責任を考える男
信じられない出来事。
まさかこんな事が実際に起こるのか?
それが、実際に起こった。
男が使用した公衆トイレのウォシュレットは、
水勢の強度が強すぎた。
マイナスのボタンを押して、弱めようとしたが
その勢いは、治まる事がなかった。
仕方なく男は、「 止 」のボタンを押した。
しかし水は止まる事なく、最強のレベルで出続けた。
男は、これ以上耐えられなくなり
思わず立ち上がった。
以前からウォシュレットの放水は
便座から離れると停止すると、男は聞いていた。
聞いていた通りには、ならなかった。
最強のレベルで飛び出した水は
個室の壁に打ち当たり、そして床をそこそこ濡らしてから
ようやく停止した。
結果的に、トイレの個室の壁と床を必要以上に濡らす事になったが、
これは果たして、誰の責任なのか
男は、冷静になって考えようとした。
このトイレが備わっているビルの管理人室を探したが、
それらしき部屋は、無かった。
男は、個室の壁と床を濡らしたのは確かに自分だが
その責任を押し付けられるのは、筋が違うと
心の中で叫んだが
その言葉が、実際に誰かに向かう事はなかった。
世間には、信じられない出来事が
本当に起こるものだ。