうか?~

作者: 桜華 絢爛

タイトルからサスペンス物を期待された方は、どうもごめんなさい。

私の体験談を脚色して読み物に仕立てたモノです。

お暇なら、どうかお立ち寄りくださいませ。

挿絵(By みてみん)

あき伽耶 様(https://mypage.syosetu.com/2452578/)より頂戴いたしました。


          ◇◆◇◆◇


 この『小説家になろう』にユーザー登録して、早くも1年6ケ月が経過しました。

 パソコンどころか《メカ音痴》と家族から揶揄される私が、書籍化された歴史小説の続き読みたさに一念発起し(大袈裟)、四苦八苦しながら登録手続きをしたのが昨日の事のように思い出されます。


 (ちな)みに『桜華絢爛』という大仰な作者名は、十数回も登録名を弾かれた挙句、適当に打ち込んだ物が承認されてしまった偶然の産物であります。

 自分の顔と引き比べ、明らかに豪奢(ごうしゃ)過ぎる名前に腰が引けたのですが、やり直す気力は既に残っておらず、流される儘にOKしてしまいました……今では大変後悔しております。


 兎にも角にも、無事に『小説家になろう』の住人になれた私は、当初の目的に向かって一直線……切望した作品はもとより、他の面白そうな歴史小説を読み漁ってお腹いっぱい……我が世の春を満喫しておりました。


 しかし、余りの満腹感に思考が麻痺していた私は、『なろう』の落とし穴にすっぽりと(はま)る事になったのです。

『この程度の作品ならば、俺にも書けるのでは……?』

 何の根拠もない自信……いや、無知蒙昧(むちもうまい)な勘違いに(そそのか)されて『新規小説作成』をクリックしたのが運の尽き。

 その至れり尽くせりの充実した機能を見て、私の実力を伴なわない妄想は大暴走してしまったのです。


 その勘違いのお陰で今日に至るまで、七転八倒しながらも投稿を続ける次第と相成った訳であります……さて、前置きが長くなりましたので本題に入ります。


 冒頭に書きました様に、私はメカ音痴であり典型的なアナログ人間です。

 パソコンどころか携帯電話やスマートフォンですら、仕事以外では積極的に活用する事もなく。

 相手の感情や反応が読み取れないからと、メールを送るのも受けるのも嫌って電話一辺倒……親しい友人にすら呆れられる世捨て人でした。


 しかし、そんな私がある日を境に、空いた時間の大半をパソコンとにらめっこをする様になり、その変貌ぶりに一番慌てたのは私の家族だったのです。


『一体全体どうしたんだ? パソコン嫌いのくせに……? 何か辛い事があったのなら相談してごらん? お金の事は力になれないけれど話はきいてあげるよ』


『いやいや……これは人格が歪み始めたんじゃないかな? さもなければ、いかがわしいエロサイトにでも(はま)ったか?』


『お狐様よ……お狐様に()かれたに違いないわ!』


 ……どうですか? この言い草。

 しかし、不安と妄想をエスカレートさせた挙句に霊媒師でも呼ばれては目も当てられませんので、『小説家になろう』というサイトに趣味で小説を投稿している旨をカミングアウト致しました。


『『『ふ~~ん、そう……暇で良いねぇ~~』』』


 真実を知って一気に興味を失ったのか、失礼極まる捨て台詞を最後に無関心に逆戻り、それ以降は何も言われなくなったのです。

 元々、文字嫌い、読書嫌いの我が家族。

 読む物と言えば、新聞(TV欄メイン)か雑誌か漫画という有り様ですので、私の書く素人小説など眼中にも無し! ガン無視です。

 その後半年間ほどは余計な干渉をされる事もなく、快適な投稿ライフを楽しんでおりました。


 事件が発生したのは、今年一月の半ば頃です。


『投稿している小説の題名は何ていうのさ?』


 仕事を終えて帰宅し、自由に出来る僅かな時間を利用してせっせと次回投稿分を書いていた時、我愚弟がそんな事を(のたま)いながら部屋に入って来ました。

 彼の意図が読めなかった私は、怪訝な顔で何事かと問い返したのです。

 すると……。


『いやぁ~~随分と頑張ってるから興味が湧いてね。そのサイトを(のぞ)いたんだけどさぁ~~なんだか、ポイントが欲しいって文が氾濫してるじゃん。ポイント取れないと強制的に作品が削除されるんだろう?』


 うん? なんだそれ……?? そんな罰ゲームみたいな面白ルール、規約の中に書いてあったっけ???

 聞いた事もない話を得意げに話す愚弟に唖然となる私……。

 (しか)も、愚弟は急に腕を組むやウンウンと頷きながら、胡散臭(うさんくさ)いドヤ顔で恩着せがましい台詞を口にしたのです。


『弟としては頑張っている兄貴を応援するのが筋じゃん? だから、折角の力作がポイント貰えなくて葬られるなんて余りに非道だと思ってさ。だから俺がブックマークと評価とやらを付けてあげようと思ってね』


 この時点で既に上から目線……(しか)も人の作品を低評価認定。

 まあ、確かに総合評価は微々たるものだけどさ……それでも目標のブックマーク50件は達成してるんだいッ!

 そう内心で憤りながらも、愚弟の好意を思えば兄としてはやはり嬉しい。

 しかし、しかしである。

 それは、身内に私の拙作を開示しろという事に他ならない……考えただけで恥ずかし過ぎるだろうがッ!!


 恐らく活字嫌いの愚弟が、好んで素人作品を読む筈がない……しかし、万が一という事もある。

 だから感謝しながらも、本音を胸の奥底に隠して丁重に断ったのです。


『いや……気持ちは嬉しいけどさ、そう言うのは一応規約違反だし……ポイント低いから作品抹消されるなんて馬鹿な事ないし……うん、ありがとう。気持ちだけ貰っとくよ』


 久しぶりにほっこりした気分に包まれ、さあ、次話を頑張って書くぞと意気込んだ私が馬鹿でした。

 まさか断られると思っていなかったのか、彼は不快さを露わにし、それまでの飄々(ひょうひょう)とした態度を豹変させたのです。

 そこに居たのは、思い遣り深い弟の仮面を脱ぎ捨て、どこのゴロツキかっ!? と罵倒したくなるような醜悪な面相の愚弟でした。


『ほうぅ~~俺の好意が受けられないと? 冷たいねぇ~~弟がこんなに心配しているのにさ……あぁ、傷ついた……こりゃぁ、会社の同僚や上司に相談しなきゃなぁ~~兄貴が変な投稿サイトに(はま)って困っていますってさぁ~~』


 まさにゴロツキ同然の脅し文句に、私は絶句するしかありませんでした。


 私と愚弟の勤め先は同じ業界の別会社であり、互いに仕事上の取引があります。

 当然ながら、愚弟の勤務先の社長以下新人社員に至るまで私とは顔見知りであり、その一方で愚弟も私の同僚と交流があるのです。

 基本的に気の良い連中ですが、堅物だと思われている私の趣味が素人小説の投稿だと知られた日には、半年は飲み会のネタにされる事が確定します。


 その間、揶揄われ続けるなんて……あまつさえ投稿している拙作を読まれでもしたら……。

 背筋に冷たいものが走ると同時に、頭の中では、ニヤニヤと口元を歪める同僚の顔、顔、顔……エンドレスです。


 この『小説家になろう』の中であれば、厳しい指摘や感想を戴いたとしても、有難い御指摘だと思って気に病む事はありません。

 しかし、近しい知人達に趣味の創作物を読まれるとなれば話は別です。

 そんな羞恥プレイに耐えられる様な、アダマンタイト級のメンタルは持ち合わせてはいません……そんな私の小者っぷりを見透かした愚弟は、下卑た笑みを浮かべて浅ましい欲望を露わにしたのです。


『俺も鬼や悪魔じゃないからさぁ~~昼メシ三日分で我慢しようじゃないの』


 既に勝ち誇っているのか、愚弟は無言の私に決断を迫る様に脅し文句を重ねて来ます。


『俺はどっちでも良いんだけどさぁ~~こんな面白い話を黙っていたなんて後でバレたら、会社の連中に吊し上げられちゃうよ。そのリスクを負う対価として昼メシ三日分……高くはないと思うがねぇ~~! なあ、ア・ニ・キ?』


 この時点で仄暗(ほのぐら)い感情が胸の中に拡がるのを自覚しました。

 それは、明確な殺意。


 ドラマでよくあるワンシーン。

 弱味を握られた人物が脅迫される場面……場所は人気のない深夜の公園。

 偶然掴んだ弱味を大袈裟に吹聴する脅迫者が、下卑た笑みを浮かべて背を向けたその瞬間、足元の石を拾って相手の後頭部目掛けて叩きつける……。


 そんな場面が脳裏に浮かびます……でも此処は自室。手頃な石など在る筈もなく。

 そんな私の視界が捉えたのは、本棚に立て掛けられている古い金属バット。

 怒りと憎しみに震える私の手が、その冷たいグリップに触れた瞬間でした。


『どうするのさ、兄貴ぃ~~? このネタ欲しいって物好きな奴は、幾らでも居ると思うけどねぇ! 今年は新年会の主役を独占しちゃうかなぁ~~?』


 心底楽しそうに(うそぶ)きながら背を向けた愚弟……バットを握り締めた私は……。


『……二日分で手を打ってくれ……今月は宴会続きで懐が厳しいんだ……』


 愚弟は振り向きざまにニヤリと口元を歪め、ひらひらと手を振りながら部屋を出て行ったのでした。


 嗚呼……神様。私は弱い人間でしょうか…………。 


                       ~END~


【後日譚】


 結局、作者名も作品名も告げる事無く秘密は死守しました。

 当然の事ながらポイントなど得る事もなく、二食分の昼メシ代として千円札二枚に羽が生えて飛んで行って終わりです。


 問題が起こったのはこの後の事で、二月に入った頃から急にPVが増え始め、連載が終了した三月半ばには一日のPV数が16000を超える事態に遭遇いたしました。

 当然、ブックマークも評価も過分なほどに激増したのですが、この事態に於いて頭を()ぎったのは、愚弟が秘密を吹聴した結果、優しい同僚や知人が好意でポイントを入れてくれたのではないかという事でした。

 明らかに規約に抵触する行為に青褪(あおざ)め、帰宅した愚弟を問い詰めましたが、怪訝な顔をしながらも、一切喋ってはいないとの事……。

 事実、その後、同僚や知人からこの件について一言もない処を見ると、私の思い過ごしだったようで、本当に安堵いたしました。


最後まで御付き合い下さり、心から御礼申し上げます。

もし、この話の様な体験を為された書き手の方がいらっしゃられたら、感想でも寄せて頂くと嬉しいです。

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― 新着の感想 ―
[一言] PV数16000超え……! すごすぎますね! 身近な人に作品を読まれるのってなんだかドキドキしちゃいますよね(´ω`*) なろうに投稿するようになってから、すこしずつ大丈夫になってきました。…
[良い点] はじめましてコロンと申します(о´∀`о) あき伽耶様の活動報告からポチっと来ました。 とても可愛らしいお人柄が滲み出ていて、ほっこりしました。 なんでもない日常の切り取りが、愛と呼べる…
[良い点] 桜華さまのお名前、華やかだなあと思っていたのですが、そのような事実があったのですね。そして、人様のなろう登録の動機やエピソードは気になってしまいますね。というのは家政婦は見た的と言うより、…
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