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銀のドラゴンの正体

 ギルドに戻ってきたのは日が落ちる寸前だった。

 この位の時間になると他の依頼を達成してきた冒険者達も帰ってくるせいでカウンターの前が長蛇の列になっている。


「あー、しまったな。魔物の買取どうやんのか聞いてなかった」


 職員達は忙しくなく働いていて質問することも出来なそうだ。

 俺は仕方なく列の一番後ろに並んでいたゴリラっぽい獣人に話し掛けてみることにした。


「あの、すいません」


「ああん?何だコラ!!」


 こいつめっちゃガラ悪いな…


「魔物の買取の方法を教えて欲しいんだけど…」


「買取だと?…お前、依頼品を受け取りに来た貴族じゃねえのか。ん?その後ろの従魔…お前がアーロンか!!

 がははははは!こんなとこで期待の見習い(ルーキー)に会えるなんてな!!

 買取ならあそこの列に並ぶと良いぞ!こっちの列は依頼達成したときに並ぶカウンターだからな!それと向こうのカウンターは何でも相談に乗ってくれる!!頑張れよ、見習い(ルーキー)!」


 急に馴れ馴れしくなったゴリラ獣人は俺の背中をバンバンと叩くとまた前を向いて並び始めた。

 っていうかどんだけ噂が広がってるんだ…


 俺はゴリラ獣人に言われた通りに買取カウンターとおぼしき列に並んだ。

 カウンターを担当してるのは神経質そうなメガネをかけた男の狐獣人だ。

 狐獣人はカウンターの上に出された物品を神経質そうに観察して査定額を出している。


 しばらく並んでいると俺の番がやってきた。


「おお、期待の人族見習い(ルーキー)君じゃないか。登録だけして帰ったと聞いていたが、一人で冒険に出ていたのかい?

 カウンターの上に買い取って欲しい物を出してくれたまえ」


 狐獣人は無遠慮にジロジロと俺のことを観察しながら言った。


「カウンターの上じゃ乗り切らないんだ、広いところへ案内してくれないか?」


 カウンターが小さすぎて切り落としたドラゴンの頭すら乗り切らないだろう。


「ほぉう?今日登録したばかりの見習い(ルーキー)君が大口を叩いたものだね。

 それならとびっきりの広い場所へ案内してあげようじゃないか。

 メリューク、ここを頼む。僕は自信過剰な見習い(ルーキー)を案内しなくてはならないからね」


 嫌味ったらしく言った狐獣人は受付を他の職員に任せると目線でついてくるように促しながらカウンターの外へ出てきた。


 狐獣人についていくとギルドの隣にある建物へ案内された。


「ここは解体場だ。大きな獲物を狩ってきた時は直接ここへ持ち込んでもらうことになる。

 まあ、少なくとも君の従魔より大きいサイズになるだろうがね」


 建物の中は広くスペースが取られていて天井からはクレーンのようなものが幾つか垂れ下がっている。解体するときに使うんだろうか。

 ここならば狩ってきた銀のドラゴンも出せるだろう。


(ヴィータ、ドラゴンを亜空間(ストレージ)から出してくれ)


『了解しました』


 俺がヴィータにだけ聞こえるように小声で指示を出すと、ズズーンという衝撃と共に解体場のフリースペースを全てを埋めるように頭の無い銀のドラゴンが現れた。


「んなっ!?ま、ましゃか…ぎ、銀竜ファフニール…??

 そ、そんなわけがにゃい…!あ、ありえにゃいぞ…!?

 騎士団と軍が協力して倒せにゃかった化け物を見習い(ルーキー)が討伐にゃんて…」


 おいおい、お前は狐獣人だろ。

 猫みたいな喋り方になっている狐獣人は腰が抜けてしまったようで尻餅をついた体勢でもじょもじょしている。


「おいおい、なんだこりゃ!!」

「こいつファフニールじゃねえか!?」

「先月だかに襲撃かけてきてたやつだろ!」

「王女様が危なかったって時のか!!」

「頭がねえぞ、どんな腕してたら切り落とせるってんだ!?」


 解体場で働いていた職人達も騒がしくなってきた。

 俺は腰を抜かしている狐獣人に目線を合わせるように正面にしゃがみこんで問いかけた。


「おい、こいつはいくらで買い取ってくれるんだ?」


 ☆ ☆ ☆


 何故だか狐獣人が泡を吹いて気絶してしまい、解体場の職員達の騒ぎも大きくなって収拾がつかなくなった辺りで異変に気付いた別のギルド職員がやってきた。

 解体場の職人達が俺の方を指差しながら何かギルド職員に話をしている。

 すると職員がやってきて別の場所へ案内すると言った。

 ドラゴンの査定に時間がかかるから別のところで話を聞きたいらしい。


 職員に案内されたのはギルドの応接室らしくやたらと豪華な部屋だった。

 そこで出された茶と菓子を食べながら待っていると筋骨隆々で髪が鬣のようになっている獅子獣人がやってきた。


「お前がファフニールを殺ったという人族のアーロンか?」


「ファフニールかどうかは知らないが、銀のドラゴンを殺したアーロンなら間違いない」


『アーロン、どうやらこの男はギルドマスターのようです』


 ヴィータが助言してくれる。


「お前のような者がファフニールを一人で倒したとはにわかには信じられんが…死体がある以上事実なのだろうな。

 まったく、やってくれたな…

 どんな手段を使ったのかは知らんが、お前はこの国に終わりをもたらしたのかもしれん」


 ギルドマスターは恨みがましい視線を向けてくる。


「えっと、まずかったか?」


 親孝行のためとは言え、金のためにドラゴンを討伐したせいで国が滅びると言われると流石に寝覚めが悪い。


「ファフニールは番で動く銀竜。かつてある国が片方を騙し討ちで討伐したことがあったが怒り狂った残りのファフニールがその国を滅ぼしたという。

 お前が討伐したせいで残ったファフニールが怒り狂ってこの国に襲撃にやってくるだろうな…」


『この男はどうやら勘違いしてるようですね』


 そうだ、銀のドラゴンは2体とも倒している。

 片方が木っ端微塵になってしまっただけで。


「あの、実は両方―――」

「ファフニールを倒したという冒険者はここかしら!!」



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