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これはきっと恋じゃない  作者: 悠華
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ことのはじまり

基本的に主人公視点でお話しは進みます。

初投稿なので1話、2話を掲載します。

 ドンドンドン。どこかでドラムが鳴っている。

 いえ、違う。これはノックの音だ。

 そう認識するのと同時に目が覚めてきた。

「お姉ちゃん、おきてるー?」

 妹の真凜の声がする。

「起きてる」

 反射的にそう答えてからベッドから起き上がった。まだ目が覚めきってないせいか、ちょっとくらくらする。

「早くご飯作ってよー」

 あの子もたまには自分で料理すればいいのに。朝に晩にと私がご飯を作ってるんだから。おまけに弁当まで。

「パンでも食べてて」

「えー、栄養がかたよるー」

 ああもう、わがままなのは今に始まったことじゃないけど。

 とりあえずパジャマを脱いで下着姿になる。チェストから学校指定のブラウスを出して袖を通し、制服のスカートをはく。夏服で助かった。

「はーやーくー」

「わかったから」

 ソックスとカバンを持ってドアを開けた。

「おまたせ」

「遅いよ。お腹ぺこぺこ」

 妹は頬をぷくっとふくらませて私を睨んできた。

「はいはい」

 おざなりに返事をしながら妹の全身に目を向ける。うん、相変わらずあざと可愛いね。

 ヘアセットもばっちり、軽いメイクまでしている。それにしてもそのスカートは短すぎると思うんだけど。

 階段を降りてダイニングの先のキッチンに入る。エプロンをしながら冷蔵庫の中をチェック。確かハムと玉子とレタスがあったはず。

「ハムエッグでいい?」

「玉子はスクランブルね」

「はいはい」

 妹はダイニングセットの椅子に座りスマホをいじっている。私はフライパンをコンロに載せると手早く玉子を割り少しだけ砂糖を入れた。妹は甘くない玉子焼きは玉子焼きじゃないと言い張る。

 玉子を溶いてフライパンに流し込み、スクランブルドエッグを作る。ハムも少しだけ火を通す。レタスをさいてハムとスクランブルドエッグを皿に載せればできあがり。この間、わずか5分。我ながら手際は良いよね?

「おまたせ」

 テーブルの上に皿を並べても妹はスマホから目を上げない。

「パンは?」

 見てた?見てないよね?

「一枚でいい?」

「いつもそうって言ってるじゃない」

「はいはい」

 食パンを一枚オーブンに入れてセットする。私はご飯派だ。やっぱりご飯を食べないと力が出ないと言うか。

 さっさとお茶碗にご飯をよそって食べ始める。

「いただきます」

「・・・」

 ドレッシングがそろそろ終わるな。放課後に買ってこないと。今度は何にしよう。たまには青じそとか欲しいんだけど妹が嫌がるし。またシーザーかな。

 オーブンからチンと音がした。キッチンに行ってトーストを皿に載せて戻る。バターとジャムもいっしょだ。

「もう、なんで一緒に焼かないの?待ちくたびれたよ」

「ごめん」

 すみませんねえ、手際の悪い姉で。

 ご飯をさっさと食べ終わるとキッチンに戻り、弁当用に残しておいたハムとスクランブルドエッグでお弁当を作る。おかずが少ないから冷食をチンして入れよう。

「お弁当、ここに置くからね」

「はーい」

 妹の分のお弁当をダイニングテーブルに置くと私は洗面所へ向かった。髪の毛を軽く梳かすとゴムでまとめる。紺色の縁をメガネを外すとさっと顔を洗った。

 幸か不幸か私の肌はすこぶる肌理が細かくて質がいい。軽く乳液でも塗っておけばずっとしっとりお肌だ。だから化粧なんてしたことはない。

 正面の鏡を見るとどこかやぼったい雰囲気の少女が眠そうな目を向けてくる。いや、わかってるんだ。私のまぶたは妹みたいにくっきりした二重じゃなくて奧二重だから、どこかもっさりした眠そうな印象を与える。

 それが嫌で前髪を伸ばしているけど、それがよけい地味な印象を与えるってこともわかってる。

 でも、それが自分なんだからしょうがない。

 

                      ***

 

「じゃ、先行くね」

 そう言うと妹は玄関を出て行った。

「いってらっしゃい」

 1学年下の妹は高校までバス通学をしている。私は自転車通学だから妹より少し時間に余裕がある。なんで同じバスにしないかって?学校帰りにスーパーで買い物してスーパーの袋を持ったままバスに乗りたくないんだよ。一応、これでも花も恥じらう女子高生なんだから。

<ハムエッグが作ってあります。レタスと合わせて食べてください。 遥香>

 昨夜も帰りが遅かったらしく、まだ寝ている両親に宛ててメモ書きを残し私も家を出た。

 中学時代から使っている自転車はちょっとくたびれてきた感じだ。入学式の直後に買ってもらったから、そろそろ4年ちょっとが経つことになる。やっぱりホームセンターの安物じゃだめか。

 私たち姉妹の通う高校までは片道5kmちょっと。歩くには少し遠いし、自転車なら運動がてらちょうどいい感じだ。

 車の多い通りなので、歩道の脇に自転車レーンがあるのは助かる。それでもたまに怖い思いをすることもあるけれど。

 通勤のサラリーマンや通学中の高校生に混じって自転車をこぐ。家から学校まではいったん緩い坂を下って、また登るという道だ。その一番下ったあたりで国道を渡ることになる。

 違和感を感じたのは国道を渡って登りにかかったあたりだった。急にペダルが重くなったような気がする。

「え?なに?」

 おかしいな。壊れたかな?そう思っている間にもどんどんペダルが重くなっていく。そしてガタガタという振動も始まった。

「え?ちょっと」

 たまらず自転車を止めて歩道に寄せる。見ると後輪のタイヤがぺったりとつぶれていた。パンクだ。

「ええ?ちょっと、やめてよ」

 ここから学校までは3km近くある。自転車屋は学校の近くに一軒あったはず。そこまで押していくとなると大ごとだ。

 いくら夏にはまだ間があるとしても、もう6月。最高気温は30度近くになるかもしれない。

「どうしよう」

 あたりを見回すと少し先にコンビニがあるのに気づいた。とりあえずそこまで行って、どうしようか考えよう。


お読みいただきありがとうございます。

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