第4話 戦闘(本当に)
「冗談は抜きにして、とりあえず俺が前に出て様子見するから、後ろで魔法の準備しといて。あとさ──って持ってる?────ってできる?そしたら────でお願い」
「最初からそうして下さいよ。えっと、──は少量であれば持ってますけど、────はちょっとやったことないので、やってみますけど。失敗しても文句言わないで下さいね」
「失敗して、死んだら背後霊になって、一生後ろで"俺の名前を忘れるな"って言い続けてやる」
「地味に怖いいやがらせですねっ!」
「まぁ、頑張って。それじゃー、逝ってくるわ」
「言葉がちっがぁぁぁぁう!!!!」
(会話なのに言葉なんか分かるのかね。というか最初とキャラ変わったなぁ、この子)
そして、所持していた短剣を構え、ジャイアントスラッグに向かう。
前に出てよく観察すると、遠くで観戦していた時とは違く、巨大で体表の粘液がとても気持ち悪いものであった。
(なるほど、勝率2割っていうのも分かるな。結構な迫力で、なかなかにキモイ!)
「アクセル!」
強化魔法を自分に発動し、自分に注意を向くように側面に回り短剣で斬りつけていく。
案の定、体表の粘液のせいでまともに傷つきもせず。こちらに向かい触手を伸ばしてくる。
ッドン!
ぎりぎり躱すと触手が当たったところに結構な深さの穴ができていた。まともに喰らったら骨は容易に砕ける威力である。
ッドン!、ッドン!、ッドン!、ッドン!!、ッドン!!、ッドン!!!
格上の相手の攻撃を強化魔法のおかげかぎりぎりではあるが避けていく・・・。
(こっわ!怖すぎる!!!というかいくら強化魔法かけてるからって、この身体よく動けるなぁ!思った通りに動けるわ!)
俺は新しい身体に感動し、同時に楽しんでもいた。
──転生前のアレクシスこと小倉 創は学生時代運動部には所属していたが、万年補欠であった。身長は最初こそ周りより成長が早く高かったが、それも途中で止まり、年を重ねるごとに周りに越されていっていった。その割に横だけは成長をしていた。
最初は、割り切って動けるデブとして頑張ろうとしたが、元からの運動神経がよくないことから挫折をしていた。
顔も中の下もしくは下の上くらいであり、目も悪く、眼鏡をつけるとさらに評価が下がるのではないかと感じ、裸眼で生活をしていた。だが、どう努力しても周りの女性からの評価は、優しいのになんで彼女いないんだろうと言われ、俗にいう良い人止まりで人生を過ごしていた。
そんな人生の中、この世界での身体は身長はそこまで高くはないが標準的で太ってもなかったことに、嬉しさがあった。まして、自分が前世でこう動けたらいいのにと思ったことがそのまま実行できることに感動していた──
ジャイアントスラッグの側面に回っては斬りつけ、触手の攻撃を避け、回っては斬りつけ、避けてを繰り返していくと、意外にもあのドべぎりぎりのやつがここまでモンスターとの戦闘で粘っていることに、周囲の人達からは驚ろきの声が上がっていた。最初は何秒で倒れるのかニヤニヤしていた連中もいたが、その評価は全く変わっていった。
だが、残念なことは攻撃力が足りないこと。何回も斬りつけてはいるが、粘液によってほぼ無効となっている現状。避け続けるにしてもいづれは体力の限界がきてしまうと・・・。
それはアレクシスも気づいていた、むしろ最初からそうなると予想していたので、最初からそれに対応できるような作戦を事前に話していた。
──その作戦を実行中のアイを周りは誰も気づいていなかった──
攻撃を続けながら、気づいたことは、触手の先端なら粘液が少なく、攻撃を避けて、同時にこちらも斬りつけると変わっていった。避けた態勢からの攻撃のため、かすり傷程度だが、青い体液が少しづつ流れてきている。周囲の人達から少しづついけるんじゃないかとの声も出るようになってきた。
そんな中、強化魔法の効果が切れ、ジャイアントスラッグの攻撃を受けてしまう。
「っく」
なんとか短剣の側面を盾にし、腕で支えたたが身体は結界にぶっ飛ばされてしまった。
結界に背中を強く当たり、呼吸が一瞬とまる。
ジャイアントスラッグも今まで攻撃があたらなかった獲物に対して、やっと攻撃があたり、ずるずるとアレクシスに向かう。
強化魔法が切れたまま、あの攻撃を避けていくことは無理そうであった。
ここまでか・・・、と周囲の人達も善戦していたことを残念に思いながら、先生が止めに入る準備をしている中。
「アレクシスさーん、お待たせしましたー!離れてくださいねー!」
と、アイの声が上がる。
そこには巨大な水玉が存在していた。その声に反応し、俺はジャイアントスラッグから離れる。
「ウォーターボールゥゥゥゥ!!!」
そして、巨大な水玉をジャイアントスラッグの真上にいき・・・そこで破裂した。
雨のようにジャイアンドスラッグの身体を濡らしていくが、そしてその雨からは蒸気が発生していた。
ジャイアントスラッグの身体が雨に打たれ少しづつ溶けていく。それは通常のウォーターボールではなく、高温度のウォーターボールであった。そして、少し塩が混じっていた。
(おお、溶けてる溶けてる。昔、カタツムリやナメクジが庭にいて、お湯かけて駆除してたけど。こっちも効くんだ)
雨が止み、ジャイアントスラッグの姿も完全になくなっていった。