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これはきっと恋じゃない  作者: 悠華
4/4

私は悪くない、よね?

第4話 です。

 自転車に乗ってみると元通りという感じだった。さて、どうするか。このまま家へ帰っても良いが、長くは持たないって言ってたし。まだそんなに遅くない時間だし。しょうがない、自転車屋へ行くか。

 来た道を戻り、もう一度自転車屋へ向かう。

「すみませーん、パンク修理お願いします」

「おーう」

 声をかけると店の奥からおっちゃんが出てきた。

「持ってきました」

「わかった。ちょっと待ってな」

 そう言うとおっちゃんは工具を取り出して修理を始めた。

「うん?パンクしたのは後輪だよな?」

「あ、そうです」

「これは、充填剤か?これを使われると普通のパッチが効かないんだがな」

 おっちゃんはぶつぶつ言いながらタイヤを外していく。

「チューブがもうダメだな。タイヤも減ってるし、雨が降ったら危ないぞ」

「はぁ」

 そうなの?やっぱり安物だから?

「全部替えたほうがいいな。それでいいか?」

「あ、はい」

 うう、いったいいくらかかるんだろう?

 

                  ***

 

 修理が終わった自転車をこいで自宅へ向かう。自転車は快調、私は絶不調。あーあ、お小遣いがほとんど飛んじゃったよ。後でお母さんに請求しないと。

 そろそろ暗くなりかけている。さて、夕食は何にしよう。

 少し考えて、考えるのをやめた。まあ、安売りの品を狙って買って、適当に作ればいいや。

 ということで帰り道の途中にあるスーパーへ。お、鯖が安くなってる。買いだね。塩なしだから味噌煮にするかな。後は明日の朝の分と飲み物と真凜のお菓子か。

 買い物が終わったら結構な大荷物になってしまった。まあ、いつものことだけど。ちなみに、食材の買い物にはお小遣いとは別会計の財布を持ってる。

 さて、帰りますか。

 ゆるい坂道を登り、自宅へ向かう。さすがに暑い。帰ったらまずシャワー浴びたいな。なんてことを思いながら自宅前の小道に入る。両側は住宅街だ。

 と、自宅の前に人影が見える。それも二人。一人は妹の真凜だな。もう一人は男子だな。彼氏かねえ。おさかんなことで。ま、私には関係ないさ。

 おしゃべりに夢中な二人は私に気づかない。自転車が止まる気配でようやく気がついたようだ。降りながら声を掛ける。

「ただいま」

「あ、おかえり、お姉ちゃん」

「こ、こんにちは。お姉さん?」

 男の子が私に目を向けて、怪訝そうな顔をしている。ん?何かな。

 私が目を向けると目をそらされた。失礼な。確かにちょっと見はかっこいいし、身体もがっちりしてるから運動部系かな。にしては態度がなってないね。

「でね、シュウ君。そしたらね・・・」

 妹は会話を続けながら私に向けてしっしっという感じで手を振ってきた。言われなくても退散しますって。

「よいしょっ、と」

 自転車を立ててスーパーの袋をカゴから持ち上げる。うぅ、さすがにちょっと重い。カバンはリュックタイプだから背負ってるから良いんだけどさ。

 さて、とにかくシャワーを浴びよう。


                  ***


 シャワーを浴びてタオルで頭を拭きながら買ってきたサイダーを飲む。うん、最高だね。さて、夕食の用意をしますか。

 鯖を鍋の味噌だれで煮ながらリビングに声をかけてみる。

「真凜、そろそろご飯だからお箸並べて」

 返事がない。おかしいな、だいたいこの時間はリビングでスマホをいじってるか雑誌を見てるかなのに。もしかしてまだしゃべってる?あれからもう30分はたってるよ。もしそうなら、どんだけよ。

 とりあえず夕食の準備をしてしまおう。メインは鯖の味噌煮、キャベツの千切りを添える。それとは別にサラダと味噌汁も付ける。もちろん薄味にしてる。濃いと文句言われるしね。

 ダイニングのテーブルに二人分の食事を並べ終えたので、玄関に向かった。ドアを開けて家の門の前を見る。まだいたよ。

「真凜、ご飯よ」

「んもう、後でいい」

「冷めるよ」

「うるさいなあ」

「はいはい」

 私は諦めて中に戻ろうとした。

「あ、そうだシュウくん。ご飯食べてかない?」

「「え?」」

 何を言ってるんだ?この妹は。

「ねえ、いいでしょ?お姉ちゃん、地味子だけど料理だけは上手いから」

「いや、でも、悪いよ・・・」

 さすがに男の子は遠慮している。

「えー?いいじゃない。もう遅くなってきたし、お腹すいてるでしょ?」

「あー、いや、そうなんだけど」

「だったら、ね?」

 だったら、ね、じゃない。おかずは家族4人分しか作ってないんだ。

「お姉ちゃん、シュウ君もご飯たべてくって」

 そう良いながら妹は男の子の腕を引っ張ってる。私は頭が痛くなってきそうな気分だ。そこはご飯を作った私に許可を取るところじゃないんかい?

「いや、でも、やっぱり・・・」

 男の子は抵抗している。そりゃそうだ。初めて行った彼女?の家でご飯を食べてけなんて、どんな罰ゲームだよ。

「あの、悪いんだけどおかず余分は無いよ?」

 私の言葉に見る見る妹の顔は険しくなった。それまでの甘ったれた顔はどこへ行ったんだ。

「なんでそんな意地悪言うの?あたしが彼を連れてきたから羨ましいんでしょ?そうなんでしょ?」

 いや、そういうんじゃないから。

「だから、いきなり突撃晩ご飯なんてテレビじゃないんだからさ。迷惑かけるし」

 男の子はそう言いながら妹の手を振りほどこうとしている。あれ?彼氏くんのほうが常識人?

「ええー?そんなこと気にしなくていいのに。ねえ、いっしょにご飯食べよう?」

「いや、悪いけど帰るよ。またな」

「ええー?帰っちゃうの」

「ああ、また明日」

「うん、じゃあまた明日ね」

 男の子は私に向けてちょっとだけ頭を下げて走り去っていった。なんか、逃げたって感じがする。

「お姉ちゃんのバカ。せっかくうまくいきそうだったのに」

 真凜は私を睨みつけてからさっさと家に入っていった。思わずため息をついた私は悪くないと思う。


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